第2話 気病

 この街の何を気に入ったのかはわからないが、あと二週間ほど滞在するとネコは言った。大きな商店街はあるが街は山に囲まれており一本長い河川があるぐらいで、とりわけ外観が良いわけではない。

 そんな街をネコは毎日練り歩いていた。ネコは街のあちこちの場所へと出向いたと思えば同じ場所へ何度も出向いたりとせわしない様子なのだが、いつも何をするわけでもなく街の雰囲気をうかがっているだけだった。

 どうしてそんなことをしているんだといくら尋ねてもネコは楽しいから、おもしろいからと答えるだけだった。はぐらかされているようで私は少し苛立ちを覚えたが、街中を歩いているネコの顔は朗らかで、本気でそんな理由で散策しているんじゃないかとさえ思えてしまう。

 おかしなやつだと思った。出会ってからもう何度心の中でそう思ったのだろう。おそらくネコには私たちの街にはない考え方を持っているのだろう。まったく共感することができないのはそのためなんだろうと勝手に自分の中で決めつけた。

 ただネコとともに散策していてうちに自分の中で妙な感情が芽生え始めていることに気づいた。それがなんであるのかはこの時の私は気づいていなかった。

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猫のいない街 甘蜘蛛 @HLofCAFL6741

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