第9話 ⑨

携帯が鳴った。僕はベットで寝がえりをうつ。オンにする。桐谷だった。


「錦糸町で爆発です。」


「成功ですか?」


「はい。」


「そうですか。依頼者へ連絡をお願いします。」


「はい。試作品2918はどうしますか?」


「失敗作ですよ?」


「はい。」


オフ。画面が消える。


依頼は成功した。TTKは政府に食い込み、さらに大きくなる。そして、“強力な指導者”を目指す。


兄さん。ジュリアスと兄さんは清潔な人だった。清潔な世界を望んだ。僕もそうだ。清潔な世界を望む。苦しいほど望む。


ベッドから立ち上がり、窓を開ける。夜明けの冷たい静寂が部屋に流れ込む。


「奇跡!」


僕は叫んだ。


「奇跡! 奇跡! 奇跡!」


声は静まった繁華街に響く。うずくまっていた人が顔をあげた。もうすぐゴミを漁るカラスがやって来る時間だ。


                                      了

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

 純粋 メガネ4 @akairotoumasu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ