第6話 悪知恵を働かせたらダメなんですか?

「考えって何ですか。それはエデン法に沿ったものですか」


「今の段階では残念ながら違法だ。でもそのうち合法になる」


「どういうことですか」


「法律を変えるんじゃ」


「ほ、ほうりつ!?」


そんなことでビックリしてたら、この先どうなるんだろうかとダビデスは落胆した。

ダメな法律があれば、法律を変えれば良い。なぜ、そんな単純な発想に気づかないのか疑問だった。


「法律を変えたら、死刑にでもなるか?」


「えっと………」


ナオとユリファは、人を殺せるくらいぶっといこの国の絶対的な法律、エデン法書と睨めっこをしはじめた。“エデン法を改正した者は即刻追放”という言葉がないかを探すためだ。


「おそらく、ですが、法律を変えてはいけないという法律はないようです」


「よし、そうと決まれば法律を変えるぞ!」


通常であれば、ここでアップテンポのBGMが響き、ストーリーが大きく動いていくのだが。巨大モニターが設置されている無機質な空間ではダビデスの野太い声が響きわたり、ナオ、ユリファはポカンとしているだけだった。


二人はキラキラした表情をするというよりも、本当にこの大男は法律を変えるつもりがあるのか?そんな目をしているのだ。


「ど、どうしたんじゃ。ほら法律を変えるぞ!」


「どうやって変えるんですか」


「そ、それは……」


ダビデスはバベルという国では恐怖の魔王として恐れられていた。しかし、今はエデンで監査部の仕事をこなすおじさん。ただの戦闘に詳しい大きいおじさんなのだ。


法律を変えるぞ!!と意気込んでも、「バベルを滅ぼしたクソ野郎が何を言い出す。アホか」となるのだ。ダビデスの案は悪く無さそうであったが、ものの数秒で詰んだように思えた。


「そ、それなら一度、法務部に足を運んでみませんか」


「ホウムブ!?」


「エデン法を管理している部署ですよ」


初めて聞く賢そうな言葉に戸惑っているダビデスにナオが助け舟を出した。


「なるほど。そこを説得すれば法律を変えられるのか。でかしたぞ」


ダビデスのアイデアは巨乳美女によって助けられたようだ。


「でも、法務部はうるさいからな〜。どうせダメって言われるよ」


「そんなに厳しいのか法務部の人間は」


「当然ですよ。エデン法を制定する人間たちですから。とにかく融通がききません」


「そんな人たちに女戦士の法律を変えたいって女戦士が言っても説得力ないですよ。逆に、お前たちが選んだ道だろの一言で一蹴されます」


たしかに、エデン法には女戦士の定義がしっかり制定されている。しかも女戦士になるかどうかは希望制のもの。女戦士が異議申し立てをしても、覆すことは難しいとダビデスも思っていた。


「とはいえ、法律を変えないと前にすすまないぞ。ユリファよその格好でいいのか」


ダビデスはユリファのグラマラスな体をじっくりと舐め回すようにみようとした


「み、みないでくださいっ!!」


「すまん、すまん。そう言うつもりで見たつもりは」


「ダビデスさん、でもこのままだとユリファちゃんがほぼ裸みたいな格好ですよね。これって戦闘に本当に不利なんですか。本当は有利なんじゃないですか」


「あのな〜。空想の世界であればこの格好でもなんら問題ない。でも、ユリファは実際に存在してるんじゃ。こんな格好で戦ったら、物理攻撃もくらいやすい。ファイアーなんか当たったら肌があらわになってしまう。リスクしかないぞ」


「そうですよね〜。でも、法務局にそんなことを説明して通用しますか」


「まて。お前ら法務部の人間に、女戦士の服装を変更したいって直接言うのか」


「当然ですよ」


「あのな〜。そんなこと言ったら良い計画もダメになるぞ。こう言う時は、まずは法律の変更条件を聞くところからはじめんと」


「変更条件を聞く?いいんですか。そんなことして」


「融通が利かない連中なんじゃろ?そんなやつらに法律を変更したいって言っても、条件がありますって言われるだけじゃ。ワシらはその条件を整えるために準備をする必要がある。その間に法務部に法律を「この法律を変えたら追放」なんて変えられたらどうじゃ?ワシらの努力は無駄になる。だから、変更したいと言わず、変えざるを得ない状況を作って新法律を突きつけるのじゃ」


「なるほど。たしかにそうですね!」


「さすが、ダビデスさん魔王だけあって悪知恵が働くわね」


こんなのは誰もが思いつくものであって、悪知恵でもなんでもないと思ったのだが、キラキラした表情で喜んでいる姿をみると言えなかった。


「ということは、私達は法務部に行って法律の調査が必要ですね」


「ああ。そういうことになる。ワシが戦闘上の大きな穴があった。平和を脅かすかもしれないと言えば向こうも法律の変更手続きを教えてくれるじゃろう」


「確かにそうですね」


「そうと決まれば敵地じゃ!法務部に案内してくれ」

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