第4話『異地』



 ふと右側に目をくべると、海の上に護衛艦が一隻とさらに沖にある異地には三十メートルは優に超しそうな四足動物が見えた。



 護衛艦は数年前に弾頭ミサイル迎撃とレヴィアン迎撃用に建造されたイージス艦〝ひえい〟だ。それより沖に見える動物はサイのような恰好で角が二本鼻から外側に伸びている。間近にいたら一歩ごとに地震のような振動を感じるかもしれない。



 しかしその巨大動物は興味がないのか〝ひえい〟を恐れてか近づく素振りも見せない。



「あれって食べれるのかな」



 クジラ以上の体積を考えればあれ一頭で数万人分の腹は満たせる。テレビによると円形山脈のいたるところに大型動物はいて、分かっているだけで九種類五百頭以上はいるらしい。



「けど食べるの勇気いるよな。っと」



 つい前方不注意をして反対車線に行きかけて車を元に戻すが、すれ違う車は一台もいない。



「怪鳥とかに襲われなきゃいいけど」



 羽熊洋一はそう呟きながら窓を開け、気温十四℃とやや肌寒い外気を車内に入れてタバコに火をつけた。すると前方にバリケードと自衛隊隊員が見えてきた。止まれと両手を振って合図を送ってくる。



「すみません、ここから先は関係者以外立ち入り禁止なんです」



 この先、本州と異世界が物理的につながった接続地域は、県知事の命令で特別警報が出されて周辺住民は全員避難させられた。天災ではないが戦闘の可能性もあるため特例として発令され、現在接続地域周辺は国防軍の管理下にある。


 民間人である羽熊を止めるのは当然だった。



「俺は千葉大学の羽熊って言います。防衛省から異地の調査をするよう言われてまして、これが書類と身分証です」



 羽熊は慣れたように答えて胸ポケットから一枚の書類と免許証を見せる。



「学者さんでしたか、失礼しました。拝見しますね」


「君らも大変だねぇ、いきなり異世界からの防衛をしなきゃならないなんて」


「ええ、まあ」



 歯切れの悪い返事は仕方あるまい。自衛隊時代からその装備や訓練は対象国に対してで、しかもアメリカが出てくるまでの時間稼ぎで終始の戦闘は想定していない。だが今回は全てが未知でありアメリカの後ろ盾もいない状況だ。いかに不安を払しょくする国防軍でも拭うのは困難なのだろう。


 反戦集団ならその反応に過敏に答えるだろうが、羽熊は反戦思想ではなかった。



「大変だけど頑張って。こっちもこっちで出来ることするから」


「ありがとうございます」


「了解です。羽熊さん、いま確認取れました。通って大丈夫です」



 無線で身元確認していた隊員が窓に覗き込んで書類と免許証を羽熊へと返す。



「では羽熊博士、お気をつけて」


「俺はただの国際言語文化学者ですよ」



 今回、日本政府は大胆な方針を発表したが、国土転移の衝撃度が強すぎて埋もれてしまった事実がある。



 民間人による異地調査だ。



 本来この手のような危険地域に足を踏み入れるには、最低限の自衛が可能な軍隊限定なのが鉄則だ。何が起こるのか分からないのに、戦闘に関して足手まといの民間人を連れていくのはありえないと言わざるを得ない。



 海外であれば自分の身は自分でと拳銃程度は携帯されるが、こと日本ではいかなる事情であれ、拳銃を訓練も資格もない民間人に携帯することはありえないのだ。防弾チョッキくらいは着れてもそれだけである。


 ならなぜそんな危険地域に民間人を連れていくか。それは迅速な理解をするためだ。



 今の日本には圧倒的に時間が足りない。月単位の成果を求めては遅く、必要分野に長けた隊員を集めても本業には及ばない。なら本業を連れていき日単位の成果を上げさせろと言うのが政府の決定だった。



 次に誰を連れていくか。もちろん教授の肩書を持つ人物がふさわしいが、やはり教授まで持つ人はそれなりの年齢に達していて過激な運動は出来ないし、いざ戦闘となれば守りながらの退避は困難だ。そうなると当てはまるのが国立大学で三十代から四十代前半に当たる教授又は准教授で、フィールドワークになれた者となる。国立大学限定なのは、みなし公務員であるため国からとやかく口出しが出来るからだ。



 羽熊洋一は今年で三十二歳で、国立千葉大学国際言語文化学科の准教授である。


 その肩書から分かるように、内容は国際的な言語文化を学生たちに教え探求させ、海外に出ても言語の壁を気にさせず仕事ができるようにすることだ。その大半が英語や中国語なのだが、ごく少数に少数民族の言語の探求もあり、羽熊はその分野での准教授だった。



 なぜ少数民族の言語の分野が注目されるかと言えば、未知の言語の探求のノウハウを持っているからだ。数世紀に渡り研究された英語や中国語学者が行ったところで他の隊員と変わらない。世界に流布されていない言語を研究する人こそ今は必要だったのである。



 他にも動物、植物、気象、病理、地質学者ら若い人材を異地に送ろうと、内閣府と防衛省から依頼が来ているらしい。



 羽熊自身、その旨を大学から聞いたのは佐々木総理の会見から二時間も経っていない頃だった。それだけ政府が焦っているのが垣間見え、責任の重さものしかかってくる。



 なにせ異地の原住民と会話をするには羽熊達言語学者の存在が不可欠だからだ。植物や気象は自分らで出来ても、言語だけは原住民と接触しなければ叶わない。一応受信するラジオや無線で研究は始まっても、対面しなければわからないこともある。



 原住民側がアニメやSF映画よろしくの万能翻訳機なんてものがあれば別だが。


 あのコンニャクがぜひとも欲しいところだ。



 緊張と期待を半々胸に秘めて走っていると、浜に展開する多数のテント群が見えてきた。これから恒久的に基地として機能させるためかいたるところで浜の舗装工事が始まり、戦車や幌を付けたトラック、装甲車に高機動車が車種ごとに集められ駐車している。



 空では陸上自衛隊と書かれたヘリが数機が飛び、そのさらに上空には航空自衛隊の戦闘機が旋回していて圧巻の言葉しか出ない。



「すっげ、陸海空全部が一か所に集まってら」



 よく災害出動で自衛隊がテレビに出ても、陸は陸、空は空、海は海とそれぞれ独立して救助活動をしている。裏では綿密なやり取りをして効率的にやっているだろうが、テレビではそれぞれしか見ないから一か所に全てが集まるのは初めて見た。



 また、今度はさっきのとは違ってより強固なバリケードで道をふさいだ検問が見えてきて、その手前で止まる。



「羽熊洋一さんですね。書類を拝見してもよろしいですか?」



 話はさっきの検問から来ているようだ。隊員は会釈をしながらそう聞いてきた。羽熊はそれに応え書類と免許証を見せる。



「……OKです。車はあそこに停めて、あの大きなテントに向かってください」



 言って隊員は駐車スペースと本部であろう他のと比べて幾分か大きいテントを指さす。



「分かりました」



 指定された場所は場所的には浜だが鉄板が敷き詰められていて、バイクからワゴン車まで色々な車種が止まっている。そのうちの一か所に羽熊もセダンを停めた。


 と、そのすぐわきを小銃を抱えた隊員の一列が駆け足で通り過ぎて行った。



 国防軍であり自衛隊は軍事組織だから、銃の所持は当然であるがこうも間近で見ることはなかった。まさに戦場の最前線にいる自覚がじわじわと来て息をのみ込んでしまう。



 スーツ以外の動きやすい服で来ることを条件に出されているため、羽熊の今の服装はトレーナーにジーンズとラフな格好である。迷彩服一色の中での普段着は、企業面接などで普段着と言われながらスーツしか着てこない中での私服とそんな変わらず、果たしてこれでよかったかと思ってしまった。



「すみません、千葉大学より来ました羽熊洋一と言います。隊員の方がここに来るように言われたのですが」



 指定されたテントの中は教授室とあまり変わらない様相だった。奥にこの基地の責任者であろう机が置かれ、そのわきに補佐の隊員の机が並んでいて資料が山積みとなっていた。奥の机には責任者であろう初老の自衛官と羽熊と同じく私服ばかりの男女が集まっている。時間はたっぷり十五分前で来たのだがもう多くが集まっていて、内心遅かったと歯をかみしめた。



「お待ちしてました、どうぞこちらに。あなたで最後です」



 同時に同じく近隣から来たであろう学者たちも羽熊を見ては軽く会釈をし、羽熊も答えて空席のパイプ椅子に腰かける。



「えー、ではまずはごあいさつを。私はここの指揮をしております穎原大蔵と言います。階級は陸将、皆さんに分かりやすく言えば中将ですね。よろしくお願いします」



 穎原陸将は頭を下げ、羽熊達も座ったまま頭を下げる。



「本日集まっていただいたのは知っての通り、この異地の調査にぜひとも皆さんのご協力を仰ぎたいからです。内閣は各省庁と連携して関東周辺の大学に打診し、その打診に応じて来ていただいたのが皆さんですが、この度の調査は可及的速やかに、且つ確度の高い調査結果をまとめなければならず、本来であればありえない民間人の起用を決定しました。もちろん任意であり一切強制をしませんし、調査をする場合は身の安全を我々国防軍が全力で保証いたします。みなさんは科学的調査のみに専念していただき、万が一原住民や大型動物と接触した場合は帰還を最優先に行動します」



 女性自衛官が羽熊達にファイルを手渡す。



「そのファイルには各省庁が求めています情報項目と、同行の確認書が同封しています。残念ながら情報不足であるため、現状の兵器で対応可能かすらわかっていません。そのため怪我をするかもしれないことへの同意を求めさせていただきます。最悪死亡することもあり得るため、少しでも不安があれば辞退をしていただいて結構です」



 つまりは国はこの情報が欲しいから集中的に集めさせ、その過程で死ぬ場合もあるからそれを分かったうえで参加の是非を決めてほしいのだ。


 今はとにかく早急な結果を必要とされ、例えハイリスクハイリターンでも民間人の起用はやむなしと政府は判断した。



 この確認書、よくスキューバやスカイダイビングで目にする『死傷事故が起ころうと当社は責任を負わない』的な文が一行となかった。実はこれらのような同意書には法的効力が一切ないのだ。同意書ではなく確認書と言うだけあって、死傷事故が起こる可能性があることが考えられる要素で書かれているだけで、署名欄がどこにもない。


 つまり、死傷事故が起きた起こることを覚悟の上で、起こった場合の責任は国が負うわけだ。



 ただ、全てではなくても国家の命の片りんを背負うのだから、自分の命なんて軽くも思える。


 異地調査第一陣として集まった十人の学者は、書類を目を通しても帰るそぶりを見せなかった。それはそうだ。ここに集まってきている時点で死傷への覚悟は出来ているのだから。



 資料にはテレビでも公表されていない原住民の情報もあり、テレビで公開されているよりさらに鮮明な画像があった。服装は水色と色違いの国防軍と似た防弾チョッキを来て、ヘルメットに小銃らしい武器まで持っていた。



『四月十二日早朝撮影。服装、武器から推測して軍人である可能性が高い』



 驚くべきごとにこの原住民には脚がない。正確には二本足ではなく一本足で、足のようなL字の形はしていなかった。


 顔立ちは人間でも地球人とは異なるのがよくわかる。



「穎原さん、質問いいですか?」


 一人の男性が手を挙げた。



「はい。えーと、東京大学の水島さんですね?」


「はい。病理学を専攻しています。異地調査への危険性は覚悟の上で来ていますが、その調査期間は日中だけですか? それとも数日間ずっと異地に出て?」


「二日を想定しています。一日進めるだけ進み、一泊をして一日かけて戻る予定です。その後安全が確保されればより遠距離を目指します」



 進んでは戻り、さらに進んでは戻りを繰り返して活路を見つける。完全に未知の世界では妥当なところだろう。大平原とはいえ、衛星のサポートがないのに大遠征は危険極まりない。



「航空機の調査はしないんですか? 空からの方が遠方を確認できると思うんですが」


「原住民は空を自在に飛べるので、万が一エンジンに巻き込まれては問題となります。法的な観点もあって調査は地上のみとしています」



 穎原の説明に水島は納得したのか手を下ろす。


「調査に関する機材はこちらでご用意しています。辞退の意思がなければさっそく一時間後、出発をしていただきます」



 国土転移から三日目。もう三日と考えられるが、未曾有の状況下ではいくらなんでも早すぎる行動だ。



 それを可能としたのが、改正した憲法に新設された『緊急事態』である。現在国会はほぼ停止状態だ。レヴィアン落下の混乱で国会議員の半数以上が逃げてしまったからで、通常の国会を展開することができないのだ。インフラは無事だったのだから帰ってくればいいと思ってもそうはいかず、帰るための公共機関の人員が戻っていないのもあってすぐには再開できなかった。それを見越してかは知らないが、改正した憲法には大災害などで国会が開けず、しかし可及的速やかな行動を必要とさせるため『緊急事態』の条文が新設された。



 端的に言えば閣議決定がそのまま法的拘束力を緊急事態と宣言している間だけ有効にすることだ。



 佐々木内閣は初会見のあとに緊急事態宣言を行い、国防軍による接続地域防衛と異地調査を命じた。すでに自衛隊から国防軍に昇格したこともあり、武器の扱いも自衛隊時代より緩和したこともあってその後の展開はご覧のとおり。防衛省や幕僚長らの迅速な指示のもと、三都県の陸自駐屯地から必要最小限の兵器や資材をこの地に集中させたわけだ。



 そして最終防衛線兼日本と異地の出入国窓口として機能させるため、施設作業中での調査開始。まさに電光石火の如き手際と言えよう。


 国防軍の活動でもこの接続地域は重要な意味を持つ。原住民の所在が確認されているので、現状異地は国外だ。その国外で軍が移動すればどんな理由であれ侵略以外にないが、政府は日本と異地が『陸続き』であることに着目し、異地もまた本州の一部とこじつけたのだ。そのため原住民から主権云々の抗議を受けるまでは、異地も解釈的日本国内と言うことにして軍の移動を合法的に可能にさせた。


 これは日本を含め地球世界全てで国境に関する法律がない荒業だ。



「あの、調査隊の方とあいさつしたいんですが、どちらにいますか?」


「異地に出発するための準備をしています。あと三十分ほどで終わると思いますので、それまで待っていてください」



 羽熊は自分に手渡された書類を細かく読んでいると、最後の書類に共に調査に出る陸自の隊員の名前が記載されているのとを見つけた。



 隊長は雨宮啓太一等陸尉を始め十一人の名前が記載されている。この十一人が羽熊の命を守り、共に未知の領域に足を踏み入れる。



 羽熊がこの十一人の自衛官たちに出来るのは指示を的確に守り、足手まといにならず自分に与えられた使命を全うするだけだ。


 しかし緊張はしてくるもので、紛らわそうとジーンズのポケットからタバコを出して火をつけようとする。



「すみませんが、テント内は禁煙なので喫煙は外でお願いできますか?」


「あ、はい、すみません。ではちょっと失礼します」



 ここで我慢する選択肢は出せず、羽熊は注目してくる他の学者たちに会釈をしながらテントの外へと出てタバコに火をつけた。



「他のみんなはタバコ吸わんのかね」



 いくら分野は違えどみな同じ博士号を持っている仲間であり同じ不安を抱えているのだから、あんな緊迫な場所ではなく場所を変えて話をしたかった。


 周囲では重機のエンジン音がけたたましく鳴り続け、海岸の舗装工事を続けている。国防軍の本分ともいえる戦車は今はここに持ってきただけでお休み中だ。



「軍隊って自己完結型って言うけどマジなんだな」



 羽熊は今まで自衛隊及び国防軍の世話になったことがない。数年ごとに襲う大災害も幸い免れていたため、国防軍の働きはテレビでしか見たことがなかった。



 軍隊はその特殊性から他の企業に依存せず、その組織のみで全てが出来るよう求められる。例えば病院が被災して稼働できずとも軍隊なら治療出来たり、土木企業が動けずとも軍隊なら資材の投入が出来たりと、他の支援を受けることなく全てが出来るようになっている。



 今の日本は経済が仮死状態であるため、民間がすれば数か月はかかるであろう土木工事も国防軍なら三日目でこれだけの工事がすんなりと出来るわけだ。



 雲の上、またはテレビの向こう側だった国防軍が目の前で活動しているのを見るは不思議な気分になる。ましてや共に行動するのだからなおさらだ。



「まあ軍隊と言っても人だし」



 軍隊とみればおっかなびっくりでもその根源は人だ。全体を見るのは大事でも一部を見なければ見えないところもある。



「まあ一つ一つ切り崩していけばいいわな」



 異世界と言う総体では畏怖しかない。だが一つずつ畏怖する理由を取り除いていけば残るは安心だ。それをこれから羽熊達学者群と国防軍は切り崩しにかかる。



 一瞬体が震える。気温が低いからか武者震いか、羽熊は分からなかった。



      *



 一時間後、まだ海岸である浜には高機動車と軽装甲機動車の一セットが十セット並べられ、各セットごとに十一人ずつ武装を施した自衛官らが整列していた。



「羽熊さんですね。私はあなたと共に異地の調査に向かいます、第七偵察隊隊長の雨宮一等陸尉と言います。羽熊さんの安全は我々が全力をもってお守りしますのでどうぞご安心なさってください」



 歳は羽熊と離れていないだろう。だがさすが国を守るために日々鍛錬を続けてきた男性だ。風格からしてまさに漢と言え、思わず羽熊は別にしなくてもいい敬礼をしてしまった。



「言語文学者の羽熊洋一と言います。足手まといにならないよう善処します」



 そこで雨宮は少し口元を緩めた。



「そうお堅くならずに。民間人の護衛も十分訓練を積んでいますので安心してください」


「はい。お願いします」


「それで羽熊さん、今回の偵察は原住民の言語と文化、文明の調査を目的としています。相手が我々と同じ武力ではなく対話を第一に考えているならいいのですが、映画のように初手から銃撃もありえます。他の方々と違い、我々は人類として初の異星人との接触を前提としているため、大きな危険を持っていることを覚悟なさってください。もちろん危険と分かればすぐに撤退しますが」


「承知しています。今はとにかく原住民との外交を行う必要がありますからね」



 そのためか、雨宮たちの部隊の車両はタイヤが計八個ついている装甲車が一台加わっている。



「ただこのただっぴろい平原のどこを捜すべきかですね」


「ここから一番近い山まで約千九百キロ。いくらなんでも補給なしで走破は不可能ですね。どこかに集落があればいいんですが」



 国防軍が制作した簡易地図は、この円形山脈の全てを網羅はしていない。高度数千メートルからようやく円形山脈であることが分かり、そこからの測量によって距離を割り出した。直径四千キロにもなる円形山脈の全てを知るのはいくらなんでも時間が足りず、出来ているのは特徴的な森や湖の位置、それぞれの距離までだった。



「最悪無駄骨になることも視野に入れて動くしかありません。情報では向こうは空を飛ぶ人種らしく、ひょっとしたら向こうから来る可能性もありますが」


「出たとこ勝負ですね」


「ええ。よし、全員乗車! これより異地の調査を開始する!」


「羽熊さんはあの高機動車に乗車ください」



 同じ偵察隊の隊員に乗る車両を教えてもらい、その後部座席に荷物ごと乗り込む。



「羽熊さん、結構揺れますので酔ったら言ってください。出発!」



 他の偵察隊も出発していき、何番目かの順で第七偵察隊も他の隊とは異なる方向へと走り出した。



「おはっ、本当に揺れる」



 舗装されていない平原を走るのだから揺れないはずがない。シートベルトをしていなければ投げ出されるほどだ。



「こ、これは酔いそうででですね」


「しっかり掴まっていてください。大型動物たちの動きによっては急ハンドルもありますので」



 さすがは自衛官。ほんの少し腰を浮かすのも困難な揺れの中、困惑するそぶりもなく窓の外を眺め周囲を警戒している。後方を走る軽装甲機動車も同じく屋根に備え付けられた銃座に隊員の姿が見えた。


 さらに後方では接続地域がゆっくりと遠ざかっていく。陸続きだから錯覚してしまうが、いま三台の車両は海外を移動しているのだ。



「羽熊さん、自分は西野一等陸曹で、推測でもいいので聞きたいのですが、異地の原住民はこれだけの平原を持っているのにどうして都市を築かないんでしょうか」



「資料を見る限り原住民は何らかの理由で空を飛びます。そそうなるとわざわざ地上に降りる必要がなく、木々の上で生活をしていいる可能性が考えられますね。けどど銃らしき武器を所持するくらいの文明を持つなら、どうして自分たちが飛んでいるのか解明しして、それを無機質に転用している可能性ももあります。ももしくは円形山脈って形から国立公園にしている可能性もあるのでで、いいままは何とも」



「……都市が宙に浮くと?」


「魔法も突き詰めれば科学ですからね。空を飛ぶメカニズムが分かればありえなくはないかと」



 さすがに生物学や航空力学は専門外であるため表面的な見解しか話せない。だが空に生活圏を置く人種の文化面の推測なら、それでも専門外だが羽熊の分野だ。



 恐らくは鳥類と同じく、二次元の生活では生存競争に勝てないと本能が悟り、鳥類のような空力学とは全く違う力学を手にするよう進化をしたのだろう。



 窓の外には巨大生物の足が見え、窓から見上げても大きすぎて視界に収まりきらない。


 これだけ巨大な生物との共生は困難だ。集落を築いても踏みつぶされてしまう。安定的な居住を得るなら陸上動物が手を出せない空となり、自らがそれを得ていれば技術として再現するのは必然と言える。



「可能性の一つつですが、空に浮かぶ軍艦があっても不思議ではないでしょうね」


「それってあの宇宙戦艦のような?」


「大マゼラン銀河まで行けるかは分かりませんが」



 国土転移と言うSFと空飛ぶ人種のファンタジー。ひょっとしたら宇宙戦艦があるやもしれず、あれば日本はいいなりに成り下がる。



「けど結局は推測です。実際に会って話さないと分かりませんね」



 千の憶測より一つの対話だ。


 酔った。



      *



「ここが観測にあった湖か」



 三時間くらい走ったところで大型動物の屯する湖が見えてきた。



「よし、一時休憩する。大型動物の動きに注意し停車」



 舗装されていればその三倍は進めたものを、舗装されてない平原では車体への負担から速度が出せず、まだ距離にして百三十キロ程度しか来ていなかった。



「ここまで一直線で来たが原住民も集落もなしと」


「まあたった百三十キロですからね。空から見える範囲で面影がなかったんですから無理ないですよ」


「うえー、気持ち悪っ」


「羽熊さんもう止まりましたよ」


「みなさん、よく平気ですね」



 三時間一切落ち着くことなく揺れ続ければ、乗り物酔いしない人も大抵は酔ってしまう。船乗りなら平気でも車がせいぜいの羽熊は見事によってしまった。



 リバースした回数も二ケタに迫り、食堂は胃液で刺激され口から漂う臭いも胃液のものだ。胃液を吐く際のコツとして吐く前に水を飲めば希釈されて平気らしいが、水は貴重であるため我慢をするしかなく、ただ我慢して三時間を過ごした。


 高機動車からはい出るように出た羽熊は、そのまま仰向けとなって透き通った青空を見上げる。



「なんか、偵察よりピクニックって感じがするな。うっぷ」



 羽熊の目的は街や原住民と接触すること。植物や動物があろうと意味がなく、接触できなければただ燃料のを無駄にするだけだ。



「まあまあ、安全を知るのも任務の一つですから。それに成果が上がらなくても責任はありませんし」



 国土転移からたった三日目で危険な土地を徘徊して、失敗した責任を取れとは無責任にもほどがある。ましてや昨日突然行くよう命令を受けたのだからなおさらだ。



「こちら異地偵察第七隊、定時連絡。接続地域より東に進み百三十キロ地点にて、観測されていた湖を確認。当隊目的である原住民及び集落の接触には至っていません。送れ」



『了解。引き続き警戒を厳とし、安全を第一に調査に当たれ。羽熊博士は無事か? 送れ』



「起伏の激しい平原を走行しているためひどい乗り物酔いに陥っているが、意識ははっきりしている。二時間湖に留まり、回復を待って移動する。終わり」



『了解。未確認情報だが空自より提供アリ。レーダーで駆逐艦級、巡視船級の機影を観測し現在精査中。観測場所は北海道沖であるが十分警戒されたし。終わり』



 高機動車で全く平然としている雨宮は無線で本土と通信し、あまり聞きたくない言葉が聞こえた。



「隊長、いま駆逐艦級と巡視船級の機影って言いました?」



 駆逐艦級は百メートルから二百メートル。巡視船級は五十メートルから百メートルはある。



「ひょっとしたら羽熊さんが言った可能性が当たったかもしれんな」


「なんか映画の中に迷い込んだ気分すね」


「事実は小説より奇なりとは言うが、現実がフィクションを越えると変な気分になるな」


「いやですよ。宇宙戦艦が実在してショックカノンや波動砲撃たれたら」


「新旧どちらとも波動砲を撃ったらこの星自体崩壊するだろ」



 しかし機影で駆逐艦級と言った以上、空に百メートルから二百メートル級の物体があるということだ。巨大飛行船ならよいがその可能性は低い。



「……この水って飲み水に出来るんですかね」



 羽熊はまだ気分が最悪な中、なんとか上半身を起こして湖の方を見る。



「水質検査をしないことには何とも。野生動物の水飲み場にもなっているので雑菌はありそうですね。未知の細菌がいれば最悪スペイン風邪級の病気が蔓延する可能性もあります」



 こうして呼吸し、異地の世界に足を踏み入れてはいるが、これ自体不用意で危険極まりないことである。


 羽熊達地球人はこの地に生息する病原菌に対して一切の免疫を持っていない。原住民にとって軽い風邪を起こす細菌も、地球人に対しては不治の病級になりうるのだ。その逆もしかりで互いにデメリットがあり、最悪双方で細菌同士の戦争が起こる可能性もある。



 例えば今でこそ薬や免疫があるインフルエンザも、初登場した際は二千万人近い死者を出した。それを異地産の細菌で起こすと考えればわかりやすいだろう。



「水はサンプルを取るだけにしろ。絶対に飲むんじゃないぞ」


「うぷ……昨日までなかった原住民の乗り物が出てきたってことは、向こうもこちらのことを本格的に調べようと来てるんでしょうね」



 昨日の早朝に海上自衛隊が接触した原住民はおそらく軍隊の斥候だろう。その情報を本国に送り、規模を大きくして送り込んできた。



「地球レベルの文明があれば衛星があるはずですからね。おそらくこちらより向こうの方が詳しく日本をとらえてると見ていい。それでも大隊で来ないのは、日本の軍事力の全容が分からないからでしょう」


「一応日本の防衛力って減ってないって話ですしね」



 レヴィアン迎撃で三ケタ近い迎撃ミサイルを発射しても、それは消費をしただけで損害ではいない。数字だけ見て人を見ないのは愚かだが、希望を語れば潤沢な武器を今の日本は保持している。



「だからこそ原住民との接触は必要なんですがね。こうもなにもないと……」


「隊長、意見具申。装備品の中に偵察ドローンがありますが、それを飛ばして周囲を探してみてはどうですか?」


「そうだな。よし、飛ばせ」


「へぇ、ドローンなんて配備してるんですか」


「まだドローンて名前が普及する前から防衛省が開発していた球体型ドローンです。何年か前に秋葉で十一万円で作れたって話題になったと思いますが」



「そう言えばありましたね。骨組みの球体で落ちても転がるだけですぐに飛べるんでしたっけ」


「それを発展させたものです。正式採用されているため具体的なスペックは言えませんが、市販されているものよりははるかに高性能です」



 一人の隊員がタイヤが八個付いた、96装輪隣装甲車からバスケットボール大の骨組みの機械を取り出す。偵察用にドローンが普及する以前から開発していた軍用ドローンだ。



 コントローラーは米軍が無人機で使っているような既存のゲーム機の流用ではなく、液晶画面搭載の長方形の機械を使うらしい。スイッチを入れると大抵あるロゴ等は無視してすぐさまドローンが映す映像が映し出された。



「すごい鮮明に映るんですね。ノイズブロックとか全然見えない」



 テレビでよくよく映し出される映像はノイズブロック、羽熊の年齢で言えば残像が多く見れたものではないのだが、このドローンはよほどの高性能カメラを積んでいるのだろう。まるでフルハイビジョン映像を見ているように隊員たちの姿が映し出されていた。



「テレビで公開されているのはワザと画質を落としてるんです。どちらかと言うと映画で映してる方が実は正しかったりします」



 政治的、軍事的理由があるのだろう。一般市民の羽熊には畑違いだからこれ以上の追及はせず、そういうものかと割り切って着々と準備をする隊員たちを見物する。



「よし、飛ばせ」


「了解、飛ばします」



 復唱した直後、骨組みの内部にあるプロペラが音もなく回り始めるとあっという間に空へと消えていった。



「はやっ。しかも音もしないんだ」


「偵察用である以上音は出さないよう設計しているんです。モーター音も風切り音も三十デシベルなので夜間でもまず分かりません」



 三十デシベルとは郊外の夜間で聞こえるような音である。つまりすぐ近くで飛んでいても風のささやき程度しか聞こえないため気づくことがない。


 さすが軍用と言うべきかテレビで見る民間用とは全くの別種だ。



 隊員の持つコントローラーに目を向けると、湖が一望できる高さにまでなっていて湖岸に屯する大型動物たちが何十頭と見えた。湖の中央には小島が見え、湖にも巨大生物が見えるのか五十メートル級と同じ大きさの影が水中で動いているのが分かる。



「琵琶湖の倍はありそうですね。それに水深も結構あります」



 五十メートル級の水棲生物がいるのだ。数百頭が生活出来るだけの体積がなければ成立しない。



「調べれば調べるほどにスケールのでかい星だな」


「ですが、これだけの巨大生物がいるのによく人種が繁栄しましたね。地球で言えば恐竜時代で人類が繁栄したようなもんでしょ?」


「だからこそ空に生活圏を移したんでしょう」



 その上で文明の発展だ。発展してなお空を飛んだ理由に手を出さないと言うのは、自然保護か、はたまた大地への忌避感を強く抱いているかだろう。


 天と地、月とスッポンとあるように、天と言う高位的な生活圏を持つ以上、地と言う低位的を軽蔑する性格を持つのは不思議ではない。高度な知能と精神を持てば誰でも天を憧れ地を嫌悪するものだ。



 それはつまり――。



「向こうも専守防衛の軍隊であることを祈るしかないか」


「羽熊さん、なんです突然」


「いえ、ちょっと可能性の一つを考えて……」


「どんな可能性ですか?」


「向こうはまだ地に立つ人種を知らないのでどうなるのか分かりませんが、ひょっとしたら大地に立つ我々を劣等種として攻撃的になる可能性があるかと」



 例えば地位。世界的企業のCEOとホームレスを見ればまぎれもなく天と地の差がある。CEOは果たしてホームレスを好意的に見るだろうか。同等の立場として接するだろうか。答えは否。少数として好意的に見る人はいても、そのほとんどはゴミとして見るだろう。それを生活圏での天と地としても同じ考えが及ぶ。



 なにせ地球人類も空にあこがれ航空機を開発し、天を目指して飛び、太陽の熱でやられ落ちた神話もある。高ければ偉く、低ければ貶される。そしてこの世界に天の人種、地の人種がいればどうだ。解釈次第では地球人の存在が自分らへの侮辱に当たるとして攻撃してくる可能性も十分にある。



「でもこれはあくまで生活圏的から見た可能性なので」


「いえ、我々はそこまで考えていませんでしたので十分参考になります」


「それでも隊長、こちらからは……」


「我々は正式な軍になっても自衛隊としての根幹は崩してはならない。こちらからは絶対に先制攻撃はナシだ。もし羽熊博士が言ったように原住民が我々を軽蔑して敵意を示しても耐えろ。我々は今までそうして来た」


「……隊長、ドローンが動かなくなりました」



 ドローンを操作していた隊員が報告をした瞬間、偵察隊員全員が周囲に小銃を構える。



「動かないと言うのはどういう風にだ」


「飛んではいますが移動が出来なくなりました。まるで掴まれて固定されたみたいです」



 雨宮隊長は双眼鏡を取り出して空を見上げる。羽熊も酔いが吹っ飛んで空を見るが、見えるのは真っ青な空とドローンであろう小さな点だ。



「カメラの旋回とかは出来ないんですか?」


「ドローン自体が旋回するため固定なんです。各種あるカメラも同方向に向いていて」


「おそらく原住民で空色の迷彩服を着ているんだろ。ドローンのすぐそばで不自然な影が見える」



 原住民と会うために異地に足を踏み入れたとはいえ、いざ遭遇すると不安と恐怖で足が震えそうだと言うのに、隊員たちは気丈にも銃を構え周囲を警戒している。国防軍とはいえ人だと言うのに訓練次第でこうも違う。



「ドローンの高度が下がり始めました。こちらからは操作していません」


「いいか何があっても発砲するな。俺たちは侵略しに来たんじゃないんだ」


「雨宮さん、は、話は私がしますので銃口は下を向けていてください。でも撃たれた後のことは……お任せします」


「でも博士、異地語はまだ……」


「言葉が通じずとも意思の疎通は出来ます。まずは敵意がないことを分かってもらえるのが大事ですから」



 お互いに言葉が分からないのに会話をするのは不可能だ。この場合、まずはお互いに知り合いたいと分かることが大事で、その前提として敵意がないことを伝える必要がある。



 それは言葉ではなく表情とジェスチャーで事足りる。


 何事も人を知るのは感情なのだ。言葉は感情の後にやってくる。


 ドローンの黒い点はみるみる大きくなり、それを掴む人型の影がより見えるようになった。


 緊張から羽熊の額からは汗が大量に流れ出て、ドローンと人型は地面から三メートルくらいのところで止まる。



 地球人よりも背丈があって目算で二メートル以上。軍人であるのが一目でわかる小銃に青色の迷彩柄の服。写真で分かっていたように空に生活圏を置いたことで退化、または進化した一本脚がよく目立つ。


 ヘルメットを被っても分かる第一原住民は女性だ。目元からでも女性と分かるし、なにより黄緑色に発光する長髪を見れば誰でも判別出来た。



 羽熊はとにかく敵意がないことを見せるため、雨宮たち軍人を下がらせ、両手を上げて原住民の前へと一歩出る。


 原住民もさすがに三メートルの高さと軽装、武器を所持していないのをみて後退するそぶりは見せない。


 と、さらに空から十人近い原住民が落ちて急停止した。それにより風が軽く舞う。



「初めまして。日本、から、来ました。羽熊洋一、と、いいます」



 羽熊は敢えて片言のようなしゃべり方で日本語を話した。文法が分からないのだ。まずは名称を知ってもらうよう分かりやすく区切ってあいさつをする。



「日本、は、あなた達に、敵意、ない」



 さらに腕でジェスチャーをしてより分かりやすく意思を送る。高度な知能を有するのであれば羽熊の意図に気づくはずだ。


 ドローンを持つ女性兵士は怪訝な目をしながら羽熊のことを見て、すぐ背後で同じく小銃らしい武器を持つ兵士たちに目くばせしてしゃべりだした。


 発する言葉は断片的にでも受信に成功したラジオと同じ言語だ。



「イルリハラン、ウリ、ミルアギサァリアン、ルィル・ビ・ティレナー、アヌア」



 意図に気づいてくれたようだ。女性兵士も同じく主語、名称、接続詞と区切って話し始めてくれた。ここで羽熊は、自分を指して「はぐま」と分かりやすく発音する。



「ハグマ?」



 頷いて肯定すると、女性兵士も自分を指して「ルィル」と返す。


 これでとりあえず彼女の名前がルィルであることが分かった。



「日本、敵意、ない。お話、したい」



 続いて羽熊はしゃべりながら国防軍の武器を指さして否定し、手で口パクをして対話を要求する。



「イルリハラン、ウリ、ハ、ニホン、コ、マルアンナ、シアイ」



 日本の言葉に羽熊は内心喜んだ。日本が国の名称か羽熊達の呼称と理解してくれたのだ。そしてこちらも彼女らの組織名が分かった。



「イルリハラン、日本、仲良く、したい」



 二度の呼称でイルリハランと言う名前が組織名か国の名前かの二択に迫れた。羽熊は日本を国として印象付けるため、イルリハランで右手を、日本で左手を見せて優しく手をつながせた。


 他者から見れば幼稚なやり取りに見えるかもしれないが、一切言葉が通じない相手では言葉より目に見えるしぐさの方が大事なのだ。これは現代のテレビでもリアクションとして活かされているし、日常会話でも無意識に全世界で行われている。


 人間的知性があれば分かり合えるのだ。



「雨宮さん、武器を完全にしまってください。これで敵意がないことは伝わるはずです」


「しかし……」


「大丈夫、攻撃的ではありませんよ」



 攻撃的なら日本語を理解しようとせず攻撃してくるからだ。理解したうえで攻撃をするとしても、逆を言えば理解するまでは攻撃をしないため時間の猶予は生まれる。


 雨宮は安全上小銃を下に向けるだけでなく手まで外すのは状況から見て避けるべきだが、この対応次第で日本の未来を考えると国防軍としてではなく自衛隊として動くべきと、隊員全員に指で構えを解くよう指示をした。


 するとルィルも後方の隊員たちに話をすると、同じように構えを解いた。



 羽熊は冷静を維持したが、内心では深い安堵の息を吐いた。

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