最終話 さらば平和、ようこそ世界大戦
「―――いたいた。」
オレは高所の建物に立っていたベルゼブブを見つけた。
いよいよ待望の交渉タイムと参りますか!
「よぉCEO様!久しぶりだな!」
「―――ドレイクか、久しいな。」
「話しでもしようぜ!せっかくだから空飛んでな!」
「お前なりの気遣いというわけか。――――いいだろう。」
そうして、オレとベルゼブブは上空に浮かび上がって話しをした。
「さて、お前はあの船から、一人でここまで来たのか?」
「とぼけやがって、お前の差し金のくせによく言うぜ。」
「あの者達は拙の友人であって、決して拙がけしかけたのではない。あくまで迎えに来てくれないかと拙から頼み込んだのだ。」
「なんであんたが直々に頼み込んだ?配下の妖精や悪魔だっているだろうに、わざわざあいつらに頼むなんてな?」
「―――今の我等にとって、極めて目の上の瘤である存在がいたからだ。」
「目の上の瘤だぁ?そいつは一体どんな感じなんだ?」
「―――――我等と同じ【
「――――あいつらか………」
「ほぉ?お前は奴らを知ってるのか?」
「お前がけしかけた【御使い】の一人――――ラーズってじじいがこう言ってた。『木星や海王星に回収されるとまずかった』『海王星は【宇宙意思】に接続した』とな。」
「―――――――――――。」
そう聞いたベルゼブブは、静かにほくそ笑む。
よっぽど海王星が目障りだったらしいな。
「海王星ってのは、そんなにお前にとっては目障りか?」
「―――目障りというレベルではないな、我等の理想の為の障害に過ぎない。」
「聞かせてくれ、お前が脅威に思う【海王星】のサタンを。」
ベルゼブブは静かに語りだし、オレに海王星が如何に脅威であるかを知らせた。
「お前を含む五帝、【火星・土星・木星・金星・水星】は、それぞれに対応する惑星からマナが送られてくる。例え惑星その物がなくなったとしても、対応する五帝がこの世界に存在する限り、まさしく無限の力が身体中に流れ込むことだろう。」
「ほん。」
などと軽く相槌を打ったが、実は初耳だ。
オレが五帝っていう存在であり、それが無限のマナを惑星から送られてくるっていうインチキ臭い能力まで備わっているらしい。
「だがそれとは別に、【三皇】と呼ばれる存在は遥かに違う。奴らがこの世界に存在する限り、対応する惑星から無限のマナが身体中に流れ込むことは変わりなくがな。」
「何が違うってんだ?」
「お前たち五帝が惑星の自由意思であるならば、三皇と呼ばれる【天王星・海王星・冥王星】は、この宇宙の意識その物だ。」
また宇宙意識、宇宙の意識か…
三皇ってのは、どうも宇宙レベルの次元にいるらしい。
いや、そもそもサタンが宇宙規模の存在か。
「天王星はこの世界の調和を司る存在。世界が乱れるその時、天王星は剣を抜き全てを焼き払うだろう。」
「天王星ってのは、表に出ることが珍しい奴なのか?」
「その通りだ、この世界が乱れない限りな。」
「じゃあ冥王星ってのは?」
「この世界に存在している。それも先程会ったばかりだ。」
「冥王星とさっき会っただと?」
「ああいや、そう言った意味ではない。我等サタンは時間の流れというのが曖昧だからな。」
「単にボケてるだけじゃねぇのか?」
「――――話しを戻そう。」
自然にスルーしやがった!!
「冥王星はこの世界の【死】を司る存在だ。死を司ることには拙もそれなりの自信があるのだが、奴は別格だ。」
今さりげなく死を司るって言ったよな。
これは突っ込んでいいやつなのか?
「冥王星は万象全てに【死】を与える力を持つ。例え不老不死の存在でも、死なない存在も、奴の前では等しく【死】を与えられる。」
どんな奴でも死を与える力か…
死なない奴も殺せるようになるってのは、存外ぶっ壊れな能力ではあるな。
「それに冥王星は死だけでなく、モノに命を与えることも、疫病を頒布することも出来る。なんなら催眠も洗脳も、自身の存在感すら消すことも容易い。」
それってチートじゃねぇか?
なんとなく思ってたけど、それってチートじゃねぇか?
「一言でいうなら、サタンの中では一番相手にしたくない存在だな。」
「お前にそう言わせるなんて、冥王星ってのはよっぽどの奴なんだろうなぁ。」
「だって奴はさっきまで何考えてるか分からなかったし、分かったとしてもそれはそれで動機が意味不明だし。正直拙はああいうのは手に余る。お前のような単純な奴はすぐ対策が出来て楽が出来るからな。」
冥王星のくだりになってからこいつ急にフランクになったな。
例えるなら普段は傲慢不遜なTHE独裁者な性格なのが、急に気まぐれでめんどくさがりなダメ人間な性格になったと言ったところか。
いやまぁそもそも人間じゃねぇしってツッコミが正直予想出来るレベルの性格にはなった。
――――めんどくせぇ!!正直結構めんどくせぇ!!
「あの時のお前を抑えるのは大変だったんだぞぉ?拙が出なければ被害はもっと広がってたし。」
「――――そういやぁ、あれがオレ達の出会いだったもんな。」
「うむ。―――――5年前、エトナ火山で竜を発見したと聞いた時は我が耳を疑ったぞ。」
そう。オレがこういう状況になったのも、こうしてベルゼブブと話しているのも、全部5年前の出来事がきっかけだった。
「―――――ベルゼブブ様、本当に出られるのですか?」
「うむ、真偽を確かめるためには、拙が自ら出向かねばならぬからな。」
「ですが報告によると、エトナ火山付近で確認された竜らしき生物はただならぬ熱気を発生させるとのこと。現場では耐熱スーツの着用や遮熱シールドの設置を行うなどして接近が可能な状況ですが、依然として周辺地域での警戒レベルは最大、住民は全てフェリーでの退避が完了しており、近いうちにシチリア島全域の進入禁止の報せがイタリア全土に発令されるでしょう。」
「状況はまさに緊縛された一瞬ということか。」
「はい、念の為にベルゼブブ様にも耐熱スーツを着用していただき、現場に向かってください。」
当時の拙達は、度々課題として『今後のノルマに必要な熱量エネルギー不足』を評議しており、結論から言えば『従来のエネルギー供給ではノルマを満たせることは困難であり、環境破壊に繋がる危険性を孕む事となる』という事実に基づき可決された。
ただでさえ製造工場の財政がカツカツであるのに、人件費維持費その他を含めれば、驚愕の500億ユーロ。
日本円で換算するなら約7兆前後であり、国家予算もびっくりな歳出であり、間違いなく3年以内で倒産するのは目に見えていた。
そんなさなか、膨大な熱量を持つ竜がエトナ火山に現れたとの情報は、まさに現状の打破と言っても過言ではなかった。
この命懸けの投資に、プライベートジェットで1時間ほど。
まさに、運命のひと時だった。
「………」
―――――それはまさに、圧巻だった。
大きな
ただその場にいるだけで、圧倒的な存在感を放つ。
拙は実感した。
自分以外のサタンと出くわした時は、この様な心境となるのかと。
圧倒的な焔は、拙をすぐに気づかせてくれた。
――――――この者こそが、
この者こそが、我等の救世主になるかもしれないと。
「――――なるべく傷をつけずに竜を拘束せよ!!」
「!?」「ベルゼブブ様、本気ですか!?」
「これは社運を掛けたものだ!死力を尽くせ!!」
拙の号令によって、仲間達は無惨にも散っていった。
果たしてこれが正解だったのかというと、拙的に言えば正解だった。
あの竜が暴れ、地は燃え焼き爛れ、嘗て命だったものは辺り一面に肉塊と共に転がる。
これで人件費とかも減るし保険も入る!
――――なにより、久々に運動したかった気分だったからな、むしろ好都合だ。
「ベルゼブブ様、被害甚大!一度撤退を――――」
「――――今!ここで出る!!」
意気揚々として、拙は竜に向かっていった。
「ベルゼブブ様ァァァァァ!?!?!?」
「たぁぁぁのぉしぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
今思うと、嬉しさのあまり頭おかしくなってたんだな。
普段は絶対にやらないトルネードスラッシュとか、電撃、ソニックブーム、呪い球とか撃ちまくってたし、しまいの果てには超必殺の雷槍とか撃ってた時点でかなりハイになってたとわかるな。
「キィィィィィィィィィィィック!!!!!!!!」
「―――――それでボロボロになったオレを捕まえてエネルギー源にするとか改めて頭イカれてるなてめぇ。」
「だぁってぇ、仕方がないだろう。人間と同じ姿をした貴様を見た時はマジでビビったし、貴様が喰ったものの性質を一部得るというのが能力ではなく体質だったなんて聞いた時はさらにビビったからなぁ?」
「どうでもいいわ!!あと、オレにも恐慌の叫び《テラーロアー》っていう能力があるわ!!」
「でもあの能力って脳内物質を過剰発生させる能力だろ?それよりかはお前のエネルギーを利用する方が効率的だろう?」
「…ったく、もういい!!」
そうして、海王星の話しを聞き出そうとしたその時―――――
「――――いたぞ!ベルゼブブだ!!」「撃て!!」
突然こちらに向かってエネルギー弾が飛んできた。
「ちっ、もう見つかったか!!」「おいベルゼブブてめぇ一体なにしやがった!!」
「大したことではない、ただ冥王星の目的が
「ああ、―――――だからこそこの危機に対応すべく、
「―――――念の為聞いておく。何が始まる?」
「―――――――――間違いなく、第三次世界大戦だ。」
――――――さらば平和、ようこそ世界大戦。
こうして、訳の分からないまま、世界を巻き込む大戦争が始まる。
オレはサタンとしての選択が余儀なくされるのを、この時は思いもよらなかった。
Enemycircular(エネミーサーキュラー) Coボレッタ @koboretta
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