イチャイチャ百合

tada

イチャイチャ

 私にとって紫織は、常に一緒にいてくれる幼馴染だった。

 生まれた時から一緒にいる幼馴染。それが紫織で、言ってしまえばそれだけの関係だった。

 友達とも違い、親友とも違う。もちろん恋人でもない、それが私と紫織の関係だった。

 あのことが起きるまでは⋯⋯

 

「ただいま〜」

 仕事帰りの私は、玄関を開け家の中にいる彼女にそう投げかけた。

 すると玄関から二、三歩歩いた位置にある台所から、ヒョコっと彼女は頭を出した。

 彼女の名前は、紫織。髪を短めに切り揃え、眼鏡をかけた彼女は、ワンピースにエプロンを着ていた。

「おかえり〜。悠花」

 紫織はそう言いながら笑顔で私に近づいてくる。

 そんな紫織に私は、甘えたい気持ちを我慢せずに、素直に抱きつく。

「紫織〜疲れたよ〜。癒しておくれよ」

「はいはい。今日もお疲れ様でした」

 そう言いながら紫織は、私の頭を優しく撫でてくれる。

 そんな紫織に私はもっと強く抱きつき、もっともっと甘えたいとアピールする。

「紫織〜」

「なーに」

「もっと甘えさせて〜」

「いいよ。好きなだけ甘えてくださいな悠花」

「キスしてもいい?」

 私は紫織の背中に回していた手を一旦離し、笑っている紫織の顔に上目遣いで訴えかける。

 すると紫織はしょうがないな〜というような顔で、唇を近づけて言った。

「いいよ」

 その言葉を聞いて私は紫織に唇を近づける。

 二人が近づけると当たり前ではあるけれど、唇が重なった。

 紫織の息遣いが聞こえてくる。この感覚が一番癒される。

「紫織好きだよ」

 唇が離れると私は、少し恥ずかしそうにしている紫織にこちらも恥ずかしいセリフを言ってみた。

 すると紫織はやはり少し照れながらも返してきてくれた。

「私も好きだよ悠花」

 

 私と紫織は、今はもう天涯孤独の身になってしまった。

 中学生最期の春の日、私の家族は私以外全員が、事故に遭って命を落とした。

 同日に紫織の家族も紫織一人を残して、全員が命を落とした。

 どちらも不慮の事故だった。

 そしてその時に私は気づいた。

 今まではただの幼馴染だった紫織が、家族を亡くした私にとっては、唯一の繋がりなのだと。

 そして私は、紫織に恋をした。

 それからしばらくして、私は紫織に提案した。

「一緒に住まない? お金は私が中学卒業したら稼ぐから」

 最初は紫織も否定気味だったのだけれど、私がなんとか説得した。

 

 そして現在に至る。

 今ではこれだけイチャイチャできているけれど、最初の頃はやはり幼馴染感が抜けなくて、大変だった。

 けれど今は、本当のカップルのように過ごせているのだから、それはいいことなのだと思う。

 例えまだ私達が正式に付き合っているカップルじゃないとしても。

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イチャイチャ百合 tada @MOKU0529

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