第7話 変化を求めることは違法ですか
第7話 変化を求めることは違法ですか
ユリファに案内され、3人は法務部に足を運んだ。ダビデスは到着するまでの間に情報を整理しようと思った。法務部の人間は一体どのような人間なのか。話が通じるのか。それとも力技で説得しないといけないか。慎重に相手を分析して…
「着きましたよ!ここが法務部です」
「早っ。こういう手強い系のシチュエーションってだいたい城の奥まったところにあるものじゃろ」
「監査部の上の階が法務部なので」
扉を開けると、中の部屋では大勢の人間が働いていた。エデン法はこの国では重要なルール。正しく運用されているかどうかを審議する場所らしい。
真剣に誰かから提出されたと思われる書類に目を通すものもいれば、勇者らしき人と議論をする人もいる。そんな中で、入り口に立って何やら書類をスラスラと書いている若者がいた。男にしては綺麗な美貌の持ち主で、ダビデスとは比較にならないほどふつくしい。そんな彼が険しい表情で何か書類を作成している。
ナオとダビデスは緊張感ある場所に足を踏み入れることを躊躇ってしまった。
「こまったな〜。これでは3人行くと怪しまれる。あの受付の男、切れ者のような気もする」
「あの人どっかで見たことがあるんだよな〜。誰だっけ」
「知り合いか?」
「そうだと思うんだけど、似てるかもしれないし〜」
「ちょっと私が受付の人に聞いてきます」
ユリファが不安そうに、志願をした。ユリファがここに来ることは不自然ではないし、問題ないだろう
「よし、頼んだぞワシらは扉越しに援護する」
「中には入んないですね」
「ダビデスさんが目立つからね」
「た、たしかに」
ユリファと二人の関係性がバレると、良いものもダメになってしまう可能性がある。最悪の事態を想定し、ユリファ一人を行かせて2人は遠くから観察することにした。
「あのう。ちょっとお聞きしたいことが」
「勇者参加希望者は、勇者科ですよ。ここは法律専門です」
男はユリファが既に女戦士であることを判断せずに、相手すらしていない。男は書類を作成し続けていた。ユリファは見えない圧力に負けて法務部から退出せざるを得なかった。
扉越しに二人の様子を見ていたダビデスは恋愛にモテている男はこれだからと軽蔑の目を向けようとしていた。
「この問題かなり手強そうじゃな。あの爽やかそうな男でさえ冷たい。これは、ごり押しして説得するしかないか」
計画が早くも頓挫。ガッカリした様子で扉越しに切れ者の受付を伺うダビデスとナオ。書類に向き合っている男が一瞬視線を感じたのか、扉を見た。その瞬間隠れるように扉を閉めたがその一瞬をナオは見逃さなかった。
「待って? アイツって」
「どうしたんじゃ?」
「受付の人、多分知り合いだ」
そういうと、ナオは扉を開けて受付の男に近寄っていた。ナオが近づき何かを話しかけると、男は突然今までとは違い冷静さを欠き慌てていた。
「どうしたんじゃ」
「知り合いだったんじゃないんですかね」
ダビデスは状況が有利と判断し、監査部に入っていった。
「ナオどうしたんじゃ?」
「ダビデスさん、もう大丈夫です。これは勝ちましたよ。」
「どういうことじゃ」
「この受付の人知り合いだったんです。名前はチェリオくん。法務部にいるなら教えてよ」
「ナオさん、その名前やめてくださいよ」
「チェリオが彼の本名じゃないか」
「違いますよ。僕はシオンです。シオン=サウロです」
「ダビデスさん、こいつのことはチェリオでいいよ」
「チェリオ?はて一体どうしてそんな前が」
「こいつ、ど……」
「ご、ご、ご、ご用件はなんでしょう!?」
あれだけ手強そうに見えた相手でも、ナオの登場によって大きく動きだした。何やら弱みを握られているらしい。チェリオと言われただけで動揺している。どうやらこの男には、チェリオという必殺魔法が効くらしい
「エデン法って改正することできないの!?」
一瞬、法務部が静かになった。そして不思議そうに2人を見つめた
「ナ、ナオさん、一体なにを言いだすんですか。ここは法務部ですよ」
「もちろんわかってるよ。でも、監査部で違法にしないとマズイものがあるんだよ」
「そういうことでしたか。でも、それはここで言わない方がいいですよ。君主派の人間ばかりなので。ナオさん、追放されますよ」
「きっかけはナオじゃないんじゃ。ワシが原因じゃ」
「あなたってまさか」
シオンは、ようやくこの大男が誰か気づいたらしい
「シオンといったな。お主は感がいい。その表情からするとワシが何者かを悟ったという幹事じゃな。お主も知っておろうが現在は監査部の人間じゃ。ワシが相談したんじゃ。今のエデン法の中に、確実に違法になってしまう法律があるんじゃ」
「そうとはいっても、エデン法は300年前から平和を維持するために制定されたものです。エデン内の秩序を保つことができた絶対的な法律ですよ」
「なるほど300年前に制定されたものなんじゃな」
「はい」
「それなら今の時代にそぐわない法律もあるはずじゃ。変えるべきじゃないか」
「そうですけど、変えると平和を脅かす可能性が」
平和を揺るがしかねない。この国の定型文に対しダビデスは苛立ちもなかった。ダビデスは冷静さを保ちながら、シオンに問いかけた。
「エデンは国民が変化を求めることはダメなのか」
「いえ、そうではないですが。今まで平和を維持してきた法律なので」
「ではどうすれば法律を変えることができるんじゃ」
「あることはあるのですが、、、ここではちょっと」
「監査部の部屋で詳しいことを聞こうじゃないか」
「今、仕事中ですし」
「なるほど〜チェリオくんは受付の仕事が忙しいのか。チェリオくん仕事頑張れよ。チェリオくん、期待してるぞチェリ……」
「わ、わかりました。もうやめてください」
「忙しいのに来てくれるのか。ありがとうさすがエデンの男じゃ」
どうすれば相手を恐怖のどん底に陥れることができるのか。ダビデスは知っていた。恐怖の大王として君臨したあの日々は無駄ではなかったと実感したのだった。
合法まおう!〜世界一優しい世界征服〜 ふみ台 @kopepe1026
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