426 イケメンペンタゴンなんて御免だからっ!
「みんな、少し落ち着かないか。ハルシエル嬢も困っているだろう?」
俺の様子を見てとって、リオンハルトがヴェリアス達をたしなめるが……。
リオンハルト! お前まで近づいてこなくていいからっ! イケメンペンタゴンなんて御免だからっ!
お前はイゼリアのおそばでいてろっ!
イケメン包囲網から何とか逃れられないかと見回した俺の目が、新たに階段をのぼってきた人物を捉える。
ぱぁぁっ! という擬態語が聞こえそうなイイ笑顔で俺達を見上げたのは腐女子大魔王の姉貴とシノさんだ。
おいっ、姉貴っ! 『超イイものを見た!』ってデカデカと顔に書いて黙って見つめんなっ!
シノさんも目をきらきらさせて見ないっ!
絶対に脳内でよからぬ妄想を繰り広げてるだろっ!? 口元が明らかにゆるんでるぞっ!
別に俺はイケメンどもとイベントなんて起こしてないからっ! これは偶然起こった不幸な事故だっての!
っていうか、階段を上がるのに邪魔なんだから声をかけろよっ!
「あっ! 理事長! すみませんっ、階段をふさいでしまって、邪魔ですよね!? すぐにどきますから!」
放っておけばいつまでもによによと俺達を見つめていそうな姉貴に、そうはさせるかと俺から声をかける。
姉貴が残念そうに顔をしかめたが、そんなの知ったことじゃねぇっ!
「申し訳ありません、理事長。邪魔をしてしまいました」
一礼したリオンハルトに続いて、他の面々も口々に挨拶する。
ようやくゆるんだイケメン包囲網から、ほうほうの
あぁぁっ! イゼリア嬢に呆れられてしまった……っ!
違うんですっ! 悪いのは俺だけじゃなくて、がちゃがちゃうるさいイケメンどもなんです〜っ!
「いやいや、気にしないでくれたまえ。何かあったのかい?」
数段下にいる姉貴が、俺達を見上げて尋ねる。
おいっ、白々しいぞっ! 俺が声をかけるまで、シノさんと一緒に、息をひそめてじっくり見つめてただろーがっ!
「いえ、少し立ち話をしていただけです」
リオンハルトがにこやかに笑って姉貴に答える。
「さあっ! 理事長もいらっしゃいましたし、無駄話をしてないで生徒会室へ行きましょう! 今日もいろいろ準備があるんでしょう!?」
イゼリア嬢にいいところを見せるべく、キリッとした顔で促すと、イケメンどもが頷いた。
確か今日は、会場の飾りつけについて話し合うんだっけ……。
ここはやっぱり、生徒会役員の権限を使ってでも、イゼリア嬢のドレスが生えるような飾りつけにしたいよな……っ!
聖夜祭では、リオンハルトにエスコートされて、いつも以上に輝いてらっしゃるイゼリア嬢を見られるに違いないもんなっ!
麗しのイゼリア嬢にふさわしい舞台を整えないと……っ!
……ん? ってことは、天上をイメージして作ればいいってこと……? 女神に等しいイゼリア嬢にふさわしい場所と言えば、天上以外にないもんなっ!
ひとりで納得してうんうんと頷いていると、リオンハルトに「どうかしたのかい?」と声をかけられた。
「あっ、いえ……。その、会場の飾りつけですけれど、天上を連想させるような壮麗な感じも素敵だなと思いまして……。教会とか、神殿みたいな……」
「なるほど。結婚式みたいなイメージかな?」
最後尾にいる姉貴が、急に口をはさんでくる。
『結婚式』という単語にイケメンどもがざわついたが、同時に俺の心臓も跳ねた。
イゼリア嬢の結婚式……っ!?
俺の脳裏にすぐさま甦ったのは、文化祭の時に1年1組の展示で見たゴルヴェント家に伝わる花嫁衣装だ。
……つまり、聖夜祭の飾りつけを結婚式風にすれば、本番と聖夜祭とでイゼリア嬢の素晴らしさを二回味わえる……っ!?
「理事長っ! 素敵ですねっ! ぜひともそんな感じの華やかな飾りつけにしたいですっ!」
姉貴の提案に、珍しく全面的に賛成する。
イゼリア嬢がブーケトスの予行練習までしてくださったら最高なんだけど……っ!
そしたら、ハルシエルの運動神経の悪さもなんのその、何があろうとイゼリア嬢のブーケをゲットしてみせるぜ……っ!
まあ、もちろん、俺はブーケを受け取ったとしても、結婚する気なんてまったく全然ないけどっ!
っていうか、待てよ……。
そうだよっ! ブーケがないなら、俺がイゼリア嬢に花束をお贈りすればいいんじゃね……っ!?
イゼリア嬢が手に持たれる用と、ブーケトス用の二つを……!
いやっ、どうせなら俺が持つ分も一緒に用意すればおそろいに……っ!
うんっ、我ながらナイスアイデアだぜっ!
花束なら、俺のバイト代でなんとかなりそうだし! こういう時に使ってこそだよな!
イゼリア嬢は薔薇がお好きだから薔薇は外せないとして……。他にどんな花がいいだろう?
ピエラッテ先輩に相談してみるのもいいかもしれない。
自分の思いつきにるんるんとスキップしたい気持ちになりながら、俺はうきうきと階段を上がった。
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