第5話 お姉さんゲット計画③

 父さんに魔法のことがバレてしまってから1か月がたちました。母さんには少し魔法を教わっています。あの拓けてしまった裏庭は流石にご近所さんに見つかってしまったらいけないということで、半分くらいに留め、私がせっせと木を元に戻しました。と言いましても、アイテムボックスから戻すだけですので、重労働というわけではありませんでしたが。後の半分の裏庭は小さな畑と、最近は私と母さんの魔法教室の場になっています。確かに大人が木を切って片付けたと言いわけできるかどうかの微妙なラインで裏庭は残されています。最初に母さんから教わったのは水を出すことです。魔力量が多いとたくさん出せるそうです。最初に水を母さんと一緒に出した時には驚きました。ええ、水と言うものは思いの他怖いものです。洪水って怖いですね・・・。その反省を生かして次に習った火の魔法は「小さくよ小さく・・・!」と思っていたおかげか、マッチの火ほどの小さな火を出すことができました。私のお家は木に囲まれているので細心の注意が必要でした。小さく思うようにできてホッとしましたよ。

 魔法のこと以外にも面白いことを発見しました。植物が動くのです。何この不思議生物というものが食べられたりすることを知って、若干引いてしまったのは内緒です。普段お手伝いで扱っている食べ物は処理されているせいか動いていなかったんですよね。それが、私が開拓した裏庭の畑で作った野菜たちを初めて見てビックリしました。ここは農村と言っても、穀物類が多かった為か近くの農家さんたちの畑では動いていなかったのです。エミリーの記憶の中でも動かないものとして記憶があります。きっと穀物は動かないんでしょうね。野菜の畑はこの家の近くにはなかったので初めての経験でした。トマトに似た野菜や、キャベツに似た野菜、インゲンに似た野菜。そのどれもが収穫時期になるとフルフル震えて教えてくれるのです。フルフルしていたら食べごろという事なので、自分から食べてと言ってるみたいでしょ?ある意味なんて親切な野菜たちなのでしょうね。


「お姉ちゃん、キャベットがフルフルしてるよ」

「スーザンじゃあ今日はキャベットの煮物で決まりね」

「やったぁ。お姉ちゃんのキャベットの煮物大好き」


 キャベットの煮物と言うのは、簡単ポトフのことです。ポトフと言っても、コンソメなんてありませんから、ソーセージと鳥肉、根菜類などを入れて塩で軽く味付けしたものです。料理と言っていいものなのかと日本の記憶がある私には少し物足りない料理事情なんですよね。あーお味噌汁が食べたい。


「今日はエミリーが作ってくれるのかしら?」

「ええ、母さんはつわりがあるでしょう?私がやるから休んでいて」

「まぁありがとうエミリー流石お姉ちゃん」


 ふふふと母さんが撫でてくれるのに、ニヤニヤしちゃいます。だってやっぱり母さん綺麗なんだもん。理想のお姉さんに変わりはない母さんに褒めれれると俄然やる気が沸いてきます。今日は少し凝ってみようかしら?なんて思うのは母さんの為です。つわりがある母さんの為にも少しでも食欲が出る料理を作るのです。


「こんにちは」


 玄関の方に来客があったようです。そこに母さんが向かいました。私は、お料理で手が離せないので台所で留守番です。


「あらあらそうなんですか。では、よろしくお願いしますね」


 そんな母さんの声が聞こえました。間もなく母さんがまた台所に戻ってきました。


「誰だったの母さん?」

「修道院のシスターがいらしたの。綺麗な方だったわ。」

「私が知らない人?」

「ええ、遠方から赴任していらしたらしいわ。今の教会のシスター・ロザはご高齢だったからでしょうね。」

「へー」


 そんな会話をしながら私は料理の仕上げをしました。味見をしてみたところ、うん、美味しくできているようです。スーザンと父さんも呼び、夕飯を食べることにします。


「お姉ちゃんこれすっごく美味しいよ」

「そう?よかったわ」


 スーザンが喜んでくれて父さんなんか、「嫁に出すのが惜しい」と早くも私が嫁に行くことを考えているようです。肝心の母さんはふふふと聖母のような優しい笑顔を向けています。母さんも喜んでくれたのでこれでよしとしましょう。


「明日修道院に行こうかと思ってるの。エミリーとスーザンもいらっしゃい。お腹の赤ちゃんが元気に生まれるようにお祈りしてね。」


 母さんがそう言うので、明日は三人で修道院に行くことになりました。


 翌朝、私と母さんスーザンは手を繋いで修道院にやってきました。エミリーの記憶ではあまり行くことがなかったように思う修道院だったのですが、今日は特別みたいです。赤ちゃんが無事に生まれるようにお祈りするという目的の為、私の妹か弟が生まれるということなのでお祈りしないといけませんね。それに、女性にとっての出産は命がけです。母さんの無事もしっかり祈らないといけません。


「いらっしゃい。」

「こんにちはシスター・ロザ」

「いらっしゃい。エミリーもスーザンも大きくなったわね」


 優しい笑顔を向けてくれるシスター・ロザは上品なおばあちゃんといった感じでしょうか。母さんが小さいころからこの修道院を任されているシスターらしいです。赴任されてきたシスターはどこでしょう。綺麗な方だと言われてましたので一目拝見したかったのですけれど。


「新しいシスターはいらっしゃらないんですか?」

「シスター・クラリスは今お祈りをしていますよ。教会に行くと会えます。」


 赴任されてきたシスターはシスター・クラリスと言うみたいですね。シスター・ロザに連れられて教会に行きます。


「シスター・クラリス」

「はい。シスター・ロザ。あら?昨日の」

「ええ、こんにちはシスター・クラリス紹介しますね。私の娘たちのエミリーとスーザンです。」


 そう言って母さんに紹介された私たちなのですが、シスター・クラリスきたーーー!私のこの興奮どうしましょう。すっごく好みのお顔。すっごく綺麗なんですシスター・クラリス。聖母のようってこういう人のこと言いますのよね!?


「シスター・クラリス!」

「はい。どうしましたエミリー?」

「あの、結婚してください」

「え・・・?」

「いや、すみません。間違ってはいませんが、お姉さまと呼ばせて頂けませんか?」


 シスター・クラリスは困惑したような顔をしている。あ、初対面で興奮しすぎてプロポーズしてしまいました。これはいけないとお姉さまと呼ばせてくださいとまで。


「だめー!!」

「え、スーザン?」


 聞いていたスーザンが叫んで私に抱き着いてきます。これはどういうことでしょう。


「お姉ちゃんは私と結婚するんだからダメ!私のお姉ちゃんだもん」


 どうやらスーザンは私と結婚するらしいです。ってあれー?


「大丈夫ですよスーザン」

「うん?」

「私は神と結婚した身ですから、お姉ちゃんはとりません。」

「そうなの?」

「はい。私は神様一筋ですから」


 スーザンに優しく教えるシスター・クラリスに私は神様に嫉妬してしまいます。神様ってあの転生してきた時の神様のことですよね!?こんな美人なシスター・クラリスと結婚してるだなんて・・・!許せません!


「なんじゃ呼んだか?」

「は?」




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転生して綺麗なお姉さんと暮らす予定です いのかなで @inori-kanade

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