第3話 知恵
ヘンテコな3人組がお茶会をしていた広場から、ボクらはしばらく歩いた。周りの景色は、さっきみたいにボクらと一緒に動いているのだろうか。一行に変わる気配がしない。
ボク「ねぇ!こんなにのんびり歩いていていいの?というか、エメラルドシティってどのくらい先にあるの?」
帽子屋「さぁ?」
キツネ「わかんない!」
ボク「え、わからないのに、進んでるの?」
ウサギ「まぁ行きたいって思ってればきっといつか着くよ!」
ボク「何それ!君たちもっと時間を上手く使いなよ!」
ウサギ「しっ!時間を使うだなんて言い方をしたら、時間が機嫌をそこねるでしょ!気をつけてよ!」
ボク「はぁ?」
帽子屋「そんな態度だからキミは時間とも名前とも仲が悪いんだろうな。」
「あ、あのー」
キツネ「ん??」
突然キツネ(絶対に人間だけど本人が頑なにそういうので、キツネと呼んであげることにした)が立ち止まった。
ウサギ「どうしたんだい?キツネ。」
キツネ「なんか、上の方から声がする・・・」
「ここです!ここ!!」
上を見上げて見ると、近くの木に何やら白い物体が引っかかっていた。あれは、シーツか・・・?
「私、木に引っかかってしまって、どうか助けて頂けないでしょうか?」
ウサギ「かわいそうに!ちょっと待っていておくれ!」
そういうとウサギは、持ち前の脚力で木を駆け上がった。
ウサギ「よいしょっと。」
トスン。
「ありがとうございます!!」
あれ?
木に引っかかっていたときはただの布切れが話しているのかと思ったけれど、何者かがシーツを被っているのか。中にはどんな生物が?
ボク「君は...」
「おっと、私に中身なんてありませんよ。」
ボク「いや、でも足見えてるし。」
気になって、シーツの端を持ち上げようとすると、凄まじい勢いで逃げられた。
帽子屋「あ!そうだ、君エメラルドシティへの行き方を知ってたりしないか?助けてやったんだ、ほんの礼だと思ってよ、案内してくれ!」
「エメラルドシティですか?知りませんね。私は何も知らないんです。布キレのようなただのオバケですからね、この中身は何も無いのです。脳味噌なんてもちろん無いですから、なーーーんにも知らないのです。」
ウサギ「何も知らないし、知ろうにも知恵を蓄える脳味噌が無いのか!かわいそうに。」
オバケ「ワタシはただヒラヒラしていることしかできない。そうして一生が終わっていく。悲しき物です。」
いや、やっぱり中に人いるよな???
キツネ「あ!!!」
キツネが突然大きな声をあげた。
キツネ「じゃあじゃあ!君も一緒にエメラルドシティへ行こうよ!」
ウサギ「おぉ!名案だ!オズならきっと君に脳味噌を与えてくれるさ!」
オバケ「脳味噌が手に入るのですか?」
帽子屋「あぁ!エメラルドシティのオズって偉大な魔法使いは、何でも願い事を叶えてくれるらしいんだ!」
オバケ「それはいい事を聞きました!私も皆さんにご一緒してもよろしいでしょうか?」
三人「「「もちろん!」」」
帽子屋「よっしゃ!行くぞ!」
ボク「え、ちょっと、待って!だから、どこにあるかわかってないのに先に進むなよー!」
呑気な3人組は、1人仲間を増やし、先程よりも軽快な足取りで先を急ぎ出した。全く、3人で収拾がついていないというのに、また騒がしくなりそうだ。
オバケっていうけど、しっかり二本足で走ってるんだよな・・・
オバケ「おーーい!アナタは来ないのですか!?」
脳味噌か...顔なんてどうでも良くなるくらいとびっきり優秀な頭があれば、キミちゃんはボクを好きになってくれるかな?
ボクもオズに優秀な脳味噌をもらおうかな・・・
ウサギ「名無しくん置いてくよー!」
ボク「キミ達はもうちょっと落ち着くってことを覚えなよね!」
キツネ「落ち着くって何ー?」
帽子屋「さぁ?新しい帽子の種類じゃね?」
キツネ「そっかー」
まぁオズに何をお願いするかは、エメラルドシティに着くまでには決めればいいか。
だって、これはきっと果てしない旅になるのだから。
ネバーランドの最果てで 鬼灯 @yuuue
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