221 イケメン達から突然のプレゼント!?
翌朝、身支度を整えて食堂に降りるなり、心配そうな表情のリオンハルトに尋ねられた。
「おはよう、ハルシエル嬢。足の怪我はどうだい? まだ痛むかい?」
「おはようございます。いえっ、すっかり大丈夫です!」
俺はふるふると首を横に振る。
「もともと、ほんの少し擦りむいただけですし、もう何とも……っ」
夕べは、ネグリジェ姿のイゼリア嬢に、お優しいお言葉までかけていただいたし!
「そうかい? それはよかった」
ほっとしたようにリオンハルトが微笑む。
うっ、朝から笑顔がまぶしい……っ!
他のイケメンどもや姉貴も、次々と食堂へやって来る。
口々に大丈夫かと聞いてくるイケメンどもにも、リオンハルトに言ったのと同じ言葉を返していると、最後にイゼリア嬢が現れた。
白地に淡いピンク色で薔薇の刺繍があしらわれたワンピースを着たイゼリア嬢は、まるで薔薇の妖精のようで……っ! 今日も光輝くばかりにお美しいです!
朝からイゼリア嬢の可憐な私服姿を見られるなんて、やっぱり旅行って素晴らしい……っ!
一週間くらい連泊したっていいくらいだ。
まあ、実際には今日の午後には帰るんだけど……。
「おはよう、イゼリア嬢」
「おはようございます、リオンハルト様!」
リオンハルトの挨拶に、イゼリア嬢が満面の笑みで答える。
う、麗しい……っ! ああもう俺、胸がいっぱいで朝ご飯が入らないかも……っ!
と、リオンハルトが悪戯っぽい笑みを浮かべて、俺を振り返る。
「実は、きみとイゼリア嬢に渡したいものがあってね。といっても、わたし個人からではなく、生徒会の男性陣からなんだが……」
「まあっ、何ですの?」
イゼリア嬢が弾んだ声を上げる。
何だ? いきなりのプレゼント攻勢か!?
くそうっ、俺だって、セレブだったらプレゼントを用意して、イゼリア嬢の輝くような笑顔を引き出してみせるのに……っ!
ってゆーか、生徒会の男性陣からっていうんなら、俺も混ぜろ!
俺だって、イゼリア嬢から「オルレーヌさん、ありがとう!」って笑顔でお礼を言われてみたいっ!
イゼリア嬢から笑顔で礼を言われているイケメンどもを歯噛みしながら睨みつけていると、クレイユとエキューがそれぞれ、俺とイゼリア嬢に綺麗なリボンがかけられた箱を差し出した。
「あ、ありがとう……」
礼を言ってクレイユから箱を受け取り、小首をかしげる。
軽いけど、中身は何なんだろう、これ……?
リボンの色が俺がブルー、イゼリア嬢が淡いピンクというだけで、箱のデザインも同じだから、たぶん中身は一緒なんだろうけど……。
「開けてみてくれるかい? ふたりに気に入ってもらえたら嬉しいんだが……」
「だいじょーぶだって! オレが選んだんだからさ~♪」
リオンハルトの心配をヴェリアスが笑い飛ばす。
えっ!? ヴェリアスが選んだのかよ!? 一気に不安が高まるんだけど、それ……っ!
いやでも、ヴェリアスがろくでもないことをしようとしたら、ディオスあたりが全力で止めてくれるハズ……っ!
緊張しながらリボンをほどき、箱のふたを取ると、中に入っていたのは、女の子らしい可愛いデザインのサンダルだった。箱のリボンに合わせて、俺がブルー系、イゼリア嬢がピンク系だ。
けど……。なんか、俺の知ってるサンダルとはちょっと違う感じがするんだけど……?
「まあっ! 編み上げサンダルですのね! しかも、リボンだなんて……っ! とっても素敵で可愛いですわ!」
イゼリア嬢が華やいだ声を上げる。
いえっ! 喜ばれているイゼリア嬢が一番可愛いです!
でも……。
「編み上げ……? あの、これってどうやって履くんでしょうか……?」
おずおずと尋ねると、イゼリア嬢に呆れた顔を向けられた。
「まあっ、オルレーヌさんったらご存じないの? ……確かに、庶民のあなたはおしゃれとは縁がなさそうですものね!」
おーっほっほ! と高笑いしたイゼリア嬢が、笑いをおさめたあと、仕方がなさそうに吐息する。
「仕方がありませんわね。まったく同じデザインですし、わたくしが履き方を教えてさしあげますわ」
「えーっ。ハルちゃん、わかんないの? オレが履かせてあげよっか?」
ヴェリアスがにやけ顔で提案する。
「いえっ! イゼリア嬢に教えていただきますから結構です!」
きっぱりとヴェリアスの申し出を断ったところで気づく。
ん? 同じデザインってことは……!?
はからずも、イゼリア嬢と色違いのおそろい……っ!?
やった――っ! これは嬉しいっ! ありがとう、イケメンども!
「あ、あの……っ。イゼリア嬢とおそろいでこんなに可愛いサンダルを……っ。ありがとうございます……っ!」
喜びに心を高鳴らせなから、あらためリオンハルト達に頭を下げる。
「きみにそんなに喜んでもらえるなんて、わたしも嬉しいよ」
「うんうん♪ その笑顔、オレも悩んで選んだかいがあったよ~♪」
リオンハルトとヴェリアスが笑顔で応じる。
「そのデザインなら、かかとの傷にも
クレイユの言葉に、リオンハルト達が急にサンダルを贈ってくれた理由を知る。
えっ!? ってことは、これ、夕べの間に用意したってことか!? すげぇ、動きが速い……っ!
あれ……? じゃあ、もしかして……?
「昨日、おなかがすいたって言って、一階に降りていったのは……?」
ふと引っかかった疑問を口に出すと、リオンハルトが無言で笑みを深くした。
「い、いや。結局は夜食も食べたぞ、うん」
「ですよね。どんなのが似合うか盛り上がって、けっこう時間がかかっちゃいましたし……。あっ」
ディオスに続いたエキューが、途中まで言いかけて「しまった!」と言いたげに可愛らしく両手で口をふさぐ。
その様子に、俺は思わず吹き出した。
「お気遣いいただいてありがとうございます。……本当に、嬉しいです」
まさか、イゼリア嬢とおそろいのサンダルをゲットできるなんて……っ! これぞ、まさしく怪我の功名!
いつか、イゼリア嬢とおそろいのサンダルを履いて、一緒におでかけできたらいいなぁ……っ! ひゃーっ、夢が広がるぜ!
「イゼリア嬢とおそろいなんて、本当に嬉しいです! あのっ、お手数をおかけして恐縮ですが、朝食の後で履き方を教えてください!」
イゼリア嬢にも深々と頭を下げて頼む。
「もう……っ。本当に仕方がないですわね! リオンハルト様達のご厚意を無にするわけにはいきませんもの。わたくしが教えてさしあげますわ」
「はいっ! ありがとうございます!」
そのお優しさ! やっぱりイゼリア嬢は天使です!
俺は感動にぎゅっとサンダルを握りしめ、イゼリア嬢に礼を述べた。
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