328 毎日充実して楽しい学園生活を送ってますよ♪
「ハルシエル嬢は、生徒会の書記として、いつも立派に役目を果たしてくれていますよ。それだけではありません。生徒会の一員として、行事にも積極的に関わってくれています」
「リオンハルトの言うとおりです」
リオンハルトに続いて一歩踏み出したのはディオスだ。
「体育祭では、応援合戦で劇のヒロインを演じてくれて、花組を盛り上げてくれて……。花組が優勝できたのは、ハルシエルのおかげに他なりません!」
「それだけじゃなくて、ハードル走の練習もすっごく頑張ってたんですよ! 体育部長の重責に押し潰されそうになっていた僕のことも励ましてくれて……っ! ハルシエルちゃんには、すっごく感謝してるんです!」
ディオスに続いて、エキューも澄んだ声で熱心に言い募る。
いやまあ、ハードル走はゴール前で転んじゃったし、エキューには保健室へ連れて行ってもらったし……。
どう考えても、俺のほうがエキューに迷惑をかけたと思うんだけど……。
両親の前だからって、そんな風に言ってくれるなんて、エキューはほんと天使だなぁ~っ!
エキューに続いて口を開いたのはクレイユだ。
「わたしは文化部長ですが、ハルシエル嬢にはとてもよく手伝っていただいて……。本当に助かっているんです。生徒会で行う劇の練習にもとても熱心に取り組んでいて……。今日はご覧になられるのでしょう?」
クレイユの問いに、
「もちろんです! 愛娘の晴れ舞台ですから……っ!」
「愛娘だって~♪ ハルちゃんってば、愛されてるねぇ~♪」
自分のことのように嬉しそうに微笑んだヴェリアスが、よそいきらしい上品な笑みを浮かべる。
「というわけで、ご安心ください、オルレーヌ男爵ご夫妻♪ ハルちゃんは毎日充実して楽しい学園生活を送ってますよ♪」
充実した学園生活であることは否定しないけどっ! なんてったって、学園にはイゼリア嬢がいらっしゃるんだからっ!
けどっ! 俺の学園生活から「平穏」の二文字を奪っているのは、お前らイケメンどものせいだからな――っ!
その中でも特にトラブルメーカーであるヴェリアスに言われるのが納得いかねぇっ!
が、ヴェリアスの本性を知らないランウェルさんとマルティナさんは、人当たりのいい笑みにすっかりたぶらかされて、感動の表情を浮かべている。
「リオンハルト殿下や皆様にそのように言っていただけるとは……っ! 光栄極まりありません……っ!」
「高等部からこちらにお世話になることになりましたので心配しておりましたけれど……。このようにお優しい皆様がいらっしゃるのでしたら、ひと安心ですわ」
マルティナさんが「よかったわね、ハルシエル」と言いたげなまなざしで俺を見つめてくるけど……っ!
いやっ! イケメンどもはほんといらないんでっ! 俺はイゼリア嬢さえいてくださったら十分なんですっ!
が、そんなことを口に出せるハズもなく。代わりに、別のことを口にする。
「高等部からお世話になると言えばっ! 弟のロイウェルも、今年、聖エトワール学園の入試を受ける予定なんです! 合格したら、春から学園に通うんですよ! ロイウェルは成績も優秀で……。きっと合格間違いなしだと思ってるんですっ!」
俺の言葉に、イケメンどもの視線が俺の隣に立つロイウェルに集中する。もともと緊張していた様子で背筋を伸ばしていたロイウェルが、イケメンどもの視線の圧にびくりと小さく震えた。
「そ、そうなんです! 僕は姉様ほど成績がいいわけじゃありませんけど、どうしても姉様と一緒に聖エトワール学園に通いたくて……っ! 試験に通るよう、頑張ります!」
愛らしい顔を緊張に強張らせ、それでもしっかりとした声で告げたロイウェルが一礼する。
「そうか。きみも学園を志望しているのか。頑張ってくれたまえ。四月に会えることを楽しみにしているよ」
リオンハルトが柔らかな笑みをロイウェルに向ける。リオンハルトに続いて、他のイケメンどもも激励の言葉を口にする。
「ハルシエルの弟なら、きっと合格するだろう。応援するよ。もし、何か困ったことがあったら頼ってほしい」
頼もしい笑みを浮かべて告げたディオスに続き、クレイユが珍しく優しげな笑みをのぞかせる。
「勉強で困ったことがあれば、ハルシエル嬢を通じて教えてくれれば、相談に乗ろう」
「いえいえいえっ! ロイウェルの勉強なら、私がしっかり面倒を見ますからっ! 生徒会のみなさんにご迷惑をかけるつもりはありませんっ!」
間髪入れずに、ロイウェルが答えるより早く口を挟む。
心遣いは嬉しいけど、イケメンどもにロイウェルの勉強を見てもらう気なんてまったく全然ないからっ!
何が哀しくてわざわざイケメンどもとの接点を増やさないといけないんだよっ!
「なんせ中間テストも学年一位は私ですからねっ! 私なら、家でつきっきりで教えてあげられますし、私以上の適任はいないでしょう! ですから、お気持ちだけいただいておきます!」
「ハルシエルちゃんにつきっきりで教えてもらえるのかぁ。いいなぁ……」
はっきりきっぱりと断わった俺の言葉に、エキューが思わずといった様子でぽつり呟く。
「どうしたの、エキュー君? もう期末テストが心配になってるの?」
哀しげな呟きに問い返すと、エキューがあわてたようにぷるぷるとかぶりを振った。
「えっ、その……っ!? う、うん。僕、勉強のほうは今ひとつだから……」
「じゃあ、また期末テストの時にも一年生メンバーで勉強しましょうよ。イゼリア嬢も一緒に!」
そうっ! イゼリア嬢も一緒に! そこが一番重要だからなっ!
一学期も四人で一緒に勉強したし、きっとイゼリア嬢も断ったりなさらないハズ!
「えっ!? いいの!? やったぁ~!」
エキューが輝くような笑顔を浮かべて、弾んだ声を上げる。
やっぱりエキューは癒やし系だなぁ~。可愛くてつい力になりたくなるところが、ちょっとロイウェルと似てるというか……。
エキューとロイウェルを見比べてなごんでいると、ヴェリアスが口を挟んできた。
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