第5話 女戦士の露出、本当に必要ですか?
ダビデスが監査部の仕事に就き始めて三年の年月が経過した。3年間の間に数多くの事件を担当した。とはいえ監査部の仕事は、勇者が違法な戦い方をしているかどうか。ダビデスから言わせれば全て正しい戦い方だが。仕方なくエデンの方針に沿って監視をおこなっていた。正直ダビデスは監査部の活動に違和感を覚えていた。
いつものようにモニターチェックをしていると、珍しく重厚感のある扉をノックする音が聞こえた。監査部は閉鎖的な空間。外の人間がわざわざ訪れることはあまりない。
「あのぅ、ちょっといいですか」
気弱そうな金髪でグラマラスな体型の女性がやってきた。谷間をあらわにしたその挑発的な服装の彼女は、不安そうに2人を見つめていた。
「あれ!?ユリファちゃん、今日は沿岸警備の途中じゃ」
どうやらナオと面積があるらしい。沿岸警備をするのはエデンでも屈指の戦士が集まった特殊警備隊に許された仕事だ。この軟弱そうな女性はどうやら戦うとなるとそれなりに強いらしい。
「ナオ、この女性は一体」
「ユリファちゃんは、エデンの中でも精鋭が集まる特殊警備隊所属よ。今のダビデスさんならボッコボコにされちゃうかもよ」
「何を申しておる。これでもワシはバベルの王よ。申し訳ないが小娘に負けるはずがない」
普通であれば、ここで一戦交えてみますか?と言われダビデスがボコボコにされるというシーンがあることが多いが、そんな素振りも見せずダビデスに会釈とすると、ナオに相談を持ちかけた。
「私の服装、露出足りないかな?隊長に服装がなってないと言われて」
「そんなことないよ。十分露出高いと思うよ」
「なんじゃ?ここではそんな格好で戦うってのか。無理じゃろ。とちゃんとローブで隠せ」
「そうじゃないんです。エデン法で女勇者は露出規定が50%以下になっているって言われているんですよ」
「はぁ!?十分これでも露出してるのに。もっとしろって?」
なんと素敵な制度なんだ。世の中の男性がそう思っただろう。私ならそう思う。なんといっても、異世界なのだ。露出が高い美女が活躍しても何らおかしくない。それでもダビデスそおかしな制度に違和感を持って素晴らしい制度に気づいていなかったのだ。なぜ露出を推奨しているのかわからなかったのだ。
「これ以上露出増やすって、そしたらユリファさんは裸そのものじゃないか」
「仕方ないですよ。そういうルールなのですから」
「またここでもルールか。何で露出を高くする必要がある」
「正直、理由はわかりません。この法律のおかげで女戦士は少なくなり死亡者が減ったのも事実です。女性の身を守るためのルールなのですよ」
確かに一見するとその理論は理にかなっていた。露出が高ければ、けしからん展開にもなるし、オークみたいな股間脳の魔物の被害も増える。リスクしかない状態なのだ。
死のリスクと辱めのリスク、双方を背負ってまで勇者になろうと意気込む輩はそうはいない。女戦士の犠牲を減らすためにエデンが苦肉の策として作りあげた法律でもあるのだ。
しかし、ダビデスはこの法律に納得していなかったのだ。
「お主は露出についてどう思っておる」
「できれば、したくないんですが、戦士になるには必要で」
「ということは、その制度に反対をしているってことか」
「ええ」
「では、なぜそんなリスクを背負ってまでお主は女戦士になったのだ」
「世界を救うためです。女戦士が世界を救ってはダメですか」
「いや。むしろいいことだとワシは思う」
「それに、女戦士には男戦士にはない白魔法を繊細に扱えます。私たちのような女戦士がいることでパーティーの生存率は飛躍的にあがります」
確かにユリファの言う通りだった。ダビデスはユリファという女戦士がただ金髪でグラマラスな格好で女戦士の姫的な存在で守られながらパーティーに入れられる存在ではないことに気づいた。
ユダの世界では、白魔法、黒魔法、青魔法、召喚魔法がある。その中でも白魔法は女性の方が唱えるのがうまいと言われている。回復量が違うのだ。そのことをユリファは知っていたのだ。
「では、なぜ抗わない。このままだとお主はとんでもない格好で闘わなければいかんのだぞ。こんな格好の女戦士がバベルにいたら、すぐに服装を着させる」
「でも、女戦士は露出が高く美しい存在だと教わってきました。」
「それは、エデンの一般的な常識だ。おかしいと思わんか」
「はい」
「ナオもおかしいと思わんのか」
「私は露出が高いのが嫌で、内政官の仕事を選んだからね。それに平和を維持するために必要な理にかなった法律なので異論はないわ」
そうだった。ここではダビデスの常識は全くもって役に立たないのだ。そのことをダビデスは忘れていた。どれだけダビデスの知っている一般常識を掲げても一般常識ではない。
「おぬしら、本当に今にままでいいのか。平和のために露出が高くてもいいのか」
「女戦士がいなくても、この世界を守れるし、それになりたい人は露出の高い服装を着ればいい。それだけですよ」
「あ〜もう。なんで女戦士が露出高い服装じゃないとダメなんじゃ。ワシはそのルールに納得いかん。こんな露出をしていると戦いに集中できんぞ」
「でも、法を変えない限りこの制度が適用されます。このままいくとユリファさんは罪に問われて追放されるかもしれません」
その時、ユリファの表情が一瞬こわばったことをダビデスは見逃さなかった。追放はこの国ではとんでもない重罪らしい。
「平和に暮らすためには、国民もルールを守らないといけないんです。女戦士を目指さなければこの法律に引っかかることはありません。簡単な話です」
ダビデスは何も言えなかった。この国では王の定めたルールが絶対的な正義なのだ。ルールに従って国民は暮らしている。全ては平和のためなのだ。それ以外の行動を起こすと平和を脅かす存在なり、結果的に崩壊へと導いてしまう可能性があるのだ。
「お前たちに聴きたいんだが、法を変えるためには何が必要なんじゃ」
「一応あることはあるけど」
「ルールを変えれば、露出の低い女戦士も合法ってことよな」
「まぁそうなりますが」
「ワシに考えがある」
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