-第四幕-
其の七十八 心の底から湧き出る感情は、あらゆる論理的思考を超越する
「……はぁ~~~~っ」
――濁った雲がどんよりと空を覆う、木曜日の夕方。
生徒会室を出て、烏丸と別れて、独り寂しく帰路を辿っていた僕の口から吐き出された、
盛大なる『タメ息』。
……ちなみに、『不思議ちゃん、今度は校内に幽霊騒動を起こすの巻』事件の調査依頼を、半ば強制的に僕に押し付けた『神代』は、とつぜん生徒会室に現れた我がクラスの担任、『脱力系ポニーテール女教師』に呼び出され、何やら『1-Aの住所録の盗難が起こった』とかでドタバタとその場を去って行ってしまった。
「何かあったら、連絡をヨロシク!」と、最後に慌ただしく神代と連絡先を交換するくだりがあったのだが、ついでということで、烏丸の電話番号も図らずもゲットする運びとなる。たった「一件だけ」だった僕のスマホの連絡帳の登録数が一気に三倍になった。 ……改めて、『友達居ない』んだな、僕は……。
コンクリートの地面を、力の無い足取りで 踏みしめる僕の頭の中に、ぐわんぐわんと反芻する神代の『台詞』――
――頼むよ! こんな事頼めるの……、『水無月君』しか居ないんだ!――
…
……いやいや、
僕にだって無理、というか、僕『なんか』には到底無理……。
『インポッシブルなミッション』を『コンプリート』してしまうのは映画だけの話だ。
……っていうか、そんな事より――
ひょんな事から浮かび上がった『三人目の赤眼』……、『黒幕』の犯人像――
――『怪奇現象』が発生する時、決まって近くに、一人の『女生徒』が居るらしいんだ――
果たして、数学が苦手な僕でさえ導き出すことのできる、『黒幕』=『御子柴 菫』の方程式……。
……ここ数日の『御子柴 菫』の言動は、明らかに不自然……、僕を取り巻く『色眼騒動』について、何かしらの情報を知っていないと『飛び出すはずがない』台詞の数々……、しかして――
『御子柴 菫』が『黒幕ソノモノ』なのであれば、
『全てを知っていた』としても何ら不思議なことは無い。
かなり高い確度で自分の推理に『手ごたえ』を感じていた僕は、『真相』に近づきつつある実感からの『興奮』と、確証を得ることが出来ない『もどかしさ』から、『目の前を向いて歩く』という、当たり前の行為に意識が向かなくなり――
―――ゴンッ
「―――あ痛ァッ!」
――果たして、強打。
僕は、まごうことなく、『電信柱』に頭をぶつけた。
……いてて、考え事しながら電柱に頭をぶつけるとか、バカボンのパパじゃないんだから……、あれ、デジャヴ?? ……まぁいいや、誰かに、見られなかっただろうな。
僕は頭をさすりながら、キョロキョロと周囲に目を向け、様子を窺う。
……うん、誰も居な――
…
……居ないね、誰も……
ポッカリとした空間が広がるその曲道を見やりながら、
物憂げな夕日に照らされながら、
ふと僕の脳裏によぎった、『ド天然娘』の、『微笑』――
…
……如月さんは、僕の『考え』を聞いて、どう、『思う』のかな……。
――しばしの沈黙、
僕は誰も居ないその小道で、バカみたいに突っ立ったまま、
口元に手をやり、じぃーーっと、ある『選択』に『悩んでいた』。
…
…
……よしッ。
思い立ったが吉日、善は急げ、『カートに入れずに「今すぐ買う」』。
……最後のは、違う……かな。
――僕は、『かなり久しぶり』に、『自分の気持ちに素直になる』ことにした。
……如月さんに、僕の話を聞いてほしい。
僕の考えを話して、彼女がどう思うか、聞きたい。
……っていうか、
…
…
――シンプルに、『会いたい』。
僕はくるりと踵を返すと、
つい先日、寒空の夜に『半そで一枚』でたどったその道を、
――何かに急き立てられるように、猛ダッシュで駆け始めた。
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