第13話『記者会見(後篇)』



 記者会見会場である第一講堂は、報道員八百人とイルリハラン軍兵士二百人の計千人がいると言うのに、異常なほど静かであった。



 咳払いや防護服が擦れる音は聞こえても、仲間内で語り掛けることはない。



 しかしそうなるのも無理はない。今回記者会見をするのは史上初の異星人だ。議員や芸能人とはわけが違う。彼らの言う一言一言が生涯聞くことが出来ない言葉である以上、生半可な覚悟で立ち会うことなんて出来やしないのだ。



 議員の汚職や芸能人のスキャンダルも特ダネだから中途半端には出来ずとも、異星人ともなれば必然的に霞む。



 だからこそたった五時間の応募期間内に申請し、四度もの検査をクリアし、息苦しい防護服を着てここにいた。



 ネットを見ればニホン一色。ユーストルを通過する衛星によって撮影されたニホンの全体像から最大望遠の首都級大都市。防務省から提供される交流の映像に、マルターニ語に訳されたニホン語、交流によって得たニホンや母星であるチキュウの情報を引き出して、掲示板や討論サイトでは昼夜問わず活発に議論が続いていた。



 テレビでも同様に、ニホンの目的は和平か、それとも侵略かと政治、軍事、異星人、SF作家と様々な評論家が混じりこれまた議論。ラジオも含めすべてでイルリハランはこの記者会見を注目していた。



 そして午後六時五十分になると第一講堂に、正装に身をくるんだホルサー大将が入ってきた。瞬間、夥しいほどのシャッター音が鳴り響く。



「皆さま、急な日程の中遠路はるばるお越しいただきました。私は当基地司令官のホルサー・ム・バルスターです。これよりニホンよりイルリハランを始め全世界に向け記者会見を行います。その際の注意事項ですが、ニホンの方々はまだマルターニ語を完璧に習得していません。様々な憶測を避けるためご存じニホンのハグマ言語学者に通訳してもらいます。質問をする場合は簡潔に片言でお願いします。知らない言葉がある場合、ニホン側は分からないと聞き返しますので近い別の言葉で言い直しをお願いします」



 これはプロパガンダを防ぐための対応だ。ニホン語で話してイルリハラン軍が通訳すればどうとでも翻訳できる。後に違うと分かってもこちらもニホン語が完璧には理解していなかったと言ってしまえるからだ。



 それでは国民はもとよりニホンが承認しかねない。だから当人にしゃべってもらえば向こう側のプロパガンダのみとなる。



「よって我々にとっては稚拙な言葉を話すと思いますが、全く知らない状態から八日足らずですのでどうかご了承ください。そして質疑応答ですが、到着した際にお配りした座席番号があります。これから読み上げる番号の方二十名はそれぞれ五つまで質問をしてください。その後、予定時間まで時間がある場合、ランダムに指定する番号の方はまた五つまで質問をお願いします」



 それから機械が出した番号を読み上げ、当選した人は握り拳を作ったり声をだしたりと喜びをあらわとする。



「もう一つの注意点として、ニホンの方々は我が国で指定する放送禁止用語を知りません。今日、何を話すのか我々も知らないため、万が一知らずに禁止用語を話すかもしれないことを予めご了承ください」



 そう付け加えることで、言ってしまったことへの困惑を防いで軍とニホンそれぞれへの非難の回避にもなる。


 時間が刻々と進み、早くもあと一分を切った。



「ではこれより記者会見を始めます」



 ホルサー大将が入口を差すとあらゆるカメラが一斉に入り口に向く。


 床から三メートルの高さにある両開きの扉から、イルリハラン軍兵士二人の肩を借りる形で宙に浮くニホン人たちが入ってきた。



 空に立てない以上、そうして入る他なく報道員たちは別段笑うそぶりを見せない。



 最初に見せたのはニホンの顔となりつつあるハグマである。入室の順番は常識なら外務省のキノミヤなのだが、新顔のキノミヤよりまだ知れ渡ったハグマの方がよいとの考えから、マンローとサリアがハグマを担いで入り口を越え、思い返せば初の異星人女性のキノミヤをルィルとティアが担いで移動する。



 と、反射的に退避行動に移したくなるほどの夥しいシャッター音が鳴り響いた。



 四度もの検査を終えているから武器の隠し持ちはありえないが、万が一このシャッター音に紛れて銃声がしたらと冷や汗が出てくる。



 しかし止めるわけにもいかない。キノミヤを抱えるルィルとティアはゆっくりと床へと近づいて彼女を下ろした。



「サンファー」



 キノミヤは微笑んで礼を言い、ルィルとマンローも微笑み返してハグマと床すれすれまでの高さにしたテーブルへと向かう。



 移動を除く一時間半のミーティングで、この世界の家具は宙に浮くことは伝えてある。宙に浮くと言っても安定性はレヴィロン機関によって保たれるから、例え椅子の上で立って端に重心を持ってこようと傾くことはない。



 地に付くニホン人にとっては畏怖ものでも、こちらの常識に従ってもらうほかなかった。



 問題は、こちらからニホンに行く場合、絶対的に地に付かなければならないと言うことだ。別段日常から安全であることは頭では分かっていても、空に立つ以上地に付くのはの恐怖で心理的にどうしても拒絶感が湧いてくる。



 ニホンはぜひとも見てみたいから、この話が来たら本音で言えば見てみたい。



 ハグマとキノミヤはまっすぐテーブルへと向かい、自前の水やノートパソコンを置くなど準備をして宙に浮く椅子へと腰を下ろす。



 シャッター音は一瞬たりとも鳴りやむことなく、無音で二人を座らせた椅子とテーブルは三メートルほど浮き上がる。



 ミーティングの時は彼らに合わせた高さだから、急に支えが椅子だけとなれば怖かろう。ハグマもキノミヤもなれない高さにわずかに不安の表情を見せた。



 そこはニホンから来た選ばれた人たちだ。すぐにその表情を戻してマイクの角度を気にする。



 そしてキノミヤが口を開いてニホン語を、言い切ったところでハグマが片言のマルターニ語でしゃべりだした。



 手製の辞書を引きながらの通訳なのでやたらと時間がかかるが、まとめてしまえばこんなところだ。



「報道関係者の皆さん、イルリハランの皆さん、全世界の皆さん、初めまして。ニホン国外務省のキノミヤシズカと言語学者のハグマヨウイチです。今日は急な日程の中、集まっていただいたことに国を代表して感謝の意を。そして、イルリハランを始め全世界に不安を与えてしまったことに心より謝罪します。



 まず皆様が知りたいことをお話します。我々はイルリハランにとって、フィリア世界にとって敵かどうかですが、一言で言えばどちらでもありません。侵略目的でもなければ望んでこの星に来てもいません。また、国家ごと転移する技術も研究開発もしていないことを明言します。



 我々自身原因が分かっておりませんが、今から十日前、回避不可能な超自然的現象によって我が国ニホンは、この星フィリアのイルリハラン国の領土、ユーストルの中心地に転移してきたのです。



 我々の母星、チキュウへは脅威が迫っていました。巨大な隕石がチキュウへ向かっており、回避するため全世界で対応しましたが、全ての対応に失敗して文明の崩壊は決定的となりました。ですが、落ちる場所となった我が国ニホンは最後の抵抗としてミサイルを撃ち、砕くことに成功したのです」



 キノミヤは用意してきたパソコンを開き、軽く操作して報道員側に回した。



「画面は小さいですが、ニホンが転移する間際の記録映像があります。滅亡が決定的だった当時では無意味な撮影でしたが、今となっては大事な証拠の一つです」



 多くのカメラが最大望遠でそのパソコンの画面を撮影する。



 画面には真っ青な空に向かって走る多数の白煙に、中心部に赤く白煙を纏った落下物が見える。



『タノム! クダケテクレ!』



 ニホン語で叫ぶ男性の声。おそらく撮影者の声だろう。


 天に伸びる多数の白煙が隕石であろう落下物に吸い込まれた瞬間、白赤く輝いたと思えば四方八方に砕け散った。



『オオオオオオオオ! ヤッタアアアアアアア!』



 砕けた隕石は長円の形に放物線を描いて落ちてくる。



『……オイ、コレデオワリカヨ! クダケタノモウテヨオオオオオ!』



 理想であれば砕けた無数の隕石も迎撃するだろうが、さすがに高速で無数に分裂してしまえば捕捉するのは不可能なのだろう。



 落下を続ける隕石群は画面から外れていき、一つの隕石に画面を合わせる。


 その隕石が地平線へと消えた瞬間、隕石の軌跡である白煙や空を漂う雲が消えた。



『ンナ……アレ? ナンダ? クモガキエタ? レヴィアンハ?』



 映像はそこで止まる。



「残念ながら、仕様の違いでこの動画をお渡しして偽装かそうかの確認はさせられませんが、これは全て事実です。三十二年前に発見した隕石はニホンへ落ち、砕いた破片が落ちる寸前に我が国はこの世界に転移しました。原因はこの隕石以外に考えられませんが、なぜ転移出来たのか分かっておりません。また落ちてきた隕石は共に来ていません。



 我が母星チキュウでは、異星人の捜索は数十年前から行っていましたが、生物がいるかもしれない星の発見しか出来ていませんでした。もちろんフィリアの存在、空を飛ぶ皆さんもこの世界に来て初めて知りました。



 なので我々はこの世界の言葉も事情も一切分からず、イルリハラン政府の好意により交流を経て、こうして片言ですが話せるようになった次第です。



 イルリハラン、フィリア各国が知りたいニホンの侵略の可能性ですが、今後も含めて軍事的侵攻はしないことを明言します。我が国は軍隊を保有しておりますが、我が軍の活動は自国及び親密な国家の防衛のみとし、他国に進軍し武力攻撃することはしません。これは憲法・法律に明記されており、平和的活動を除く他国での軍事活動は出来ません。



 国土転移から三日目、イルリハランの隣国であるレーゲンよりミサイル攻撃を受けた際、浮遊戦闘艦に攻撃せずミサイル迎撃に専念したのはそのためです。我が国は他国との戦争を望みません。武力を見せて有利に交渉するつもりもありません。



 重ねていいます。我が国ニホンは、国外へ軍を進軍させ他国の領土を軍事的侵略することは出来ません。



 ですが、現時点で海を含む領土分だけイルリハラン国へ侵略している事実はあります。このことについては今後イルリハラン外務省、政府との外交により解決案を見出したいと思っておりますが、少なくともユーストル全域をニホン領とする考えはありません。ユーストル内での活動もまた、今後イルリハラン外務省、政府と外交を重ねて決めていきたい気持ちです。



 今後のニホンの方針ですが、先ほどお話ししたように我が国はこの星に望んで来ておらず、さらにどうやって来たのかもわかっておりません。この世界の世論では元の星に帰るべきとの考えもありましょうが、チキュウに帰る目途は一切立っておりません。よって我が国は国家及び経済存続のため、イルリハラン国との貿易を望みます。もちろん検疫等は両国共にしっかりし、疫病の蔓延は防ぐことを前提としてです。



 我が国が望むのは平和です。急きょ記者会見を開き、我が国の声明を発表しましたのはイルリハランの世論にニホンを不安視する声が多くあると聞きました。可能であれば我が国の国家元首より発表する予定でしたが、手遅れになる前に発表した次第です。



 我が国が望むのは平穏です。我が国が存在することでイルリハランを含め周辺国、さらにはフィリア各国が不安視するかもしれませんが、対話による外交を望む限り、我が国は誰一人危害を加えるつもりはありません。



 もちろん、突然宇宙からではなく地上に現れた異星国家を信用してほしいと言ったところで、信用する方が無理な話でしょう。



 我が国ニホンに対する信用は、これからの活動によって持っていただければと思います。以上です」



 三十分以上掛けて語られ、キノミヤとハグマはそれぞれ頭を軽く下げた。


 長い通訳を終えたハグマは自ら用意した水を飲んで一息つき、ホルサーに顔を向けて目くばせする。



「ではこれより質疑応答に移ります。呼ばれた座席番号の方は五つまで質問をお願いします。五つない場合は次の方に移ります」



 最初の番号は一番で、一番右端の席の記者が立ち上がると近い兵士からマイクを受け取る。



「では僭越ながら質問させていただきます。ニホンがどうしてこの地に来たのか、これからどうしたいのか大変興味深かったです。この記者会見で嘘を言ったところで首を絞めるのはニホンですから言っていることは本当なのでしょう。その上でお聞きしますが、隕石が落下する直前に来たのなら、チキュウでは大変なことになっているのでは? もし原因が分かれば戻るのですか?」



「難しい質問です。そのことについては本国でも議論をしているところで、現段階では分からないと答えさせていただきます」



「ニホンは法によって軍事侵略をしないと言っていましたが、地図上から見ればユーストルはニホンの支配射程圏に十分収まります。ならばユーストルを領土とする可能性はあるのではありませんか?」



「交流で得た情報ではイルリハランの人口は約八千万人と伺っております。我が国はイルリハランからすれば小さな島国ですが一億二千万人居住しておりまして、ユーストル内に展開出来れば良し悪しはともかく大きな変化が見れるでしょう」



 質問した記者は話そうと口を開けるが、キノミヤはニホン語で続けハグマがすぐに通訳する。



「ですが巨大な動物たちが生息しているユーストル内に町や農場を作ろうと、我が軍の護衛なしでは生活もままなりません。そんな領土を得たところで、内外に問題の火種を持つだけです。土地が欲しいかと言われればほしいですが、いま手にしたところで何もできません」



 ニホンから教えられた情報では、当然と言えば当然だが国内の農作物は地上で作られている。フィリアのように浮遊農場を作ることはないから、必然的に土地問題が出てくるわけだ。しかもあんな小さな島国に一億人もいればその土地も少なく、目の前に広がるユーストルはぜひとも欲しい。



 だが残念なことにユーストルにはウィルツを始め多くの大型野生動物が生息している。



 あの生物らも巨体の自立と歩行にフォロンを使うので、フォロンのないニホンには本能で近づこうとしない。が、フォロンのあるユーストル内では常にその危険が付きまとうので進出は困難だろう。



 実は交流中も何度も大型動物が来て一時中断している。



「ありがとうございます。次の質問ですが、転移の原因となった隕石についてですが、チキュウではどのような回避作戦を取ったのですか?」



「二種類の作戦を行っていました。一つは推進器を隕石に取り付けて、わずかに道を逸らす作戦。もう一つは巨大な砲を建設し、道を逸らす作戦が失敗したときに壊す作戦を行いました」



 巨大な砲と聞いて報道員の方から「まさかバスタトリア砲?」の言葉が小声と出る。



「その巨大な砲とはバスタトリア砲ですか?」



 その報道員の質問にニホン側は首を軽く傾げた。巨大な砲と言うことでその名を思いついたが今聞くべきことではない。言ってはならない名に、ルィルたちは一瞬動くべきか迷う。



「その名の兵器の詳しいことは知りませんので、同一なのかどうか返答しかねます」



「では巨大な砲についての説明をお願いします」



「申し訳ありません。軍事機密に触れるため話すことは出来ません」



 別にニホンは一切を正直に話す必要はない。答えたくない質問には答える必要はないのだ。


 これで五つの質問権を使ってしまい、次の人に代わる。



「私の質問はニホンの政治についてさせていただきます。最初の質問ですが、ニホンは今後主権についてはどう考えておりますか?」



 主権は国家成立の条件の一つで国家として国際社会が認める証でもある。平たく言えば統治力であり、他国の干渉をあらゆる面で受けず自国の立場をはっきりとさせているのが主権だ。



「主権については、国内では主権は存在する前提で活動し、国外では認めてもらうことを前提としてイルリハランとアルタランで協議を進めていく予定です。内外で有無と矛盾をしますが、我が国の国民の生命と財産を断固とをして守るため、そのような姿勢で進めていきます」



 なぜそんな質問をするのか。それはひとえにニホンが突然イルリハランの領土内に現れた異星国家だからだろう。



 国家が分裂し、それぞれ主権を持つことは歴史の中でも数多くあり決して珍しいことではない。当該国が認め、アルタランも認めれば現代でも新たな国家は生まれる。



 しかしニホンは異星国家だ。リーアンのみで構成する国家群の中に、異星人の国家が主権をもって登場することは全世界共通で想定外だ。そもそも創作上だが異星人は八割近くが侵略思想だし、残り二割も超文明で干渉する程度である。完全にリーアンの想定外の状況に、全世界で迅速な対応をしろと言うのが無理な話だ。



 領土、国民に続き、その二つを防衛する経済力と軍事力を持っていれば事実上ニホンは主権を持っている。しかしその主権を根拠とする法が全世界になければ無いと言えてしまう。



「次の質問ですが、チキュウではアルタランのような国際組織はありますか? また加盟国は全世界中何ヶ国ですか?」



「あります。ニホン語でコクサイレンゴウと呼び、世界の平和及び健全な国際関係の構築を主眼に置いて活動しております。加盟国は一九三ヶ国、ニホンが国として承認したのは一九六ヶ国になります」



 地球の国の数に多くの報道陣が驚く。と言うのもフィリアにある国家は一〇二ヶ国しかない。フィリアはチキュウより何百倍と巨大なのにチキュウの国より少ない。その事実はさすがに驚きを隠せない。



「一九六ヶ国……ニホンは人口で言えば上から何ヶ国目ですか?」



「チキュウの総人口は七十三億人で、ニホンの人口の順位は転移直前で十位です」



 フィリアの総人口は四十八億人。イルリハランの人口は七千八百万人で順位は十五位。地図で見れば矮小すぎると言うのに一億人以上もの人が生活しているとは恐れ入る。



 もっともこのフィリアも、広大な土地はあっても住むのは密集した巨木林か浮遊都市だから決して別世界と言うわけではない。



「えーと、政治の質問に戻りますが、ニホンの政治は王政ですか? それとも民主制ですか?」



「我が国は民主制を採択しています。同時に、国と国民を象徴するテンノウと呼ばれるお方もいます。ここの部分は説明が難しく、王とは異なる王はいますが政治は民主制と理解ください」



 王がいながら政治は民主制はイルリハランと類似点が見える。イルリハランは王を頂点として国民から選ばれた議員によって国会が運営され、その議員は省庁の長を務め国民からの声を吸い上げている。テンノウは王であって王ではないのが気になるところだ。



「最後の質問ですがニホンは建国して何年目になりますか?」



 ある意味虚を突いた質問と同時に知りたい質問とも言えた。歴史が五十年の国と二百年の国とでは発する言葉の重みが違う。イルリハランは建国して四百年を超えたが、四百年以上の国は数える程度だ。ちなみに最長は八五〇年である。



「……チキュウとフィリアでは年日数が違うためまずはチキュウ時間で言わせてもらいます。チキュウの一年は三六五日で、ニホンが建国したのは二六七九年前です。フィリアは年日数四百日ですので、それで計算しますと約二四四四年となります」



 ハグマの通訳を聞いたイルリハラン人全員が絶句した。



「は、はい? し、しつれい。五回質問しましたがもう一度させてください。今、二四四四年と言いましたか?」



「我が国の建国に関しては神話まで遡ります。先ほど言いましたテンノウ陛下の初代が、チキュウ時間で二六七九年前に即位したことによりニホンは建国されました。ですが、初代テンノウは我が国でも神話上の人物でして、歴史的に実在が証明された代より数えればチキュウ時間で一五〇〇年ほどとなります」



 補足説明の年数を聞いても絶句してしまう。フィリアの中で一番長い歴史を誇る国の倍から三倍の歴史を持つ国。そんな国のトップであるテンノウはどれだけ偉大か。まさに太陽を目にするほどのまぶしさを覚えるに違いない。



 さすがに返答が返答だったことで六つ目の質問が認められたが、そこで終わって次に変わり、ジャンルを絞って質問が繰り出された。




 ――宗教――



 ――ニホンまたはチキュウでは神は信じられていますか?


『神を信じる宗教はあります。我が国の宗教は複雑なので、詳細な説明は避けさせていただきます』



 ――複雑と言うのは教えがですか?


『私個人の解釈であり、政府の回答ではないことをまずはご理解ください。我が国の国民は大別で三つの宗教に入っていますが、多くの国民は神を絶対と見ていません。心の底から神を信じる人もいれば、信じない人もいます。多くの人々は心を晴れやかにするために風習として時折信じています。その背景には、我が国独自の宗教に全ての存在には神が宿るとされています。つまり我が国にとって神は特別ではなく、身近な存在であるため気にしないとも言えますね。さらに先ほどお話したテンノウの初代の先祖は神話上の神であるため、その考えが強くなったかもしれません』



 ――宗教について政府として回答をしない理由は?


『我が国の政治は宗教とは完全に区別しています。さらに個人によって考えが違うため、政府によって定められることを避ける考えもあります。そしてテンノウの先祖が神であることについては、説明するには今の語学力では難しいので控えさせてもらいます』



 ――ニホンでは宗教戦争は起きたことはありますか?


『ここ数百年起きていません』



 ――このニホン転移は神の仕業と思いますか?


『起きたことには必ず原因があります。神の仕業としか思えない事にも、科学的原因があります。皆さんが空を飛ぶことは我々にとっては神の仕業としか思えませんが、皆さんが科学的に理解をして浮遊基地に応用しているのと同じです』




 ――軍事――



 ――ニホンの軍事力は、地球世界で何番目ですか?


『ニホン軍の年間予算はチキュウ世界では七位です』



 ――ニホンは戦争をしたことがりますか?


『あります』



 ――戦勝しましたか?


『そのことについては我が国の苦悩に関わるため差し控えさせていただきます』



 ――このフィリアにはバスタトリア砲と呼ばれる最強の兵器がありますが、チキュウにもそのような兵器はありますか?


『あります。ですがこの兵器に関しては軍事機密に関わるため、所有の有無から威力等に関してお答えできません』



 ――声明でニホン軍の行動に、自国と親密な他国のみ防衛とありましたが、他国の防衛は具体的にはどのようにしますか?


『対象の国の戦闘艦へミサイル攻撃されたとき、そのミサイルを迎撃します。ですがこの行動も我が国の安全に重大な影響が出る場合に限られます。例えばイルリハランの最北で戦いがあった場合、我が国に影響がないと判断すれば何も出来ません。逆にこのユーストルで武力抗争が起きた場合は我が国への脅威は明白です。その際、同盟を結んだイルリハラン軍が攻撃を受けた場合、同盟国を防衛するため我が国も防衛行動を取ります。この世界に同様の概念があるかわかりませんが、我々の世界では集団的防衛権と言います』




 ――娯楽――



 ――ニホンにはどのようなスポーツがありますか?


『たくさんあります。主なものと言えばボールを使ったものです。簡単に説明をしますと、ボールを脚でたたき合い、相手にある特定の場所に入れるサッカーと言うものがあります。もう一つは、相手が投げた小さなボールを棒で打ち、決められた場所を移動して打った場所に戻り点が入るヤキュウと言うものが、我が国だけでなく世界中で人気です』



 ――テレビではどんなものを放送していますか?


『報道、ドラマ、映画、バラエティーと多種多様に放送しています』



 ――今日はどのようなことを放送していましたか?


『国土転移してからは全てのテレビ局で転移に関する報道をしております。それ以前は、隕石による滅亡の危機感から放送はしておりませんでした』



 ――報道では具体的にどのようなないようでしょうか。


『イルリハラン軍との交流によって得たこの世界の情報と、国内の出来事の報道です。この世界のことは、世界地図から始め大型動物や交流で映像として見せてもらえるイルリハランの情景等です』




 ――治安――



 ――星から星に転移すると言う事態に、国内の治安はどうなっているか。


『比較的混乱は起きておりません。我が国は平時より災害が多く発生していまして、さらに他者を思いやる国民性から暴動等はありません』



 ――ニホンでは殺人事件は起きたりしている? その件数は?


『平時で言わせてもらいますと、年間十万人当たり0・26人の被害者が出ております』



 ――驚くべき低さだが、それは国民全員が武器を所持しているからか? それとも防犯が優秀だから?


『我が国では武器の所持は厳しく禁止しております。九十九%以上の一般市民は銃を所持しておりません。治安が良いのは、国民が規則正しく他者を思いやる生活を送っているからです』



 ――協調性の良さは交流から分かるが、一パーセント未満の人は不当に銃を持っていると?


『銃を所持しているのは、我が国が認めた人々と、不当に入手し悪用する人々に分けられます。ですが、それでも銃を使い事件を起こすのは稀です』



 ――そこまで治安がいいのなら、テロは起きたことはない?


『恥ずかしながらあります。規模が大きいものでは二十五年前にある宗教団体が化学兵器を使い、大勢の死傷者を出しました。死者十名以上、負傷者六千名以上です。以来大規模なテロは起きていません』




 ――科学――



 ――科学技術が似ているとのことですが、宇宙への進出はしていますか?


『しています。独自の技術でロケットを開発し、人工衛星を打ち上げています』



 ――人を乗せての打ち上げはしていますか?


『我が国の技術では人を乗せられるロケットは開発できていません。ニホン人が海外のロケットに乗って宇宙に行ったことはあります』



 ――ニホンはチキュウ世界で先進技術を持っている気持ちはありますか?


『あります。全ての分野ではありませんが、多くの分野で我が国は諸外国を引っ張る技術を持っています』



 ――ニホンは今後、我々と同じく空に立つ研究をしますか?


『この星で生活する以上、空を飛ぶ技術は獲得しなければなりません。技術提供を受ければ幸いですが、理由により情報の開示が出来ない場合は独自の調査から研究を始めていく予定です』



 ――ニホンの都市の建物、木材を使わず全て石をくりぬいて作ったものですか?


『コンクリートと呼ばれる、いわば人工の石を使い建築しております。木材を用いた建物もありますが、イルリハランのように巨木をくりぬいてはいません』




 ――食事――



 ――ニホンの主食は何でしょうか。


『我が国の主食は先日イルリハラン軍兵士にお渡ししたコメです。コクモツと呼ばれる総称の植物より収穫して食しています』



 ――ですが星の環境が違えば栄養素が異なります。酵素が分解できなかったりチキュウでは当たり前の栄養素が、私たちにとって毒で死に至らしめることもあったのでは?


『覚悟の上でお渡ししました。そして食して死なせてしまった場合、我が国は責任を取る用意がありました。このことはイルリハラン軍にもお話して理解してもらっております』



 ――ニホンはフィリア世界の食料を輸入したい?


『ニホンとイルリハラン、両方で栄養摂取に問題がなければ貿易は行いたいです。ですが星が違うため外来種による生態系破壊は防ぐべく、しっかりとした検疫はしなければなりません』



 ――ニホンでは肉、魚、野菜など食べていますか?


『食べています。さらにコクモツの一つであるコムギより作られたパンやメンを使った料理もあります』



 ――そのコクモツとはどのようなものですか? もし相当するものがこちらにない場合、それはイルリハランでも育てることはできますか?


『コクモツは植物から得られる食料の総称で、水を多く使って育てる物からほとんど使わずに育つ物と多種に渡ります。交流によってイルリハラン国内で育てられている植物をいくつか拝見しましたが、穀物に相当するものはありませんでしたね。育てられるかは土や水、気候に左右されるため、いまはっきりとは言えません』




 ――食事2――



 ――チキュウ世界では酒類はありますか?


『あります。我が国の名を持った酒に始まり何万種類とあります』



 ――ニホンは水は自然ものですか? それとも海からくみ上げてろ過を?


『自然の水です。ですが転移により雨が降るかどうかわかりません。もし降らないのであれば海水をろ過して飲み水にすることも検討しています』



 ――あれだけ狭い国に一億人もいれば食料はすぐになくなりそうですが、国内生産だけでまかなえるのですか?


『我が国の食料の生産量は人口の半分を下回っています。そのためイルリハランとの貿易は不可欠となります』



 ――イルリハランが突然来たニホンに対し、貿易と言う名目で食糧支援をする合理的理由がありますか?


『そのことについては政府間による協議が出来るように交流を段階的に進めていきます。もちろん無償による支援は考えておりません。我が国しか出来ない分野を探し、それを条件に貿易を出来ればと政府は考えております』



 ――ニホンの食料はどれだけ持つんですか?


『そのことについては控えさせていただきますが、しばらく先です』




 ――軍事2――



 ――先ほどの返答で集団的防衛権を話しておりましたが、それはつまりニホンはイルリハランと安全保障を結びたいと見ていいのですか?


『声明の最後に言いましたように、我が国の信用はこの世界では無いにも等しいです。そんな国とイルリハランが何らかの軍事条約を結べば、今度はイルリハランの国際信用を失う恐れがあります。よって我が国はどの国でも早急な安全保障条約を結ぶつもりはありません。集団的防衛権をお話したのは、我が軍の活動範囲を説明したかったからです』



 ――では条約を結ぶ前にイルリハラン以外の国家の軍がユーストルに侵攻し、イルリハラン軍が交戦をしてもニホンは自国の防衛しかしないのですか?


『法を順守するのが国家の責務で、軍隊であればなおさらです。法を無視する国家をどうやって信用すればいいのでしょうか』



 ――もし今後、イルリハランに限らずニホンの存在と思想は危険と判断し、実効支配すると主張する国家が現れた場合、ニホンはどうしますか?


『今現在、我が国の主権は国内にはあり、国外にはない状況ですが、我が国には一億二千万人の国民が不安の中生活しています。その上他国による統治を許せば国民の不安は計り知れません。よっていかなる理由があろうと、我が国の統治を他国に委ねるつもりはありません。フィリア国家の軍が我が国に侵攻してきた場合、対話による解決を求めつつ最小限の武力をもって防衛します』



 ――イルリハランがニホンの主権を認めなかった場合はどうしますか?


『認められるまで外交を続けていきます。我が国の存在を拒絶したところで家の引っ越しのように移動することは出来ません。この地に存在し続ける以上、我が国は主権をもって活動し、この世界に容認されるよう平和的な外交をし続けます』



 ――信用云々関係なく、ニホンはイルリハランと安全保障条約は結びたいですか?


『我が国はイルリハランとの争いを望んでおりません。互いに争わず、対話による解決を望む形が条約であれば必要かと』




 ――その他――



 ――ニホン人はこの転移についてどう思っていますか?


『隕石による死が確定した状況から一転、他の星に転移する状況に戸惑いを見せております。ですが、多くの国民は冷静に生活をしております』



 ――冷静なのは国民性からですか?


『それもありますが、多くの国民は転移した実感を持っておりません。先日世論調査をしたところ、海沿い以外の国民はこのフィリアの世界をテレビ以外で見ることが出来ないため、転移した実感を持っていないとのことです』



 ――ニホン人は空に立つ我々のことをどう思っておりますか?


『最初こそ不安感をもっていましたが、交流をしている写真や映像を配信していることにより受け入れており、交流当初ではセイレーンと言う名で広がりました。セイレーンとはチキュウの想像の生物で見た目が似ていることから広まりました』



 ――チキュウには天敵はいますか?


『人類に対しての天敵と言う意味では該当する生物はおりませんが、人を最も殺すのは人を除けば、血を吸うカと呼ぶ小さな昆虫がいます。活動範囲は狭いですが、時には五キロ以上移動することもあります。ですが海に囲まれたニホンから出るには接続地域を通るしかないため、殺虫をしっかりすれば問題ありません。現在は活発な活動はしていません』



 ――ニホンにはニホン以外の国の人はいますか?


『います。現在我が国には百万人の外国人が永住しています。平時では二百万人おりましたが、隕石落下に伴い母国に戻りました』



 記者会見が始まり二時間が過ぎた。


 一つの質問への返答に五分や十分以上かかるため、普段であれば一時間も掛からないところどうしても時間が過ぎてしまう。ハグマも慣れない通訳に疲れが見えたことで三十分の休憩となった。



 ハグマ達が座る椅子を床近くまで降ろしたあと、入ってきたときと同じく担いで第一講堂を出た。



 ただ講堂を出るだけなのにシャッター音が凄まじいのは異星人効果だろう。だが保安の関係から報道員が出ることは禁止している。トイレに関してはおむつを履いてもらっているから、それを口実に出すことも防いでいた。



「いやーすごかったですね」



 二人を近くの控室に運び、こちらもわずかな休憩時間となった途端聞いてきたのはティアだ。



「何がすごいの?」


「ニホンが転移してきた理由ですよ。隕石が落ちて転移って、小説でも出ない話ですよ」


「まあね。簡単に信用するわけには行かないけど、国土転移なんて常軌を逸したことならそれくらいのことじゃないと無理かもね」


「それと神様がたくさんいると言うのも驚きです。神様は三人だと言うのに」



 フィリアでも宗教は多くある。国を跨いで布教していればたった一ヶ国から一地域のみとあるが、世界で一番信仰者が多いのは男女の神と魔の神によって創造したミストロ教だ。イルリハランも全域でミストロ教で、その信者数は三十億人に達する。



「まあ考え方はそれぞれだから仕方ないわよ」



 ルィルもミストロ教信者であるが神の存在を心底信じているわけでもない。それゆえに他の宗教の考えも比較的容認している。しかも異星の宗教だ。同一だったらそれはそれで学術的にすごいことになる。



「あとニホンの歴史が二四四四年以上続いていたのも驚きです」


「それは私も思ったわ。神話から始まる国なんてまさに小説に出てくる国ね」


「神話上の人物のそれも神様がニホンの一番偉い人の始祖って、ニホンは神の国ですかって話ですよ」



「だからこそ神の仕業にしか見えない国土転移が出来たのかもね」


「神に愛された国かー。ぜひとも行ってみたいです」


「けどフォロンがないから地面に付かないと観光できないわよ。ティア耐えられる?」



 その事実にティアは苦い顔をする。



「うう、ちょっと無理ですねー。安全だって分かってるんですけど、やっぱりちょっと……」



 リーアンが大地を拒絶する理由はもう百年前に絶滅している。しかし空に立つようになってから理由が取り除かれるまで数十万年間脅かされた結果、遺伝子レベルで拒絶感が刻まれて本能として避けてしまう。それに三次元に生きるのに二次元を強いられるのも拒絶を後押しする。



「でも向こうのことを偵察するためにも耐えないとならないのよね」



 ルィルも床くらいならどうと言うことはないが、自然の大地はやはり怖さを抱く。軍人たる者恐怖心を払うために、地に寝そべる訓練を何十時間としても動悸が激しくなり不安とめまいが来るほどだ。



 本音を言えばニホンを直に見てみたい。しかし体がそれを拒む。悲しき葛藤だ。



「なんとかニホン国内にフォロンを満たせればいいんですけどね。そう言えば上空どれくらいまでフォロンがないのか分かっているんでしたっけ?」



「まだ分かっていないわ。専門家の意見じゃドーム状のはずって話だけど、ニホンの領空内だし万が一落ちてしまったら即死よ。おいそれと調べられないわ」



 ニホンの説明でも原因が長円の放射状に砕けたのならドーム状の形をしているのは合理的だ。フォロン測定器を使えば正確に測れても領空の問題と万が一の安全が出てくる。



「それに向こうにしてもフォロンがないのはありがたいのよ。じゃないと密かに入り込んで拉致とか工作行為し放題だしね」



 フォロンがないのは一見不便に思えてもニホンは空を心配する必要がなく、イルリハランも地表を注意すれば不審な行動を発見しやすい。相互に安全が保障されているのはありがたいことだった。



「さ、雑談もここまで。あと二時間半、無事に記者会見を終わらせてハグマたちをニホンに帰らせましょう。多分明日からレーゲンが色々としてくるから忙しくなるわよ」


「はい」



 果たしてフィリア初の異星人による記者会見は何のトラブルもなく終わり、深夜一時にハグマたちはオスプレイに乗り光り輝くニホンへと戻っていったのだった。



 この記者会見をきっかけにこのユーストルに激震が走ると両国共に確信を抱かせながら。



 そしてネットでは予想通り激しいコメント合戦が繰り広げられていた。



 隕石で転移ってぜってー嘘だろ。どう考えても科学的な機械使わなきゃんなの無理!



 だな。それに綺麗に国全部を自然で転移で無理っしょ。どこか一緒に行けなかったところが出るべき。だから隕石による転移は嘘決定。



 じゃあ逆に聞くけど、なんでニホンはあんな大事なところでそんな大嘘を付くんだ? バレたらますますニホン不利じゃん。こっちは食料って大事なカードがあんだぜ。



 私の考えじゃそうした方が同情してくれるんだと思うの。



 だったらあの映像は何さ。



 作り物に決まってんだろ。技術が同じなら実写と同じの作れるだろ馬鹿。



 あのさー、もし実験で来るなら普通小規模でしょ。なんで国が丸ごと来るのよ馬鹿。



 または向こうで迫害されて避難してきたとか。



 いやだからどっちにしろ転移先のこと調べるでしょ。



 お前馬鹿? 小規模で来たって分かるわけないだろ。なにか、衛星はフィリアで動くやつ全部把握できてるのか?



 なんだか否定派が多いですねー。別にニホンが居たって危険ないんじゃ? ユーストルなんて一番端っこだし、人そんなに住んでないし、別にあげても痛くないんじゃない?



 そしたらレーゲンがニホンを占領するぜ。ぜってーニホンを奴隷にして地下資源掘らせまくるぜ。そういやユーストルって地下資源豊富なわけ?



 レヴィニウムはたっぷりあるらしいな。フォロン結晶石や石油は知らん。



 つーかユーストルってクレーターなのか? それともカルデラなの?


 地質学的にゃクレーターらしいぜ。二億年くらい前にでっけー隕石が落ちたとか。



 でっけーってどんだけよ。



 調べてみた。直径四百キロくらいのが落ちたっぽいね。



 二億年前のクレーターなのによく地殻変動で形崩れなかったな。



 その時にグイボラも絶滅してくれりゃ良かったのにな。



 論点ずれてるけどそだな。それは本気で思う。



 で、ユーストルに地下資源ってあるわけ?



 一億年も経ちゃ出来るんじゃね? ユーストルの外じゃ自然と石油が湧き出てるところもあるし。



 なら俺らが奴隷にしちゃって掘らせりゃいいじゃん。どうせ異星人なんだから人権なんていらないだろ。



 んなことしたらイルリハランは野蛮な国だって評価が付くぞ。異星人だろうと人の形をしてりゃ人道的に扱わなきゃ国が終わるぜ。



 まあ四百年の国が二四四四年の国を奴隷化するってのはヤダな。美徳がねぇ。



 その二四四四年も本当かどうか疑わしいけどな。ニホンの王の先祖が神って、どこの三流作家が考えた設定の小説だよ。



 なあなあ、一つどうしても気になることがあるんだけど言っていい?



 なんだよ。



 ニホン人ってどうやって子作りすんのかな。俺らと変わんないのかな。なんでせっかくの女ニホン人なのにキノミヤっておばさんじゃん。若い子見てみてーよ。



 一度くたばれお前。いやマジで。



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