39.5話 俺と不思議な喫茶店の話
きっとこれは夢なのだろう、俺は今夢を見ているに違いない
去年の八月のある日、俺は用もなく街を歩いていた。
何もかもに絶望し、何事に対しても無関心になり、心が無になっていた。
だから、俺は、いつもとは違う道を通り、いつもとは違う方向に向かって歩いている。
そして、ある喫茶店の前で立ち止まった。
「喫茶店 月日の薫り?なんだこの店」
不思議に思ったが、俺は入ることにした。
理由は簡単だ、特に行く当てもなく、たださまよっていた俺にとっては、休憩するには喫茶店は、うってつけだ。
俺は扉を開け、店内に入った。
カランコロンカラン
客の入店音で、俺は、意識を覚醒させた。
「いらっしゃい、お好きなところにどうぞ」
そういうと、客は、カウンター席(俺の前)に座った。
「じゃ、じゃあ、この店の、オリジナルブレンドで……」
「……っふ、ふは、ふはははは」
思わず俺は笑ってしまった。
「な、なんで笑うんですかっ!?」
そんなの決まってる
なぜなら、
「お客さん、この店には、オリジナルブレンドはメニューないんだよ」
「何でですか!?」
「なぜか、そんなの決まってるだろ?裏メニューだからだ」
「俺、この店初来店ですよ?」
「俺にとっても初オーダーだ。」
「それマジですか?」
「ああ、大マジだ」
「えぇ……」
「まあ、初めて出すから感想とか、君について少し聞かせてもらおうか」
「……話したくないって言ったらどうしますか?」
「それは絶対にない、君は必ず話すよ」
「どうしてですか?」
「俺は、君の悩みを解決させる方法を知ってるからだ」
「それってどういうっ……」
「お待ちどうさん、オリジナルブレンドです」
そこで会話は、一時的に切られた。
「とりあえず飲んでから、話を聞こうじゃないか。」
「は、はあ……」
俺はコーヒーを一口だけ、啜るようにして飲んだ。
「……美味い」
「そりゃあ、どうも」
「で、なんで俺が絶対に話すって思ったんですか?」
「はあ、仕方ないか。いいか、これは口外禁止だぞ?」
「わ、わかりました……」
「実は俺、過去にもドルすことができるんだ」
「は?」
「だから、俺は、過去をやり直すことができるんだよっ‼」
「なるほど、新手の詐欺ですね?」
「違うわっ‼」
「詐欺師はみんなそう言うんですよ、そして俺から何もかも奪ったっ‼あなたも、その一人ですか?」
「いや、俺は詐欺師じゃない。だから、何があったか話せよ」
「あなたは信用できませんので、いやです。」
「本当に、その決断で後悔はないんだな?」
「後悔なんて、もうすることはないですよ。」
「せっかく、先輩を助けるチャンスをドブに捨てるってわけか……」
俺は、数週間前の新聞を取り出し読み始めた。
「あんた何を知ってるんだよっ‼」
「うおっ⁉いきなり胸倉を掴むなんて、結構臨戦態勢なんだね」
「いいからはなせよ、なんであんたが雪乃のこと知ってるんだよっ‼」
「俺はニュースを知ってるだけで、それ以上は知らない」
「なんだよそれ、じゃあ、なんで俺が雪乃の後輩だってわかったんだよ」
「口調、態度、そして極めつけは、その表情だ。何かを失い、絶望に満ちた表情、俺は現場でそんな表情しか見てこなかった。だから今、お前さんが何に悩んでいるか、そして、どうしたいのかがわかる」
「……」
「素直になれよ、もうお前もが気じゃねぇんだからよ」
「……ます」
「もっとちゃんと聞こえるように言えよ、ほらっ‼」
「全部話すから、助けてください、お願いしますっ‼」
「じゃあ、座れよ。話はそれからだ。」
俺は、席に座りなおした。
「すみません、いきなり掴みかかってしまって……」
「いや、それに関しては問題ない、気にしてないといえば嘘になるがな」
「……」
「で、お前さんの悩みを聞こうか」
「わかりました、俺には、結婚を誓った彼女がいたんです」
「ぷはっ‼」
「なんで笑うんですか‼」
「その年で結婚とか、早すぎるだろ」
「何がおかしいんですか‼」
「いや、ほんとに、お前ってアホだな。まだ若いんだし、もっと楽しめばいいのに」
「そういう、マスターはどうなんだよ、一人や二人くらいいるだろ?」
「いや、俺にはもういない」
そういいながら、マスターは首にかけていたペンダントを見ながら言った。
「マスターも、そうだったんですね」
「いや、俺のことはいいから、お前のことを教えろよ」
「わ、わかりました……」
その後、俺は、雪乃との馴れ初めや、あの日、何があったのかを詳しく、俺の目線から話した。
「……なるほどな、で、救えるのなら、お前さんは、彼女を救いたいということか」
「できますか?」
「ああ、できないことはないが、お前さんの記憶も、すべて改竄することになる、それでもいいのか?」
「ああ、それで、雪乃が救われるのなら」
「じゃあ、戻るぞ」
「どうやって」
「まずは、そのコーヒーを飲み干せ」
「わかった」
俺は言われるがまま、コーヒーを飲み干した。
「これでいいのか?」
「じゃあ、目を閉じて、当時の情景を思い出せ」
「は、はい……」
思い出す?忘れられるわけないだろ
「見えたか?」
「はい、見えました」
「じゃあ、カウント3で行くぞー、3,2,1」
そして、マスターの指弾きが、店に響き、俺は過去に戻った。
目を開けると、そこには、血まみれで倒れた吹雪さんと母さんがいた。
「な、なんで……」
「死ねっ、冴河ぁ‼」
「裕太っ‼」
あっ、ここが分岐点に……
そのまま時間は過ぎ去り、やはり、雪乃の右胸にナイフは刺さってしまった……
やはり、俺には過去を変えるなんて無理だったんだ。
もういい、もういいから、早くこんな地獄終わってくれよ。
なんで、なんで
なんで、なんで、なんで
なんで、なんで、なんで、なんで
なんで俺だけがこんなつらい目に合わなきゃいけないんだよ……
「チっ、運のいいやつめ、まあ、ナイフはもう一本ある……」
「警察だっ‼動くなっ‼」
「クソっ、ここまでか……、なんて。言うとでも思ったかぁぁぁぁぁ‼」
「取り押さえろっ‼」
その後、坂下先輩は逮捕され、俺は、雪乃を抱きしめ、その場を動くことができなかったが、雪乃とともに病院に緊急搬送された。
そして、俺は目を覚ました。
意識が覚醒していく中で、俺は、去年の夏の日の夢を見たことに気が付いた。
だが、夢の内容を思い出すことができない。
だが、そんな些細なことよりも、俺は学校に行く準備をしている。
今日から新学期だ。
あの騒がしい生徒会や、俺の友達や元カノたちと過ごす、最後の一年の始まりなのだから。
「さて、そろそろ出ないと、遅刻だなっ」
こうして俺は、新たな一日を始めた。
______________________________________
(あとがき)
皆さんお久しぶりです、汐風波沙です。
最近は、就職して、新社会人になったばかりで、更新する暇がなく、ゴールデンウィークである、本日、ようやく久しぶりに更新することができました。
さて、今回は、気が付いた方も多いと思いますが、自分の執筆している過去かえる喫茶店https://kakuyomu.jp/works/16816410413914154264/episodes/16816410413914183789
とのコラボ兼本編となっております。
なぜ、この話を入れたかというと、今後の展開に期待していただくために、秘密とさせていただきます。
さて、皆さんは、このご時世どのように過ごしていますか?
もしも、暇を持て余しているのでしたら、よかったら、自分の作品のフォロー、応援、レビューをいただけると、今後のモチベーションになるので、よかったらお願いします。
最後になりましたが、今後とも、自分の作品をよろしくお願いします。
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