乙女の熾烈な闘いが始まる!? マリアンヌ祭編
13 悪役令嬢がマジ女神っ!?
「はい?」
放課後。校内放送で生徒会室に呼び出された俺は、執務机の向こうに腰かけたリオンハルトが告げた内容に、間抜けな声を上げた。
「な、なぜ私も『マリアンヌ祭』に出ないといけないんですか!?」
俺の隣では、並んで立つイゼリア嬢が不満そうな顔をしている。
ああ、イゼリア嬢は今日も可愛いなぁ……。
って、現実逃避をしている場合じゃなくて!
マリアンヌ祭というのは、毎年五月一日に行われる聖エトワール学園の伝統行事だ。
春の訪れを祝うメイデイを起源としているらしいんだが……。
マリアンヌ祭では、女子生徒を対象に、祭の主役である『春の乙女』を決めるコンテストが行われる。
もちろん、ゲーム内ではハルシエルが立候補し、イゼリア嬢としのぎを削るイベントだ。
が、俺はもちろん立候補する気なんかない。
だというのに――。
「『春の乙女』コンテストは、立候補制だったはずです! なのに、どうして立候補していない私が出場しないといけないんですか!?」
俺は非難を込めて、俺にコンテストに出場するよう告げたリオンハルトと、その後ろに控えるディオスとヴェリアスを睨みつける。
マリアンヌ祭のコンテストにだけは、出るわけにはいかない。
なぜなら――コンテストはそのまま、生徒会役員の選挙も兼ねているからだ。生徒会役員たるもの、人望が必要というわけらしい。
もちろん、コンテストの内容も、単なる美人コンテストではなく、詩を吟じたり、立ち居振る舞いの審査があったり、ダンスをしたり……と、生徒達の上に立つ淑女としてふさわしいかどうかを見極める内容になっている。
ちなみに、男子の選挙も『春の乙女』コンテストの陰で地味に行われる予定だ。
……当選するのはもちろんクレイユとエキューの二人だと『キラ☆恋』をプレイ済の俺はすでに知っているが。
つまり、だ。
コンテストに出場し、うっかり入賞でもしようものなら、リオンハルト達、攻略対象キャラが勢ぞろいの生徒会へ加入一直線というわけだ。
誰がそんな地雷原へ飛び込むかっ!
イケメンどもに迫られる危険しかない生徒会になんて、絶対に入らねぇ!
コンテストの出場者は立候補制だから、立候補さえしなけりゃ、生徒会に入ることもなく、色んなイベントだのフラグだのをぱぱーっと回避できると思ってたのに……!
生徒会長直々に出場を依頼されるなんて、なんの陰謀だ、これはっ!
俺に何としても正ヒロイン役をさせたい不可視の力でも働いてんのか!?
「わたくしも納得できませんわ!」
挑むような声を上げたのは、俺と並んで立つイゼリア嬢だ。
呼び出されたのはハルシエルだけだったのだが、生徒会室前まで来ると、なぜかイゼリア嬢が待ち構えていた。
一瞬、(えっ!? もしかして俺に会いに……!?)なんて妄想があふれ出し、とぅんく、と心臓が高鳴ったが、もちろんそんな都合のいい展開であるはずがなく。
「このタイミングでオルレーヌさんが呼び出されたということは、内容はマリアンヌ祭についてでございましょう? でしたら、コンテスト出場者の一人として、わたくしも話をうかがう権利があるはずですわ!」
と主張し、それが認められて、今、俺と並んでリオンハルト達の前に立っているのだ。
だよなー。イゼリア嬢にしてみれば、ライバルが増えるも同然だもんなー。
『キラ☆恋』でも、最終的にハルシエルとイゼリア嬢の一騎打ちになってたし。
いくつものミニゲームをクリアして、最終的にはハルシエルがトップに躍り出るんだけど。
そういやあのミニゲーム、かなり反射神経が必要で、クリアできない姉貴がブチ切れて、結局、全ルート分、俺がクリアする羽目になったんだよな~。
思えばあれが、『キラ☆恋』との初めての出逢いだった……。懐かしい……。
ミニゲームのイゼリア嬢のちょこまか動く感じも超可愛かったんだよな!
ってゆーか、イゼリア嬢。俺はコンテストに出場する気はないから、そんなキツイ目で睨まないで……。
あ、でも、ちょっとドキドキするかも、この目……。
イゼリア嬢がアイスブルーの瞳を怒りにきらめかせて、リオンハルトに抗議する。
「わたくしも他のコンテスト参加者もみな、生徒会役員を目指して、己の意志で立候補しております。オルレーヌさんがわたくしに勝つことなど、万が一にもあり得ませんが、コンテストが生徒会役員にふさわしい人物の選出のためというのでしたら、立候補すらする気のない、やる気のない方に参加されては、他の方にも示しがつきませんでしょう!? はっきり言って、迷惑ですわ!」
よく言ってくれた、イゼリア嬢っ!
そうだよなっ、俺が参加する必要なんてないよな!
孤立無援の中、俺の味方をしてくれるイゼリア嬢が、マジで女神に見えてきた……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます