喫茶店 月日の薫り〜過去かえる喫茶店〜

汐風 波沙

第一章 開店

プロローグ

皆さんは知っているだろうか。

人は後悔や挫折をした時、その前の時間に戻って、別の選択肢を選び、成功する法の道を選び、自分の都合がいい方ばかりを選びたくなる、卑しさと欲深さがあることを。

俺はそんなどうしょうもない悩みを解決するために、そして、俺の目的を叶え、もう一度あの人と会うためにこの喫茶店を開店することを決意した。

この物語は、簡単に言うと、俺の自己満足と誰かの悩みを解決したいと考えるやさしさと、少しのサスペンスを加えたブレンドコーヒーのような物語である。





本当は何もないけどな。

喫茶店は俺がしたかっただけであって、本来なら探偵や、なんでも屋をやっている方があっているのだろう。

それでも喫茶店を選んだのは、俺の意志であり、これが運命なのだろう。

遅くなったが、俺の名前は過波かなみ 去紅舞さくま、この喫茶店『月日の薫り』のマスターである。

 カランコロンカラン

俺が開店作業をしていると、店の扉がひらく音がした。

俺は入り口を見て、どんなヤツが入ってきたのかを確認した。

それを確認し、俺は作業に戻った。

その後、その生徒は俺のいるカウンター席の一角に座った。

さてと、今日も一日頑張りますか〜!!











「すみません、注文いいですか?」


少し身長の高めの青少年は、メニューなど見ずに注文をしようとしてきた。


「はい、ご注文をお伺いします。」

「オリジナルブレンドを一つ」


生意気にブラックでの身軽な……。


「……はい、少々お待ちを」


俺は慣れた手付きでコーヒーを淹れ始めた。

この喫茶店では、オリジナルブレンドというメニューは、存在しない。

つまり、オリジナルブレンドはなのだ。

俺は、自分で調合している豆を小さめの片手鍋に1人分入れる。

軽く鍋を振りながら豆を煎ていく。

蓋をして、蒸しながらゆっくり丁寧に火を煎れていく。

5分ほどたち、火を止め、豆をコーヒーミルの中に入れガリガリと焙煎し、カップにフィルターを乗せた。数分間、ガリガリと音を立てながら挽くごとに香りが店内に漂い始めた。

俺は、挽き終わった豆をフィルターの上に入れ、沸騰後少し経った80℃くらいのお湯を注ぐ。

ゆっくり、焦らず蒸らしながら確実に入れていく。

何度もお湯を注ぎ、蒸らしながらコーヒーをドリップする。

そうすることにより、薫りよく入れることができる。

そして、淹れ終わるころには、店内をコーヒーの薫りが優しく包み込むように広がる。

俺は、この香りが好きだ、とても癒される。


「お待たせいたしました。オリジナルブレンドになります」


俺は、青少年にコーヒーを出す。


「ありがとうございます……」


彼は受け取ると、一口、啜る様にして飲み


「美味しいです」


と言いながら俺の方を向いた。


「そりゃあ、どうも」

「はい、このコーヒーは、職人の技

いうよりも、マスターの過去のような味がします。」

「俺の過去なんて知らないだろ?」

「それもそうですね……」


彼は少し笑うと、また一口飲み、


「では、早速本題に入ってもよろしいですか?」


と切り出した。


「ああ、構わない」


俺は、カウンターのすぐそばに置いている椅子に座った。

そして、俺お決まりのセリフ、


「それで、君は過去にどんな忘れ物をしたのかな。」


俺は言い放った。


「僕が過去に忘れてきたものは、思いを伝えることです。」


面白い回答をするな、


「詳しくお聞きしても?」


俺は問いかけた。


「はい。先週、このあたりで事故が起きたのは知っていますか?」

「ああ、もちろん。女子高生がなくなった事故だろ。」

「その時なくなった女子高生は、僕の片思いをしていた人です。」

「なるほど……」


色恋の話はあまり時ではないのだが、まあいいだろう。


「でも、その日は思いを伝えようと別れ際に引き止めました。」

「……」

「そして、僕がぐずぐずしてしまって、信号が点滅し始めて、待ちきれなかった彼女は、信号を渡ろうとして……」

「それで、事故にあったというわけか」


予想よりも、展開がベタすぎるな。

こんなの、諦めて次の恋を探すか、一生一人で過ごせば済む話だろ……

でも、俺への依頼は、きっとこうなるだろう。


「で、あなたの過去への忘れ物は彼女の命というわけですね」

「いえ、少し違います」


は?

待て待て、違うのかよ!?


「少し違うといいますと?」

「僕の忘れ物は、彼女に気持ちを伝えられなかったことです」


何この男、彼女を救うんじゃなくて思いを伝えるだけでいいのか?


「なるほど、今は無いものを悔やんでも、仕方ないという精神ですか。そういう考え方、俺は嫌いじゃないよ」


この子、面白いなっ‼


「ダメですか?」

「いいでしょう。では、あなたからまずは、報酬をいただきましょうか」


この子がどんな道を選ぶのか、俺は少し楽しみになってしまっていた。


「えっ⁉ちょっと待ってください、僕、お金とか持ってないですよ」

「いえいえ、お金などいりませんよ。でも、オリジナルブレンドの料金は払ってください亅


商品の料金を取るのは、店の人間の権利だ。


「あ、そうなんですね、あと、コーヒーの150円です」

なんで金額知ってるんだ?まあいいや

「どうも。では、報酬をいただきます。今回の過去への移動は、一週間ですから、寿命一ヶ月でいいでしょう」

「えっ!?寿命ですか……」


最初にこれを言うと、皆驚くんだよな~。

世の中金よりも大事なものといえば、命くらいしかないだろう……


「はい、寿命です。どうせいつかは死ぬんですし、過去に干渉するのですから、一ヶ月じゃ安いくらいですよ」


相場なんてないけど、騙そうと思えばいくらでも騙せるんだよ


「そう、ですか……、わかりました、寿命一ヶ月で」

「では、交渉成立ですね。では、まずそのコーヒーをすべて飲み干してください」

「はい。んっんっ、っは〜……、これでいいんですか?」

「はい。では、目を閉じてください」

「はい……」


心を無にし、相手に合わせる。相手の心情、当時の風景を鮮明に思い浮かべるんだ……


「その次に、その日の情景を思い浮かべてください。」

「……」


見えた、これで行けるっ‼


「では、行きます」


バチンッ!!

俺は、指を鳴らし、目を開いた。

そこには、誰も居らず、ただ、飲み終わったコーヒーカップだけが、そこにあった。


「彼ならきっと上手くやるだろう。」


そう呟いた後で、俺はコーヒーを入れ、一週間前の新聞を読んでいた。

そこには、事故で女子高生が死んだ記事などあらず、ただ、いつも変わらない日常だけが書かれていた。




一週間前、事故直前

僕が目を開けるとそこには彼女がいた。

何故だろう、嬉しいのに切なさと懐かしさがある。

そんなことどうでもいいから、気持ちをちゃんと伝えないと!!


「どうしたの?そろそろ信号変わっちゃうんだけど……」


信号はまだ青だ、でも、もうすぐ点滅し始めるだろう。

でも、ここでやめるなんて嫌なんだっ‼

なぜだか分からなかったが、僕は直感的に思った。


「あ、えっと、その……」


なんでこういう時に言いたい二文字が出てこないんだよ、僕の意気地なし……


「はっきりしてよ‼何もないならもう行くね、また明……」


信号は青で点滅していた。


「ちょっ‼あっ、ぅあ……」


だめだ、行ってしまう。どうにかして止めなきゃ!!

この気持ちを言葉にしないと!!

僕は、喉元で止まっていた言葉を叫んだ。


「僕は君が好きだ!!」

「えッ!?」


いえた、言えたよ、僕‼

このまま伝えきる‼


「僕はずっと君が好きだった。だからっ、その気持ちを伝えたかったんだ!!だから、僕と付き合ってくださいっ!!」


返事がない……。

やっぱり、無理なのか……。


「わ、私も、君のことが好きだったの‼でも、自分から言うのが嫌で君から言ってくれるのを待っていたの‼だから、よろしくお願いしますっ!!」

「え……、や、やったー!!」


その頃には信号は赤になっており、彼女はその信号を一人で渡ることはなかった。






一週間後、喫茶店

俺は表に看板を出すために、店の外に出た。

ちょうど仲の良さそうなカップルが、楽しそうに会話をしていた。

その幸せが、長く続きますように。

そう願ったあとで、


「さて、今日も一日頑張りますか〜!!」


俺は気合を入れ、今日も喫茶店を開店したのであった。









 _________________

(あとがき)

 皆さんどうも、汐風 波沙です。

 今回は、新作を書かせていただきました。

 この話は、ずっと頭の中で妄想していた物語をベースに作りました。

 実は、自分がコーヒーが好きで、喫茶店を舞台にしたものを書きたいと思っていたので、ようやく実現できた作品です。

 よかったら、作品のフォロー、レビュー、応援をいただけると、幸いです。

 今後とも、自分の書いている作品、そして、この作品をよろしくお願いします!!

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