341 昼食後はいったん解散!
見た目も味も豪勢なランチを
残念極まりないけど、仕方がない。俺だって、クラスの展示の当番があるし、イゼリア嬢やクレイユ、エキューも展示の当番だそうだ。
よしっ! 俺の当番時間が終わったら、もう一度一年一組の建物を覗いてみよう……っ!
と、俺が決意したのは言うまでもない。
でも、まさかこんな風に半日近くもイゼリア嬢と一緒に文化祭を過ごせるなんて、夢にも思わなかった。
いやっ、夢には何度も描いてたけどっ!
まさかほんとに文化祭の思い出作りができたなんて……っ!
イケメンどもが超絶邪魔だったけど、そこの部分は脳内で削除しておけばいいよなっ、うん!
ちなみにリオンハルトやディオス、ヴェリアス達ももうしばらくギャルソン姿で接客をするらしい。
どこから噂が広まったのか、俺達がご飯を食べてる時からものすごい盛況になってたけど……。
リオンハルト達に給仕してもらえるとなったらさらに混みそうだよな……。これはさっさと退散するに限る。
姉貴とシノさんは二人で文化祭を回るらしい。
「では、次に全員で集合するのは、『白鳥の湖』の時だね。それまで、十分に文化祭を楽しんでほしい」
食堂の入口まで見送ってくれたリオンハルトが上品な笑みを浮かべて告げる。
クラスの当番の時間を除いても、劇が始まるまでの自由時間はまだ二時間くらいある。
できればその間もイゼリア嬢と一緒に過ごしたいけど……っ!
「あのっ、イゼリア嬢――」
話しかけようとするも、ひと目リオンハルト達の超レアなギャルソン姿を見ようと殺到する人波のせいで、分断されてしまう。
さすがセレブ校というべきか、罵声なんかは飛ばないけど、物理的な圧がすげぇ……っ!
人ごみに押しのけられるままイゼリア嬢達と引き離された俺がひと息つけた時には、すでにイゼリア嬢のお姿はどこにもなかった。
クレイユとエキューがイゼリア嬢と一緒だったから、大丈夫だと思うけど、さすがにこの混雑の中では探すのも難しい。
仕方なく、このままクラスの展示に戻ることにして歩き出す。
文化祭という非日常のせいだろう。空気までふわふわわくわくと弾んでいるような感じがする。生徒の大半はいつもどおりの制服姿だけど、たまにクラブウェアの生徒もいれば、仮装みたいな派手な衣装を着た生徒もいる。
お客さん達も華やかな服装だし、非日常感が半端ない。
ロイウェルやランウェルさん、マルティナさんは楽しんでくれてるかな……。雰囲気に
とりあえず、今のタイミングで食堂に行っていませんように!
今の食堂は地獄の込み具合だぞ……。
せっかくおいしいご飯を食べるなら、ゆったりと味わってほしいもんな。
そんな心配をしながら、クラスの展示をしているホールへ戻ると、俺がイゼリア嬢達を案内した朝一番より、かなり見学者が増えていた。
けど、なんか様子が……?
よくよく見れば、展示を見ている人より、立ち止まって耳を澄ませている人のほうが多い。
流れているのは……。イケメンどもが『ラ・ロマイウェル恋愛詩集』を音読したテープだ。
「嗚呼……っ! 皆様のこのお声……っ! 天上の調べのよう……っ!」
「なんて情熱的な朗読なのかしら……っ! わたくしの胸まで熱くなってきますわ……っ!」
ホールのあちらこちらから、感動に満ちた声が聞こえてくる。
どうやらテープのことがかなり広まって客寄せになっているらしい。
それはありがたいけど……。叶うなら、展示もしっかり見てほしい。と。
「ねぇ、ご存知っ!? いま食堂でリオンハルト様やディオス様、ヴェリアス様のギャルソン姿を拝見できるそうよ!」
ちょうどホールに入ってきたひとりの女生徒が、興奮した様子で友人に話しかける。
その瞬間、ざわりと空気が無音の衝撃に
「な、なんですって……っ!?」
「それはすぐに拝見しに行かなくてはいけませんわ!」
「リオンハルト様達のギャルソン姿だなんて……っ! 想像するだけで尊さに気絶しちゃいそう……っ!」
「たとえ、ご案内していただけないとしても、ひと目拝見したいですわ……っ!」
まるで燃える船から脱出するかのような迅速さで、あっという間にホールが無人になる。
……きっと他の場所でも似たようなことが起こってるんだろうなぁ……。
食堂前の混乱っぷりを想像すると恐ろしいほどだけど、まあリオンハルト達のことだから、慣れてるしうまいことやるだろう。せいぜい頑張ってくれ……。
心の中でリオンハルト達三人に
とりあえず、俺の当番時間はお昼時に重なってるから、ひたすら暇そうだなっ! ラッキー!
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