男なのに乙女ゲームのヒロインに転生した俺の味方は、悪役令嬢だけのようです ~ぐいぐい来すぎるイケメン達にフラグより先に俺の心が折れそうなんだが~
415 俺のパートナーが決まらなかったらどうなるっていうんですか!?
415 俺のパートナーが決まらなかったらどうなるっていうんですか!?
「ですが……。まだドレスの形が決まっただけでございます。ここからさまざまな調整が必要となります。ちなみに、ハルシエルお嬢様のエスコートはどなたが務められるのですか? 生徒会の方々のどなたかでしたら、皆様、『プロープル・デュエス』で衣装を作られますので、ポイントポイントの色ですとか、装飾などをあわせさせていただきますが」
「あっ! そのことでジョエスさんにお願いしておかないと、って思ってたんです!」
ジョエスさんの申し出に、渡りに船とばかりに身を乗り出す。
「エキュー君が明るめの青系統の衣装にしようと考えているって聞いたんですけれど……。私のドレスと色がかぶらないようにしていただきたいんですっ! いえっ、エキュー君だけじゃなく、他の誰とも共通点がないようにお願いしたんですけれど……。可能でしょうか!?」
「まぁ……っ!」
俺の言葉に、ジョエスさんが驚いたように目を見開く。
「それでは、ハルシエルお嬢様をエスコートされる方は、生徒会役員以外の方というわけでございますか……っ!? 大きな壁を乗り越え、見事ハルシエルお嬢様をエスコートする権利を手に入れた幸運な方は、いったいどなたなのでしょう……っ!? 気になりますわ……っ!」
「まさか、生徒会役員以外に、ハルシエル嬢にエスコートを申し込む
ジョエスさんに続き、ピエラッテ先輩が真剣極まりない顔で俺に身を乗り出す。二人の問いかけに、俺はきょとんと首をかしげた。
「何か誤解があるようなんですけれど……。エスコートしてもらう相手なんて、いるはずがありませんよっ! 誰にもエスコートしてもらう気なんて、ありませんからっ!」
イベントを起こさないためにも、イケメンどもにエスコートされるなんて、論外だ。
かといって、他の男子生徒にエスコートしてもらうつもりも、全然ない。そんなことをして、俺の知らない何かのイベントが起こったりしたら悔やんでも悔やみきれねぇ……っ!
っていうか、そもそも俺に申し込もうなんて思う奴なんていないだろうし!
きっぱりと宣言した途端、
「「え…………?」」
ピエラッテ先輩とジョエスさんが、
まるで、時間が止まったかのように、俺を見つめたまま、ぽかんを口を開けて凍りついた二人に、俺のほうが戸惑ってしまう。
「ど、どうしたんですか? 二人とも……」
「いえ、その……」
ジョエスさんが助けを求めるようにピエラッテ先輩に視線を向け、それを受けたピエラッテ先輩が、片手で額を押さえて深く吐息した。
「その、ハルシエル嬢……。パーティーにあまり参加したことのないだろうきみが知らないのは、無理もないことだと思うんだが……。たいていの女子生徒は、エスコートしてくれるパートナーと一緒に聖夜祭に参加することが多いんだ。なので、生徒会役員であるきみがエスコートもなしで参加するというのは……。悪目立ちしてしまうことになるかもしれないよ? 何より……」
難しい表情になったピエラッテ先輩が何やら言い淀む。
「ど、どうしたんですか……?」
これほど苦悩しているピエラッテ先輩の表情は初めて見る。不安に駆られて問いかけたが、ピエラッテ先輩は、
「いや、その……。何と言うべきか……」
と困ったように口ごもったまま、何も言わない。代わりに、何かに気づいたように息を呑んだのはジョエスさんだ。
「なるほど。ハルシエルお嬢様がずっとパートナーを決められないとなると……」
「遠からず誰かが動いて均衡が破られることになるとは思うけれどね。だが、もしハルシエル嬢が次々と断ったりすると……」
ピエラッテ先輩とジョエスさんが、二人そろって心配そうなまなざしで俺を見る。
「な……っ、どうしたんですかっ!? 俺が誰にもエスコートしてもらわなかったら、何か悪いことでも起こるんですか!?」
「その、きみに悪いことが起こるというか……」
ためらいがちなピエラッテ先輩の言葉にぴんとくる。
「イゼリア嬢ですかっ!? イゼリア嬢にどんな悪いことが起こるんでしょう!? 俺のせいでイゼリア嬢にご迷惑をおかけしてしまうなんて……っ! そんな事態、許せませんっ!」
「お、落ち着いてほしい、ハルシエル嬢」
ずいっと身を乗り出した俺の両肩を、ピエラッテ先輩がそっと掴んで押し留める。
「私の考えすぎという可能性もまだ否定できないからね。だがその……。きみのパートナーがいつまでも決まらないと、生徒会役員の面々もきみを気遣うんじゃないかと思ってね」
「えぇぇ~。そんな気遣い、まったく全然いらないんですけれど……っ!」
俺が高等部からの入学で聖エトワール学園の風習に慣れていないからだろう。いつも気遣ってくれるイケメンどもの優しさは、本来なら感謝するべきなんだろうと、頭ではわかっているんだけど……。
それが、どこでどうイベントにつながってくるのかわからない以上、俺にとってはありがた迷惑なんだよ……っ!
まあ、その中には、イゼリア嬢込みのお茶会とか、イゼリア嬢も一緒の夏のお泊りだとか、イゼリア嬢と一緒に文化祭を回るとか、イゼリア嬢と一緒の時間を過ごせるのもあるから、その点はめちゃくちゃ感謝してるけど……っ!
でもあいつら、ちょっと気を抜いたらぐいぐいくるしっ!
俺がいちゃいちゃ仲良くなりたいのはイゼリア嬢ただひとりであって、イケメンどもはお呼びじゃねぇんだよ……っ!
思わず顔をしかめて呟くと、ピエラッテ先輩がくすりと笑った。
「きみは本当にブレないね。まあでも、さっき言ったことは私の杞憂に過ぎないからね。何より、きみの意に染まないことを強いたくない。いまはまだ聖夜祭のパートナー探しが始まったばかりだし、それほど焦らなくていいんじゃないかな」
「はぁ……?」
にっこりと笑うピエラッテ先輩の言葉に、何となくそれ以上突っ込むのもはばかられ、俺はあいまいに頷いた。
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