ベイ、

１：ベイへようこそ

１-１：合言葉は「ロス・オブ・パラダイス」

プロローグ

　そこは何というか、無機質な空間と表現するのがやはり適切なのだろう。

　奴木原（やつきばら）高等学校の正門を出るとすぐ向かいに存在する奴木（やっき）神社の最奥でひっそりと佇んでいる。

　その存在を認知している人数は割に少なめで、今日（こんにち）も僕を含める葉月（はずき）尊（みこと）と廻間（かざま）雪（せつ）のたった３人しか居ない。

　僕は座高が低く座るのには少し辛い椅子に腰掛け勉強し、

　葉月はハンモックに揺られながらうたた寝し、

　そして廻間は古びて埃まみれのブラウン管テレビを鑑賞している。

　この僻地のような場所を僕らは『ベイ』と、呼ぶ。