第11話 閃光の先
まばゆい閃光後。
衝撃波と轟音が轟き、室内にはがれきとガラスが降った。
私は何が起きたのかわからず、室内……とりあえず、床を見てみました。
あちらこちらに壊れたガラスと物が飛散し、私の正面から先の壁が崩れ、
私の居るソファから、少し先の床はなぜか熱気を放って……赤。
すっと先―――庭の方ではなく、室内の扉。
つまり廊下側に目をやりました。
見たこともない。
いえ、廊下と言うにはあちらこちらが崩落した場所がありました。
私が通ってきた時の廊下は崩れ、見る影もありません。
屋根も壁も、衝撃と閃光で壊れてしまったようで、屋敷の向こう側。
白い塀があるはずなのに無く。
森があるはずなのに何故か焼けた赤い土が見えるの。
その周りにある木々は衝撃で薙ぎ倒されていて……。
あぁ。
そうね、正しくは……『本来あるものが倒れたり、壊れたり、溶けている』。
それが正解ね。
そして、閃光と衝撃で瓦礫と化した場所に倒れたり、埋まってしまっている、見慣れた……。
「っ……!!」
『嘘っ! そんなことっ……!』
驚愕に息をのむ私と違い、ミリーは私の膝の上から慌てて飛び立ち。
かろうじて瓦礫に埋まらず、倒れている白いコック姿の人の元に飛んでいった。
『四号さん! 四号さん、しっかりして下さいっ!!』
ミリーの切羽詰まった声が私の耳に入る。
私もみんなを助けに行きたい。
でも。
だけれど、私は動けない。
『もしかしたら、みんなはもう死んでしまったのではないか』
『私は、一人になってしまうのではないか』
そんなどうしようもない不安と恐怖が頭を支配して、手が、足が、震えた。
『なんですって? ファランの汚点の分際で、まだわたくしとやりますの?』
『はぁ? この僕のどこが汚点だって?! 貴様の方がイルディオの汚点だろう!』
どこからか、聞き慣れた。
聞き慣れてしまった、怒声と罵声が聞こえ。
私はさとりました。
この閃光と衝撃波は、この二人のうちのどちらかだと……。
それを理解すると、無性に胸の奥が苦しくなりました。
鼻の奥がツンとして、目から涙が溢れ。
我慢できなくなりました。
どうして……。
どうして。
私の大切な人たちに、こんな酷いことを……?
『ゆるせない』
私はその一心で、立ち上がり。
庭の方へ進みました。
庭と室内を隔てていた、大きな掃き出し窓のガラスはすっかり吹き飛んで、室内側に散らばっています。
その事実に胸を締め付けられる、悲しくて、悔しくて、やるせない気持ちで窓を潜り、声がした方の空を睨む。
閃光と衝撃波のせいで開けた、夕焼けに染まる森の上空は、酷く、よく見えました。
「お姉様……。王子様……」
同じ人影が二つずつ。
四人の人影が、夕焼けの空に浮かんでいます。
あぁ。
そう、私が増やしたのよ。
増やしたの。
私の血と、魔力で……。
強すぎて、誰にも始末できなくて。
手を焼いていた、二つの個体。
あれらを形作って居るのは、私の血と魔力。
例え、私が死のうとも勝手に生き続ける個体。
私の手を既に離れてしまい、私にはどうにも出来ない。
そう、思ってしまっていた個体。
だって。
私は、私が今まで作った個体を、自分の力で始末したことがなかったのですもの。
出来ないと思っていました。
だって、形作った魔力を分解して取り込むなんて、出来なかったから。
出来ないことは、テノール達がやってくれていた。
だから、やらなかった。
やれないと決めつけて、私はなんで何も出来ないのだろうと、落ち込んで……。
私は、なんて卑怯だったのかしら……。
悔しくて、悔しくて。
いつのまにか俯き、足元を見ていた私は、頬を伝う、涙を拭うことすらできない。
【血と魔力を引き離しなさい】
左側から、突然聞こえた、男の人の声。
驚いて、そちらに顔を向けると、そこに白のワイシャツと紺のスラックス姿に、濃い銀の様な、肩で切り揃えた灰色の髪に、穏やかな銀の瞳の男性がいた。
彼は、困った子を見るような暖かい眼差しで微笑み。
何かを考えるように俯きつつ。
白いシャツに映える、赤い石が嵌め込まれた、黒いループタイの紐の端。
銀色の金具の片方をつまみ、弾くようにして手を離すと、顔をあげて微笑んだ。
それが何故か、酷く優しく見えた。
名門貴族の変嬢 双葉小鳥 @kurohuji
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