第4話『世界情勢 8月~9月』



 八月一日 国際気象機関


『気温は十月上旬並み


 地球全体に粉塵が広がってから約二ヶ月が経ち、暦は八月となった。


 気温は世界中で平均五℃と下がっているのが観測され、例年では三十℃を超えていた地域は二十五℃以下、一番低くて二十℃を記録している地域もある。


 寒冷対策をしていない夏野菜の育成に早くも支障が出始め、ビニールハウスなど温度管理が徹底された野菜以外は育成は厳しい見込みだ。


 逆に冬を迎えているオーストラリアは例年と比べて十五℃は下がっており、粉塵が晴れるのが遅ければ赤道付近でも雪が降る可能性があると気象学者は警鐘を鳴らしている。


 それに伴い、象や牛など大型動物の凍死が心配される』



 八月六日 邦人団体ジパング


『存命日本人同士によるコミュニティが急速成長


 七月二十日に一人の日本人男性が投稿した動画が広がり、日本列島の消失に難を逃れた日本人はネット回線を使いコミュニティを急速成長させている。


 粉塵の影響により全世界で旅客機の飛行が禁止されていることと、各々生活のため安易な移動は出来ないが、インターネットは距離と時間を解消した。


 物理的な接触こそ出来なくともその意思の接触は出来るため、日本国復建の気持ちを持つ日本人同士の会話が活発化している。


 ただ、実際に日本跡地に行けるかどうかは不透明だ。


 移動手段がない。


 大西洋はレヴィアンの被害は少ないが、太平洋は依然とレヴィアン落下の影響下にあり、津波ゴミで漁船程度では船底に穴が開いて沈没の危険がある。砕氷船なら可能だが、入手できるか分からない上、日本跡地は異次元の生態系が出来ているため、国際社会が許可するかも分からない。


 仮に上陸に成功しても、巨大動物が闊歩する未開拓の地での生活は困難だ。地球にはない未知の雑菌やウイルスがある可能性もある。


 ならば存命日本人同士による結束を固めるのが優先か』



 八月九日 アメリカ


『アメリカ軍、沖縄の前線基地仮設完了


 国防総省は八日、沖縄のうるま市ホワイトビーチの基地の仮設を終えたと発表した。現時点では港と居住施設のみだが、給油施設と整備施設への着手する予定である。


 いまだレヴィアンの爪痕が色濃く残る中での沖縄の再基地化を急ぐ背景には、尖閣諸島を実効支配し、前線基地化して防空体制を整える中国への対抗がある。


 すでに尖閣諸島を中心にレーダー網が張られ、沖縄付近までの制空権は中国にある。


 西太平洋の海洋進出を防止するため、さらには暗黒地域である日本跡地の無秩序な上陸を防ぐ考えがある。


 日本跡地、レヴィニウム、地球外来の生物の遺伝子情報等々を、中国に独占させるわけにはいかないためだ。


 最悪疫病がある可能性もあり、監視を強化して上陸を防ぎたい考えだ』



 八月十日 中国


『アメリカはいつまで世界の警察を主張するつもりか


 アメリカの横暴さには憤りを隠せない。


 レヴィアンにより、落下以前の世界情勢とは大きく変わった。


 日本は消失して謎の陸地が現れ、巨大津波で環太平洋の国々は大打撃を受けた。


 一億人以上の死者を出し、氷河期が訪れ、世界経済は完全に止まってしまったのだ。


 なのにアメリカは以前と変わらず世界の警察を主張するかのような行動を見せる。


 日本跡地は我が国から目と鼻の先にある。それゆえに警戒するのは当然のことに加え、暗黒地域である日本跡地は空白地帯だ。地政学的に遠い太平洋の彼方にあるアメリカにとやかく言われる筋合いはない。


 アメリカが威光を見せた時代は終わったのだ』



 八月十二日 邦人団体ジパング


『ボランティア王、法人団体ジパングに支援を申し出!


 ネット上での活動に限られている邦人団体ジパングに、極めて有力な人物が協力を打診した。


 アメリカ国籍に帰化しているものの、日本生まれで日本育ちで二十歳でアメリカに渡米。IT会社を起業し、『世界で最も重要視される百人』に七回も選ばれた大富豪にして世界各地でボランティア活動を率先として行うボランティア王が、ネット上で全面的な協力をコメントしたのだ。


「国籍こそアメリカに帰化したが、心までアメリカ人になったわけではない。この未曾有の災害に可能な限りのボランティア活動をする傍ら、私は母国再建のため日本跡地に戻る決意のある人々への援助は惜しまない考えだ」


 ボランティア王の声明により、日本跡地への移動に可能性が出てきた』



 八月十三日 国連


『日本跡地への渡航禁止勧告を決議


 国連総会は、アメリカ、中国が反対表明をしたが、環太平洋に属する国々を始め三分の二を超す国が暗黒地域である日本跡地への渡航禁止勧告に賛成した。


 国連総会はあくまで勧告に過ぎず、法的拘束力を持たせるには安保理に掛けるしかないが、安保理では三ヶ国が反対意見を表明しているため強制力は期待できない。


 しかし、世界の三分の二が反対意見を出した以上、五大国であっても安易な否定は出来ない。


 止める手立てはないが、互いにけん制しあえば無暗な上陸はしないと願いたい』



 八月十五日 ロシア


『クレムリン、邦人団体ジパングの暗黒地域入り支援を表明


 長い間沈黙を保っていたロシア大統領府は、世界各地で生活している日本人が希望するなら、ボランティア王と協力して日本跡地に移住することを支援すると表明した。


 そして未知の生態系に対する支援として、ロシア軍が移住民の安全保障を行う。


 国連を始めアメリカや中国はジパングの上陸を反対するだろうが、ロシア政府は入れ替わった陸地であろうと日本があった地であることに変わりはない認識だ。ならば日本人が上陸することを非難する権利はどの国にもない。


 移住に関する周囲の非難は我が国が受けよう。


 この大災害だからこそいがみ合うのではなく、手を取り合い克服するのだ』



 八月十六日 アメリカ


『漁夫の利を狙う狡猾なロシア


 ようやく口を開いたかと思えば、暗黒地域に進出するために存命日本人を利用するとは狡猾以外どう表現するべきか。


 今までロシアが暗黒地域に口を出さなかったのか不審に思っていれば、世界各地に移住した日本人が決起するのを待っていたのだ。


 ロシアもまた西太平洋の進出を狙っていたが、日本列島が邪魔であった。


 北方領土を含めて千歳列島を戦時中のどさくさで実効支配しているのがいい例だ。


 さらには安全保障と称して堂々と暗黒地域に軍を常駐する案まで出している。


 日本に元々軍を派遣していたのはアメリカ軍だ。ロシア軍に常駐させることは断じて許されない』



 八月二十日 邦人団体ジパング


『ロシアの申し出を拒絶


 先日表明されたロシアのジパング支援を代表は明確な拒絶を見せた。


 拒絶の理由は日本跡地の主権は日本国籍を保有する日本人にある。例え現在は無国籍でも日本人には変わらず、日本国憲法にははっきりと日本国民に主権があると明記されている。


 ゆえに、主権に必要な確たる防衛を他国に依存はしたくない。


 ボランティア王も拒絶に同意し、防衛に必要な資金源の提供を容認している。


 代表はロシアだけでなく、アメリカ、中国を含むあらゆる国の安全保障に拒絶の意思を示した。


 さらに代表は、日本政府がない事で独断による沖縄の実効支配を行っている事にも非難の声を上げている。


 日米安全保障条約は一方的に破棄されたことで沖縄にアメリカ軍が常駐する法的根拠はない。日本跡地もだが、沖縄県は紛うことなき日本国だ。


 実効支配は直ちにやめていただきたい。


 日本の固有領土である尖閣諸島を実効支配している中国にも言わせてもらう。


 この世界中が過酷な状況にある中、日本をいじめて何が楽しい。


 我慢が出来ない幼稚な子供か』



 八月二十一日 ロシア


『クレムリン、ジパングを非難


 世界中が暗黒地域へ入域を避けるべきと訴えている中、支援すると表明したのは我が国だけだ。


 なのに拒否すると言うことは、大国の支援を受けずにすることになる。


 国を持たぬ無国籍の難民が、世界の同意なく単独ですることを良しとはしない。


 不穏分子として強制隔離施設に入れられるのが落ちた。


 邦人団体ジパングは、最初で最後のチャンスをふいにしたのだ。


 あまりに残念。


 あまりに愚かだ。


 今後、我が国が元日本人を支援することはないだろう』



 八月二十七日 NASA


『インディアナクルー帰国


 NASAは、メディカル期間を終えたこととクルーとクルーの国々からの要請で帰国する決定をした。


 空路は粉塵の影響で墜落するため、最寄りの港まで陸路で向かって船で各国に渡航する。


 唯一日本人クルーは母国がないためアメリカに残る予定だ。


 その日本人は法人団体に加入意思を示している』



 九月一日 アメリカ ネバタ州


『インディアナクルー、ネバタ州に入州


 NASA広報室によると、今朝ネバタ州にメディカル期間を終えたインディアナクルーのアメリカと日本人の六人が小型機とバスを乗り継いで入州した。


 理由は明らかにされていないが、NASA専用施設に移動するとのことだ。


 我が州にNASAの施設は無いはずだが……』



 九月二日 ロシア


『暗黒地域の分割統治を打診。


 ロシア政府は国連安保理に対し、日本跡地の安全上の問題から最寄りの国々である露中米の三ヶ国が分割で統治する案を出した。


 日本跡地にはカイジューと相当する巨大生物が生態系を持って生息している。面積は日本列島の約二倍とあるため、あらゆる意味で疲弊している中で単独による統治は出来ない。


 安全保障及び研究目的から、日本跡地を平等に三分割して三ヶ国が統治するのが妥当だ。


 無国籍である元日本人が移住を狙っているようだが、日本跡地は跡地であり、日本ではない。日本跡地を日本領として認めるわけにはいかない。


 そして万が一外来種である日本跡地を抜けて我が国や中国に上陸すれば多大な被害が見込める。


 それを阻止するためにも早急な統治が必要だ。


 遠方に位置するイギリスとフランスには理解を求めたい』



 九月三日 国連総会


『ロシアの手のひら返しには甚だあきれ返る


 邦人団体ジパングの代表は動画で総会にて演説を行った。


「自分たちの国にとって都合の悪い事が起きれば、前言撤回をすることもなく発言をしたこと自体を無かったこととして逆に非難をする。


 これを幼稚以外どう表現すればいいのか、私は言葉を持ち合わせてはいない。


 安全保障と称して他国に足を踏み入れるやさしさなど求めてはいない。


 日本跡地、尖閣諸島、沖縄は日本固有の領土だ。


 米中ロは口を挟まないで貰いたい」


 ジパング代表は日本跡地に手を出そうとする三ヶ国を非難する声明を出した。


 国連としてはいかなる国の立ち入りもしないよう勧告決議をしている。米中ロだけでなく、邦人団体ジパングもまた、慎重な行動をしてもらいたい。


 まだ、レヴィアンの災害は終わっていないのだ』



 九月五日 邦人団体ジパング


『目指すは沖縄県


 ジパング代表とボランティア王は共同声明で、まずは日本国沖縄県に帰国希望者を帰国させると発表した。


 日本跡地は未開の暗黒地域であるため、国際社会の意見と相まって安易な踏み入れは危険であるが、巨大津波を受けただけで超常現象を回避した沖縄県は完璧なる日本領だ。


 日本人が母国の地方に移動するのに妨げられる謂れは一切ない。


 同時に日本人の同意なく無許可で基地化を進める米国と、尖閣諸島を実効支配している中国に立ち退きを命じる。


 両国がしていることは明白な国際法違反だ。レヴィアン落下のどさくさで他国の領土を支配するなど盗人猛々しい。


 ジパングは両国を強く非難する』



 九月六日 国際海事機関


『米国、中国、ジパングの声明を非難


 米国と中国は、五日のジパング代表とボランティア王の共同声明に対し非難を表明した。


 米国は、元々沖縄には米軍基地があり西太平洋の秩序維持に貢献している。ジパングはあくまで団体であり政府もなければ主権を防護する軍隊もない。


 群衆でしかない状態で国家を相手に何ができる。


 守ってもらう立場で口先だけの文句は慎むべきだ。


 中国は、尖閣諸島は古来から我が国固有の領土だ。故に実効支配されていた日本から取り返しただけに過ぎない。


 我が国が求めるのは尖閣諸島のみだ。琉球諸島には手を出すつもりはなく、主権も認める。


 この非常時だからこそ現実を見据えよ。


 両国は揃ってジパングの声明を非難した』



 九月十日 海洋資源調査NPO


『適応に失敗か。巨大動物の大量死


 安全上の理由から暗黒地域から一マイル離れた位置に停泊し、ドローンによる調査を続けている海洋資源調査NPOは、巨大動物の死骸の発見が続出している報告をした。


 調査初期では死んでいる巨大動物は見られなかったが、ここ数日で巨大動物が倒れて微動もしないところを確認している。


 そして前日の調査で、動く個体が一体もいなくなったことを確認した。


 これは推測でしかないが、日本と入れ替わる形で現れた七十万平方メートルの暗黒地域に生息する動物は、地球の環境に適応していないのではないだろうか。


 フィクションでも、地球の環境に適応できずにテラフォーミングする異星人はよく目にする。まさに現実でそれが起こり、巨大動物は適応できずに死滅していっているのではないだろうか。


 ならばその逆もありえるのかもしれない。


 巨大動物にとって地球環境は適応できず、逆に人間にとって暗黒地域は適応できないかもしれない。


 さらなる研究が必須となるが、安易な立ち入りは当人だけでなく地球全土への悪影響を及ぼすかもしれない。


 我が海洋資源調査NPOは生身での上陸は絶対に避け、探索ドローンも毎回消毒作業を行って検疫対策を行っている。


 最悪、人類全員を滅ぼす伝染病が暗黒地域にはあるかもしれない。


 暗黒地域は大いなる夢を語るが、同時に計り知れない絶望も含んでいる恐れがある。


 不用意な上陸だけは避けてもらいたい。


 九月十日の時点で海洋資源調査NPOに病人は一人もいない』



 九月十一日 国際環太平洋復興機関


『アメリカ政府、ハワイを時限的な津波ゴミの処理施設にすることを決定


 レヴィアン落下から早くも五ヶ月が過ぎ、世界が一丸となって災害復興に着手している。


 しかし、一番難航しているのは数十億トンにも及ぶ津波ゴミの処理だ。


 ゴミは環太平洋全域に漂着し、まだ数割が海洋を漂っている。南極でも漂着しているのが確認し、大西洋まで海流によって流れ着いてもいる。


 巨大津波で湾岸都市は薙ぎ払われ、ごみ処理施設も内陸を除いて全滅だ。


 ゆえに大量のゴミを処理することが出来ず、最終処理もままならない状態が続いている。


 そこでアメリカ政府は、太平洋の中心にあるハワイを津波ゴミの最終処分施設にすることを決定した。


 津波ゴミにはレアメタルなど復興に欠かせない資源が豊富にあるため、それらの採取もまた行う。採取した資源は一元的にIPROに預け、公正に分配される。


 ハワイをゴミ処理施設に建築する費用はIPROが持つ復興費から捻出し、アメリカはハワイを十年と時限的でIPROに貸与する。


 そうすることでアメリカが主導権を握ることを防ぎ、資源を公正に分配することが出来る。


 貸与に対する見返りについては非公開』



 九月十五日 中東


『過激派組織による内乱が過熱


 レヴィアン落下の前後で一時的に収まっていた過激派組織による内乱が、ここにきて再加熱してきた。


 想定以下の被害に終わったこと、中東では環太平洋周辺国と比べて損害が少ない事から過激派組織が再び活動を始めたのだ。


 この非常時だからこそ善悪に関わらず手を取り合わなければならないが、悪はやはり悪でしかないようだ。


 中東各国は過激派組織殲滅のため再び動き出すことになる』



 九月十九日 米中ロ暗黒地域評議会


『暗黒地域の調査は国益を超えて共同調査を


 米国、中国、ロシアは先日、三ヶ国による暗黒地域評議会を設置した。


 暗黒地域評議会は、暗黒地域に関わる議題を決定する独自の国際機関だ。


 日本跡地である暗黒地域に最も近い国々であるため、三ヶ国の合議でその決定権を有する。


 ジパングをオブザーバーにする案もあったが、国家でない組織を入れるわけにはいかないと否決された。


 そして暗黒地域への安易な立ち入りはやめ、検疫を徹底して三ヶ国が共同で調査をすることに合意した。


 この合意の背景に、巨大動物の不自然な大量死が関連している。


 純粋に暗黒地域の生物が地球環境に適応しないのであれば危惧することはないが、暗黒地域の環境が地球環境に害を及ぼすのなら、レヴィアンを超える未曾有の疫病被害が起きる可能性がある。


 幸い海によって疫病が越境する可能性は阻まれるが、渡り鳥による越境はありえるため、それらも含め調査をする予定だ。


 ロシアが提言する分割統治に関しては答えは出ていない』



 九月二十二日 南米諸国連合


『カリブ合衆国案の議論始まる


 南米諸国連合は、五ヶ月前のレヴィアン落下による世界規模の災害を契機にあらゆる関係をリセットするべきとの考えを示した。


 まずは南米諸国連合をリセットし、アメリカを始めEUと同等の関係で国際社会を生き抜くため統一国家としてカリブ合衆国をする議論が始まった。


 メキシコ以下ティエラ・デル・フエゴまでの全ての南米の国々を州とし、アメリカ合衆国と同様の州制度を取る。


 元々の国々の法を維持しつつ、さらなる上位法である憲約がつく。


 これにより国家間の移動や経済の柔軟な活動がしやすくなる。


 しかし、南米は世界と比べて殺人や強盗、麻薬密売など犯罪率が飛躍的に高い。その中で国家間の移動が自由になった時、どこまで法と秩序を堅持できるか不透明だ』



 九月二十五日 邦人団体ジパング


『帰国を希望する日本人、四十万人を超える


 ネットでの集計であるが、全世界で住んでいる日本人約百五十万人の内、現時点で四十万人が日本跡地への帰国を希望していることが分かった。


 検疫の問題と安全から一時帰国は沖縄県となるが、ボランティア王はこの結果を受けて居住資材と食料、移動手段の調達を始めると表明した。


 沖縄県はレヴィアン落下の衝撃波と熱波、巨大津波によって元々住んでいた沖縄県民は全員流されてしまった。


 ジパング代表は沖縄県を首都に置き、暫定政府を立ち上げて今後暗黒地域への足掛かりとする予定だ。


 選挙に関しては日本国籍を有する人々のみで行い、ネット投票で決める。


 その後地盤が文字通り固まったところで再び選挙を行い、正当政府を立ち上げる予定だ。


 アメリカは拒否するだろうが沖縄は日本の領土だ。占領している側に文句は言われたくはなく、非武装の船を沈めれば国際社会から非難を受けるだろう』



 九月二十六日 アメリカ


『元日本人移住を止める権利はない


 国防総省は、世界各地で画策している沖縄への移住計画について、現時点で止める法的根拠がない見解を示した。


 大統領は安全保障上から沖縄にアメリカ軍を常駐しているが、領有権を主張するつもりはないと明言した。


 よって沖縄の主権は日本国憲法に則り、日本国籍を持っていた日本人にある。そして日本領である沖縄に帰国を妨げる法的根拠はないことになる。


 沖縄の領有権を主張しないのは、世界の規範となるアメリカが盗人猛々しい行為をして世界から非難されるのを防ぐためだろう。


 そのため領有権は日本にあるとしても、安全の問題から移住は控えるよう訴え続けるつもりだ。


 非戦闘員である民間人が、いま沖縄に来るのは極めて危険だ』



 九月三十日 韓国


『新政権発足


 韓国は五月下旬に起きた第二次朝鮮戦争を乗り越え、国政選挙をして新政権が発足した。


 財政面の問題から安全保障は中国軍に任せ、軍事費の全ては復興費に充てている。


 韓国大統領は新内閣を組閣。戦後の日本と同様他国に安全保障を依存することは大変遺憾だが、今は復興に専念しなければならない。


 今は耐え、レヴィアン落下以前の状態に戻すため、国家総出で着手したい。


 新韓国大統領は暗黒地域についても、我が国は暗黒地域に最も近い国だ。故に米中ロだけでなく、我が国もまた暗黒地域評議会に入会する権利があるとコメントしている。


 ただ、そのことについて三ヶ国は一切返答していない』

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