第6話 遭遇

 じわじわと暑さに、夏の定番である麦茶が入ったグラスは水滴だらけで、底は水溜りができている。昼間の時間帯は、図書館で過ごすことに決めていたのだが、今日は定休日だった為に嫌でもマンションに居る事になる。


「暇すぎる・・・」


 毎日がお化け屋敷と化している場所で一人ぼっちなのは心細い。

 ぼんやり面白みのないテレビ番組を見続けるのも飽きてきた、マンションに併設されている公園には相変わらず子供の姿は見ない。

 暑さのせいなのか、子供はテレビゲームで部屋に閉じこもっているだけなのか、入居者も少ないため人の気配も昼間は無い等しい。平日は休日でもない限り大人は会社で、やはりマンションに居るのは自分一人なのではないだろうか。


「怖い、それ怖い!」


 自分で自分にツッコミを入れると、部屋の中に閉じこもっているから悪いのだと、近場のコンビニに行こうと気持ちを切り替えた。勢い良く玄関扉を開けた途端、何かぶつけたような鈍い音がした。


「――っえ!?」


 何事かと急いで玄関から出ると、額の辺りを抑えてうずくまる男の子と、下を向いて顔が見えない女の子が立っていた。


「えっえぇ!?ごめん、大丈夫?」


 何で扉にぶつかったのかとか、子供はいないはずのマンションにいるこの二人は一体何をしていたのかとか、その事はすっかり頭から抜け落ちていて、急いでうずくまっている男の子に近づく。


「大丈夫?痛いところは-・・・!?」


 子どもの顔を見ようと下からのぞき込んで後悔した。

 目がない、そこにあるのは空洞だ。

 暗くて底が見えない、真っ黒な虚ろがある。

 顔に表情があるのかすら分からない、その二人分の空洞が自分を覗いているのだ。恐ろしさに声すら出せず、金縛りに遭ったように動けもしない。

 その後の記憶はぷっつりと途切れ、目の前が真っ暗になった。 

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住人 柏木 蒼 @kasiwagiaoi

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