男なのに乙女ゲームのヒロインに転生した俺の味方は、悪役令嬢だけのようです ~ぐいぐい来すぎるイケメン達にフラグより先に俺の心が折れそうなんだが~
333 心を込めておもてなしするからさ♪ 楽しみにしててよ♪
333 心を込めておもてなしするからさ♪ 楽しみにしててよ♪
「お昼ごはんもイゼリア嬢やみなさんと一緒なんて……っ! ありがとうございます! 嬉しいですっ!」
ほんと、いくら感謝してもし足りないぜっ!
心からお礼を述べると、リオンハルトが甘やかに微笑んだ。
「そんなに喜んでもらえるなんて嬉しいよ。楽しみにしていてほしい」
「ああ。さすがにコース料理というわけにはいかないが……。一流レストランのシェフやパティシエを呼んでいるからな。きみの好きな『ムル・ア・プロシュール』のケーキも用意してあるよ」
リオンハルトに負けない甘い笑みを浮かべたのはディオスだ。
その言葉に、夏休みのごほうびデートのことを自然と思い出す。
俺が『ムル・ア・プロシュール』のガトーショコラを食べたいと言ってたのをしっかり覚えてくれていたらしい。確かに、一見さんお断りの『ムル・ア・プロシュール』のケーキは、滅多に食べられないもんなぁ。
っていうか、『ムル・ア・プロシュール』のケーキってことは、イゼリア嬢がお好きなもののひとつ!
ひゃっほーっ! イゼリア嬢が喜んでらっしゃるお姿を見られるぜ〜っ! どんな笑顔を見せてくださるんだろう……っ!
ディオスがこんなに嬉しそうな顔をしてるのも、甘党だから、ケーキが食べられるのが嬉しいんだろうなぁ。
「『ムル・ア・プロシュール』のケーキをいただけるなんて、嬉しいです! ありがとうございます!」
にっこりと微笑んで礼を言うと、ディオスの笑みがさらに甘みをました。
「そんなに喜んでくれるなら、交渉した甲斐があったよ」
「へぇ~っ。企画を考える時、やけにデザートは『ムル・ア・プロシュール』にこだわってたのは、そのためか~♪」
ヴェリアスが腹立たしいほどにやけた顔でにディオスをからかう。ディオスの凛々しいな面輪が朱に染まった。
「そ、それは……っ! だ、だが、『ムル・ア・プロシュール』が参加してくれれば喜ばしいと賛成したのはお前もだろう!? 別に俺は……っ」
いつも落ち着いているディオスがこんなにうろたえているのは珍しい。
やっぱり、見た目は
「そういえば、先輩達は三人そろって二年一組なんでしたっけ?」
「そーだよ〜♪」
誰よりも早く答えたヴェリアスが、ぎゅっと俺の右手を取る。
「心を込めておもてなしするからさ♪ 楽しみにしててよ♪」
ぱちりとウインクしたヴェリアスが、不意に身をかがめる。
「っ!?」
手を引き抜く間もなく、指先にくちづけられそうになり――、
「おいっ!」
「ヴェリアス!」
ディオスとリオンハルトが同時にヴェリアスの肩を掴んで引き止める。
その隙に、俺はしゅばっと手を引き抜いた。
ヤ、ヤバかった――っ! おいっ、ヴェリアス! いったい急に何しやがるっ!? ほんっと油断も隙もないなっ!
「まったくお前は……っ!」
「まったくきみは……」
ディオスが目を吊り上げて怒り、リオンハルトまでもが嘆息する。
「も〜っ、二人とも堅いんだから〜♪」
「堅いとか柔らかいとかいう問題ではないだろう!」
ディオスの叱責はまったくもってその通りだ。
お前ら、ほんっとぐいぐい来すぎるんだよっ! 控えめで滅多に俺にかまってくださらないイゼリア嬢をちょっとは見習え!?
おいっ、リオンハルト! 苦笑してるけど、お前もだからなっ!
っていうか、ヴェリアスに負けず劣らずお前も不意打ちが多いから!
リオンハルトがクレイユとエキューに向き直る。
「では、わたし達は先に行って準備をしておくから、理事長やハルシエル嬢、イゼリア嬢の案内は二人に頼んだよ」
「ええ、お任せください」
「はいっ! 僕達でしっかり案内します!」
あらかじめ打ち合わせでもしていたのか、クレイユとエキューが力強く請け負う。
「では、ハルシエル嬢、イゼリア嬢。また後でね」
俺とイゼリア嬢に華やかな笑みを向けたリオンハルトが、ディオスとヴェリアスを連れて背を向ける。
お昼前でそろそろ混み始めるから、席の確保でもしておいてくれるのかな……? それなら、一人でいい気がするけど。
だが、俺にとってはイケメンの人数が減るのは、願ってもないことだ。もう、さっきから、この一団だけきらきら度がすごいことになってたからな!
周りの見学者なんて、展示を見てるんだか、イケメンどもを見てるんだかわからないほどだったし。
この調子なら、午後の『白鳥の湖』も、満員御礼に違いない。
「リオンハルト様達の準備って……。いったい何なのかしら……?」
俺と同じ疑問を抱いたのか、イゼリア嬢が不思議そうに呟く。
「ですよね!? いったい何でしょう?」
準備がなんだろうと別にどうでもいいが、イゼリア嬢とお話しできる機会は逃さないっ!
身を乗り出して食いつくと、イゼリア嬢が細い眉をひそめた。
「まったく、騒がしい方ね。もう少し上品にできませんの? 生徒会の品位まで疑われますわ!」
「はいっ、すみませんっ!」
危ない危ない。話せるのが嬉しすぎて食いついちゃったけど、気をつけないとな!
っていうか、俺を心配してご指導くださるなんて、イゼリア嬢ってばなんてお優しい……っ!
「心配いらないよ! 行けばすぐにわかるから!」
準備の内容を知っているらしいエキューが笑顔で請け負う。
「立ち止まっていては邪魔になるし、ゆっくり歩いて行かないか?」
クレイユに促され、俺達はぞろぞろと歩き出した。
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