二人だけの時間

姫草りあ

第1話 二人だけの時間

ピアノの音が聞こえる。

美しい旋律。確かこれはショパン。

圭子はそっと、音楽室に入った。途端、ピアノの音が止まる。

「邪魔しちゃったかな?」

圭子がそう言うと、先ほどまでのピアニスト、一子は困惑した表情を浮かべた。

「貴女を待っていたの」

圭子は不意を突かれ、驚いた。

「どうして、かな?」

「貴女に聴いてほしくて弾いてたから」

そう言うと、また一子は鍵盤に指を掛けた。

そして、ピアノの演奏を始める。

曲は、ショパンのマズルカだ。

「この曲!」

「そう、貴女と始めて会った時に弾いていた曲」

一子は柔らかい笑みを浮かべた。

「今日は、一緒に帰ろうね」

圭子は嬉しそうに声を弾ませた。

二人だけの聖域。

神様、どうかこの時間が永遠に続きますように。

二人はそっと、願った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

二人だけの時間 姫草りあ @456ouka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ