200 ビーチパラソルの下で一緒に過ごしませんか!?
「あら、オルレーヌさん。どうなさいましたの?」
涼やかなイゼリア嬢の声に、はっと振り返る。
俺がディオスに運ばれている間に階段を下りたイゼリア嬢が、ビーチパラソルのところにやってきていた。
ふ、ふぉおおおおっ!
近くで拝見すると、ますますお美しい……っ! 日陰なのに、辺り一面が輝くようですっ!
しかも、イゼリア嬢が俺のことを気にかけてくださるなんて……っ!
喜びのあまり、ふたたび昇天しちゃいそうです!
「急にふらついたんだ。今日も陽射しが強いし、熱中症じゃないかと心配で……」
ぽ~っとイゼリア嬢に見とれている隙に、ディオスが精悍な面輪を心配そうにしかめて告げる。イゼリア嬢が細い眉を寄せた。
「確かに、冷房が効いていたバスや別荘とは、温度差が激しいですものね。わたくしも、暑さにびっくりしてしまいましたわ」
イゼリア嬢の訴えに、リオンハルトが端麗な面輪を気遣わしげにしかめる。
「身体が熱さに慣れるまでは、のんびりと、無理をしないほうがいい。時間はたっぷりあるからね」
優しい声音でイゼリア嬢を諭したリオンハルトが、不意ににこやかに微笑む。
「言うのが遅くなってすまない。その水着もとてもよく似合っているね。シックで素敵だよ」
途端、イゼリア嬢の可憐な面輪が、さくらんぼみたいに真っ赤に染まる。
「まあっ! リオンハルト様にそう言っていただけるなんて……っ! 嬉しいですわ!」
くそうっ! リオンハルトに先手をとられた……っ!
俺が一番最初にイゼリア嬢を褒めたかったのに!
にしても、クールなイゼリア嬢をこれほど赤面させるとは、さすがリオンハルト……っ! 侮れねぇ砂糖攻撃だぜ……っ!
ってゆーか、照れてるイゼリア嬢、可愛すぎますっ! なんですかその愛らしさっ! 俺の心臓を爆発させる気ですか!? マジで昇天させにきてますね!?
リオンハルト、今回だけは、超GJだと褒めてやる……っ!
俺は他のイケメンどもにも口々に褒めたたえられているイゼリア嬢に身を乗り出す。
「あのっ、イゼリア嬢! でしたら、暑さに慣れられるまで、しばらくこのビーチパラソルの下で一緒に過ごしませんか!?」
「あなたと?」
イゼリア嬢の目がすがめられる。
ああっ! イケメンどもににこやかに対応している時とは、打って変わったクールさも素敵ですっ!
心の中でイゼリア嬢の素晴らしさに万歳三唱しながら、こくこくこくっ! と何度も頷く。
「そうです! 今日はよく晴れて陽射しも強いですから! ただでさえ暑いのに、強い陽射しまで浴びては、夏にお強くないイゼリア嬢にはお辛いのではないかと……。もし、イゼリア嬢に何かあったら、心配で胸が潰れてしまいます! ですから……っ。しばらく、日陰でゆっくり過ごされてはいかがですか……?」
イゼリア嬢のアイスブルーの瞳を見つめ、必死に訴えかける。
どうかイゼリア嬢! イケメンどもなんか放っておいて、俺と二人、きゃっきゃうふふとおしゃべりして過ごしましょう!
無理しないように休んでいると言えば、イケメンどもも寄ってこないだろうし、一石二鳥!
「イゼリア嬢。ハルシエル嬢が勧める通り、少し暑さに身体を慣らしてから海に入ってはどうだい?」
「リオンハルト様がそうおっしゃるのでしたら……」
リオンハルトの言葉に、イゼリア嬢がしぶしぶといった様子で頷く。
おお……っ! リオンハルト、ナイス――っ! 今日一番いいこと言った! 今だけは惜しみなく褒めたたえてやるっ!
そうです、イゼリア嬢! イケメンどもなんざ放っていて、俺と過ごしましょう!
「ハルシエル嬢も、無理をしては駄目だよ?」
俺にもやんわりと告げたリオンハルトが、姉貴やイケメンどもと一緒に、ビーチパラソルから出ていく。
姉貴まで出て行ったということは……っ!
ほんとにイゼリア嬢と二人っきり!
優雅な仕草でビーチベッドに腰かけたイゼリア嬢を、ちらりと横目でうかがう。
パレオからすんなりと伸びる白いおみ足を斜めにそろえて座る姿は、一幅の絵のようだ。
う、麗しい……っ!
空気までもがあざやかに色づいてきらめき、かぐわしい香りが漂ってくる気がする。
ああっ! 神様仏様女神様っ! 俺をこの世界へ転生させてくださってありがとうございます!
今、初めて、心からの感謝を捧げます……っ!
眼福のあまり、気が遠くなりそうだ……っ! 天にも昇る気持ちというのは、まさに今のことを言うんだろう……。
って、しっかりしろ俺!
たぶん今こそ、旅行中で最大のチャンス!
イゼリア嬢と少しでもお近づきになれるように、頭をフル回転しろ! 会話をつなげ!
「あ、あのっ、イゼリア嬢!」
緊張にからからになっている喉を動かし、声を振り絞ると、まぶしげに目を細めて波打ち際を見つめていたイゼリア嬢が、俺を振り向いた。
お、お美しい……っ!
イケメンどもが相手の時なんて比じゃないくらい、心臓がばくばく高鳴る。
冷ややかなアイスブルーの瞳に、俺の姿が映っているんだと思うだけで、幸せのあまり気が遠くなりそうだ。
「なんですの?」
女神もかくやという優美な姿に見惚れて、言葉も出てこない俺に、イゼリア嬢がいぶかしげにアイスブルーの瞳をすがめる。
ハッと我に返った俺は、頭の中で考えていた言葉をあわてて引っ張り出した。
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