371 姉弟ともども、仲よくしていただけたら嬉しいです!



「姉上から、何度かお名前を聞いたことがあります。生徒会役員の中で、女生徒は姉上とハルシエル嬢の二人だけなんですよね?」


 えぇぇっ!? イゼリア嬢がご家族の前で俺の名前を出してくださったんですか……っ!?


 嬉しい……っ! 嬉しすぎますっ! いったいどんな内容を話してくださったのか、根ほり葉ほりくわしく聞きたい……っ! けど、いまは我慢だ俺っ!


「はい、そうなんです。女生徒は二人だけなので、イゼリア嬢には本当によくしていただいているんです! いくら感謝しても足りないほどですっ!」


 俺とイゼリア嬢が親しいとご家族にアピールするべく、シェスティン君と目をあわせ、にっこり微笑んで告げると、なぜかシェスティン君が動揺したように視線を揺らした。


「そ、そうなんですね……」


 もごもごと呟いた面輪は、なぜかうっすらと赤い。


 ん? シェスティン君もイケメンどもにあてられたのか……? 確かに、舞台衣装のイケメンどもはほんっとキラキラオーラがすごいもんなぁ……。


 シェスティン君の様子はイケメンどもと顔をあわせた時のロイウェルを彷彿ほうふつとさせる。


「イゼリア嬢から、シェスティン君も来年入学予定だとうかがいました。私もロイウェルという名前のひとつ下の弟がいるんですけれど……。姉弟ともども、仲よくしていただけたら嬉しいです!」


 ちゃんとロイウェルのことを売り込んでおかないとなっ! ここでシェスティン君に好印象を持ってもらわないと!


 満面の笑みで告げると、シェスティン君が「うっ!」言葉を詰まらせる。


 さっと俺の右隣に並び、にこやかに告げたのはリオンハルトだ。


「来年入学した時には、もちろんわたしやディオス達もいるからね。何かあった時には頼ってほしい」


「リオンハルトの言うとおりだ。真っ先に俺を頼ってくれていいんだぞ」


 ディオスも俺の左隣に並び、シェスティン君に微笑みかける。


 ディオスってほんとに面倒見がいいよなぁ……。こんな先輩がいたら、シェスティン君もさぞ心強いに違いない。


「……もー、ほんと無自覚に小悪魔なんだから……」


 後ろでぽそっとヴェリアスが呟いた声が聞こえたが、意味がわからないのでスルーする。


 お前は小悪魔なんて可愛いもんじゃなくて大悪魔だろっ、ロットバルト!


 ディオスの隣からシェスティン君へ身を乗り出したのはクレイユとエキューだ。


「シェスティン君。年が近いほうが話しかけやすければ、わたしやエキューに頼ってくれたらいい」


「クレイユの言うとおりだよ! 仲よくしようね!」


 にぱっとシェスティン君に笑いかけるエキューは天使そのものだ。


 ロイウェルとエキュー、それにシェスティン君の三人がそろったら、きっと天使三人組になるんだろうなぁ……。


 もちろん、至高は女神のイゼリア嬢だけどっ!


 仲よくしているシェスティン君とロイウェルを見ながら、イゼリア嬢のお隣でおしゃべりとかできたりしたら最高なんだけど……っ!


 にしても、やっぱりイケメンどもって後輩思いだよな。ロイウェルの時も熱心に声をかけてくれてたし。そういうところは、さすが上に立つ者だと感心してしまう。


「みなさん、本当に後輩思いなんですねっ! さすがです!」


 うんうん、可愛い後輩にかまって俺にかまわなくなってくれたら、ベストだよな! 腐女子大魔王の姉貴やシノさんだって喜ぶだろうし……。


 そして俺はイゼリア嬢と二人で仲よく……っ!


 うんっ、最高じゃね!?


 もっとシェスティン君にかまえと言う気持ちを込めてイケメンどもを褒め称えると、なぜか全員が微妙な顔で口をつぐんだ。


 あ、イケメンどもはふだんから賞賛の言葉を言われまくってて慣れてるもんな……。ハルシエル程度に褒められても、別に嬉しくもなんともないんだろう。


 代わりとばかりに口を開いたのはイゼリア嬢だ。


「リオンハルト様達にそのように言っていただけるなんて、頼もしいことこの上ありませんわ!」


 はぅっ! きらきらと輝くばかりの笑みを浮かべるイゼリア嬢がまぶしすぎます……っ!

 オデット姫の衣装も相まって、まさに地上に降臨した女神様です……っ!


 娘の言葉に、ゴルヴェント侯爵夫妻も笑顔で追随ついずいする。


「リオンハルト殿下にそのようにお心遣いいただこるとは、誠に心強いことでございます。感謝の念に絶えません。どうか、今後ともイゼリアだけでなく、シェスティンともどもリオンハルト殿下のおそばに置いていただけましたら、これほどの喜びはございません」


 ん? 今、後ろから「リオンハルトとシェスティン君……っ! 金髪上品王子様とちょっと険のキツい顔立ちの黒髪後輩……っ! うんっ、それもアリ!」って姉貴の脳内の叫びが聞こえたような気が……。


 おいっ! 初対面のくせに、純真そうなシェスティン君まで毒牙にかけるのはやめろぉ……っ! この腐女子大魔王め……っ!


 いや、これ以上、深く考えるのはよそう、うん。俺の心の平穏のためにっ!


 っていうか姉貴っ! 俺に怪電波を飛ばしてくるんじゃねぇ――っ! そういうのはシノさんと二人できゃっきゃきゃっきゃとやってろ! 俺を巻き込むなっ、マジで――っ!


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