2 私とお友達になってください

 私とお友達になってください


「涼太くん。私とお友達になってください」と恋は言った。

 恋は笑顔でその小さな白い手を涼太に向けて差し出してくれている。

 でも、涼太は恋の美しさに見とれてしまった。


 そして、はっとなった涼太は思わず、せっかく僕と友達になってください、と言ってくれている恋のことを置いてけぼりにして、そのまま、その場所を逃げるようにして、走り去ってしまったのだった。


「あ」

 と言う恋の声が聞こえた気がした。

 

 でも、涼太は走ることをやめずにそのまま森の中に入って、そして、今歩いてきた道を戻って、自分たち間宮家の家族が泊まっているコテージまで、息を切らせて戻ってきてしまった。


「あれ? 涼太。どうかしたの?」

「涼太。カブトムシ取りに言ったんじゃないのか?」

 涼太のお母さんとお父さんが、一緒にコテージと一緒になっている、庭のキャンプ場でバーベキューの準備をしながら涼太に言った。


「……うん。虫はもういいんだ」

 なにかを隠すようにして、にっこりと笑って、涼太は言った。


 それから涼太はコテージの中に戻って、からっぽの虫かごをテーブルの上において、冷たい麦茶を飲んで、それからソファーに腰を下ろして、戦利品の綺麗な丸い白い石をポケットから取り出して、それを見て、そして、ようやく、川のところであった秋月恋のことを、考えることができるようになった。


 ……あの子。すっごく可愛かったな。

 そんなことを、涼太は思った。

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夏のお嬢様 雨世界 @amesekai

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