第4話 お姉さんゲット計画②
母さんの朝食を食べ終えて食器を片付けます。エミリーの記憶でもいつもしていたお手伝いです。まぁ私の過去の記憶があるせいで、今は下心満載のお手伝いなのですが。片付けたらまた旅の準備をしようと思っています。正直に言いますと、旅に出るのは2年後だと思っています。流石に12歳の今から旅に出るのは両親が反対するでしょうし、突然飛び出して母さんを悲しませたくはありませんからね。それに、私も転生したばかりで30年分の記憶はあるけれど、12歳のエミリーの記憶だけでは心配です。サバイバルなんてしたことないですし、野宿とかしないといけないのであれば、準備とかもいるでしょ?神様が授けてくれたスキルも使いこなさないうちに出発なんてできないわよね。
「何だこれは!?」
お手伝いで皿を布で拭いているころ、裏庭から父さんの大きな声が聞こえました。
ひょっとしてあれかしら?さすがにびっくりするわよね。
「エミリーこれはどうなってるんだ?お前が朝いたというここは朝にはこうなっていたのか?」
「いいえ、父さん、私がここを掃除したの」
「は?エミリー何を言っているんだい?」
「だから、アイテムボックスを使ってここの木とかを掃除したのよ」
「んー?」と言って父さんはまだ納得していないようです。別に悪い事をしているわけではないので正直に答えたつもりだったのですが、父さんはそれを信じていないみたいです。
「じゃあ、やってみましょうか?この石を見ててね」
「あ、ああ」
「はい、なくなったでしょ?」
私が持った石が消えたことで、父さんは目を見開いて驚愕しているようです。もしかして、アイテムボックスっていうのってこの世界ではないスキルだったの?確かにエミリーの記憶の中ではそういうスキルを見た覚えはなのだけど、それってエミリーがこの村から出たこともないし、村の人の中にはもしかするとそのスキルを持ってる人がいてもおかしくないと思うの。だって小説の中ではあんなにアイテムボックス使っている人多いんだもの。
「エミリーは魔法が使えるのか・・・?」
「え?」
魔法の概念があるのはエミリーの記憶でわかっていた。エミリーだって少量の水を出すことだってできてたし、小さな火を灯すことだってできていたのだから。父さんにこれを教えたわけではなかったけれど、母さんには話していたことだしね。母さんがてっきり話していたと思っていたのに、夫婦の会話がないのかしら。
「いや、だが」
何か迷っているような父さんが「ちょっと母さんに話があるから呼んできてくれ」と言われて母さんを呼びに家に帰ります。母さんに母さんは私の魔法のことを父さんに教えてなかったのかを聞くと困ったような顔をして「ついにわかっちゃったのね・・・」と小声で言うのです。隠していたことがついにバレてしまったかのような言い方。それは魔法が禁止されているとかそういうことでしょうか?そしたら、私がしたことってとってもマズくありません?
なにせ森ごと消しちゃうくらいの魔法と思われてるわよね!?それが近所にバレでもしたら大変なことじゃない??
私を家に残し、母さんは父さんの元へ行ってしまいました。とっても気鬱な顔をして。これから喧嘩が始まるかのような表情で。私とスーザンは、夫婦喧嘩が行われているであろう裏庭には来るなと言われています。やっぱり子供には夫婦喧嘩は見せてはいけないという親心なのかもしれません。スーザンと2人でお話をすることにしました。
「ねぇスーザン?お姉ちゃん魔法使えるの知ってるわよね?それってスーザンも使えるわよね?」
「私はお姉ちゃんと違って光の魔法だけだけどね。」
「そうよね。スーザンは父さんにそれ教えたことある?」
「そういえばないかも」
なんでなんだろう。別に教えていたりしてもおかしくないのに。父さんはいつも不在というわけではなく、結構まめな父親の部類に入ると思ってたのだけど。不思議に思うことがたくさんです。母さんには言っていたのに父さんには言ってないという違和感がどうもきな臭くて、もしかすると母さんなら何か知っているのかもと夫婦の会話が終わったら尋ねることにしました。
「それでだ、エミリー、スーザン」
「「はい、父さん」」
「お前たちは魔法が使えるということは母さんから聞いた。」
「はい・・・」
怒られるのかと思ってドキドキしてしまいます。父さんは母さんから聞いたとだけ告げて他に何も言おうとしません。父さんは何か迷っているようなのです。
「あのね、エミリー、スーザン。魔法が使えるという事は母さんに似ているということなの。黙っていてごめんなさい。母さんの魔力量を超えなければわからないはずだったのだけど」
「それって、もしかして母さんが私たちに父さんに言わないようにしてたってこと?」
「実はそうなの。母さんは魔法量が人より多くてね、国から引き抜かれそうになったことがあったの。それを救ってくれたのが、あなたたちの父さんだったの。もし、あなたたちが魔力量が多くてまた母さんみたいに引き抜かれそうになったりしたらと思うと心配でね。」
「けど、母さん父さんには言ってもよかったんじゃない?」
母さんが教えてくれる父さんと母さんの過去、そして私たちが魔法をかけられていた事実を肯定した母さんにさらに疑問が浮かびます。
「だってこの人すごく心配症じゃない。父さんに言うとあなたたち魔法絶対使わせてもらえないと思うのよ。母さんは魔法の楽しさとか知ってるから、使わせてあげたかったの。だから、母さんの魔力量を超えるまでは父さんには内緒にしておこうと思ったのよ。」
なるほど。よほど心配症な旦那の為と、私たち娘の為というわけだったのね。別に魔法が使えなくても不便はしない世の中ではあるのよね。生活魔法の類は便利と言われているけれど、使えない人もいることは知っているし、父さんだってちょっとした火を扱うことができるのも知ってる。それに、母さんからしてみたら、父さんに余計な心労を抱えて欲しくなかったのかもしれないのもあるわね。でも、たぶん父さんはショックだったでしょうね。
ちらりと父さんの顔を覗くとやはり眉が垂れて情けないみたいな顔になってるし。ここは私が一肌脱ぎますか。
「父さん、ごめんね。でも、父さんのそばにいれるように気をつけるから心配しないで」
にこっと笑って見せるのも忘れない。そしたら、案の定、父さんは私を抱きしめて剃り残しの髭をじょりじょり私の顔に擦り付けるのです。あー母さんならつるつるなのに・・・!
しかし、まて。私、よくよく考えてみると魔力量母さんより上ってことは国から引っ張られる可能性大じゃない??それに、私、他にも恐らくいっぱいスキル持ってそうな気がするわ。それってかなり危ない人生を送るというフラグが立ったということでは??きゃーーーー!!と叫ぶ心の声をどこに発散したらよいのでしょう。
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