332 一年一組の展示を見終わって……。
「イゼリア嬢! ありがとうございましたっ! イゼリア嬢の解説、本当に素晴らしかったです……っ!」
一年一組の展示を見終わり、ホールから出たところで、俺は感動を抑えきれずにイゼリア嬢に話しかけた。
さすがイゼリア嬢のおクラスというか、展示の内容は、もうここをそのまま博物館にしたらいいんじゃねっ!? と思うような素晴らしさだった。
イゼリア嬢がご説明してくださったところによると、展示品の多くは、一組の生徒達の家に所蔵されている品々らしい。
つまりは、ふだんは各貴族のお屋敷の奥深くに収蔵されていて、こんな機会でもないと決して見ることのできない逸品の数々ということだ。実際に、博物館や美術館から要望を受けて、貸し出しされることもあるらしい。
さすが、セレブ校の中でも、さらに高位貴族の子弟が集められている一組だぜ……っ!
各家に歴史が詰まってると言っても過言じゃないんだろうなぁ……。
いったいこのホールにどれだけ価値があるものが集められているのか、考えるだけで気が遠くなりそうだ。きっと、天文学的な数字になるに違いない。
ちなみに、展示品を見学する中で、俺が一番興奮したのは、ゴルヴェント家所有という歴史ある花嫁衣装だった。何代か前にゴルヴェント家から王家に
王家に嫁ぐなんて、やっぱりゴルヴェント家ってすげぇ……っ!
宝石だの真珠だのが縫われ、
もし、あのドレスをイゼリア嬢が身に纏われたら、どれほど神々しく、可憐だろう……っ!
いや、ハルシエルである俺が隣に立てないのはわかってるけど、でも、同性ってことは、イゼリア嬢の親友として、たとえばブライズメイドとか頼まれるかもしれないってことだよなっ!? それで、イゼリア嬢からブーケを贈られたりとか……っ!
いやっ、ブーケをもらったとしても、俺は一生、独身を貫くつもりだけど!
でも、イゼリア嬢のウエディングドレス姿は超見てみたい……っ!
あっ! もちろんイゼリア嬢おひとりでいいんで!
うっとりと想像の翼をはためかせていると、エキューに顔を覗き込まれた。
「ハルシエルちゃん、一組の展示はどうだったかな?」
「もうっ、ほんとに素晴らしかったわ……っ! 誘ってくれて、ありがとう!」
心からの感謝とともにエキューに告げる。
イゼリア嬢とクレイユとエキューの三人で解説を分担したとはいえ、イゼリア嬢が話されるお声を、あんなに長く聞けるなんて……っ!
いや、ちゃんと一語一句逃さず聞いたけどなっ!? 何度だって脳内リフレインできるぜ……っ!
「ほんとっ!? そう言ってもらえて嬉しいよ!」
ぱあっとエキューが愛らしい面輪を輝かせる。
エキューに続いて口を開いたのはクレイユだ。
「本当に熱心に見学していたものな。案内したわたしも解説のし甲斐があったよ」
「だって、イゼリア嬢がおっしゃったように、エリュシフェール国の歴史をきっちり学ぶのは貴族の務めだもの! 今日だけで、かなり知識が増えた気がするわ! ありがとう!」
感心するようなクレイユの声音に大きく頷く。
「イゼリア嬢も、素晴らしい解説を本当にありがとうございました! イゼリア嬢のおかげで、貴族の一員としての自覚が生まれました!」
心からの謝意をイゼリア嬢に伝えると、イゼリア嬢がつんと鼻を上げた。
「それはよかったですわ。そもそも、今まで貴族の自覚がなかったこと自体が信じられませんけれど! 聖エトワール学園の生徒会役員として、みっともない方がいらっしゃると、わたくし達にまで迷惑がかかりますもの。しっかり学ばれることね!」
「はいっ! 今後もしっかり学んでいきます!」
きゃ〜っ! イゼリア嬢に生徒会役員の一員と認めていただけて、叱咤激励していただけるなんて……っ! 嬉しすぎるっ!
文化祭が終わったらまた図書館で歴史の本を借りて勉強しよう……っ!
心の中で決意を固めていると、リオンハルトが、
「ところで、この後のことなんだけれどね」
と穏やかに口を開いた。じっくりと展示を見ていたので、時間はもうお昼近い。
朝から歩き回ったので、かなり空腹を感じている。
「よければ、二年一組のレストランへ招待したいんだが、どうだろうか?」
柔らかに微笑んで告げられたリオンハルトの申し出に、俺とイゼリア嬢が同時に息を呑む。
「まあっ! リオンハルト様からお誘いいただけるなんて……っ! 光栄極まりないですわ!」
イゼリア嬢が輝くような笑顔で華やかな声を上げる。
もちろん、俺も異論なんてない。
っていうか、どうした!? 今日は何があったんだっ!?
イゼリア嬢をどう誘おうかと悩みに悩んでたのに、俺が言うより早く、イケメンどものほうからイゼリア嬢を誘ってくれるなんて……っ!
これはもしや……っ! 俺とイゼリア嬢が仲良くなるビッグウェーブが来てる……っ!?
こんなに周りがお
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