第10話 短編なので

「企画のプレゼンまでの時間を考えると、ここで終わりだな。」

 新作の企画案は短編1万字以内なので、ここで終わりになる。

「見切り発車だ。」

「そう、見切り発車だ。」

「よくこれで10万字作品ができるな?」

「現代ドラマの青春モノで映画化確定!」

「コネがあればな。」

 ない。

「大人って嫌だ。作品の選定も嫌だけど、パクリも嫌。」

「他者も嫌だけど、自分も嫌。なぜか? こんなグダグダ系の企画会議で簡単に10万字作品ができてしまう。」

「それ自慢だよ。」

「自慢だよ。だって誰も褒めてくれないんだもの。」

「あれだね。自分を褒めてあげたいってやつだね。」

「自画自賛は正義! そうしないと自律神経がおかしくなっちゃう。」

 その通り。

「もう書きたくて仕方がないんだね?」

「その通り。ムズムズしてきた。」

「いいね。20万字を書き終えて燃え尽きていたけど、やる気が戻ってきた。」

「一気に書けそうな気がする。」

「1月末までに書けばいいのよ。」

「そだね。」

「でも1話1000字って、大変じゃない?」

「大変だけど、それぐらいの展開は思いつかないと内容が面白くない。」

「既存の小説が売れないのは、説明が長すぎて話に展開がない。」

「それでも有名人や人気作家は許されて売れるんだろうけどね。」

「結局、アニメや実写ドラマ化されてから見ればいい、小説なんか読まないという人が多い。」

「小説は、コアなファンが集める、コレクションのために買うだけだからね。」

「出版不況は怖いね。」 

「難しいね。良い作品が売れるんじゃなくて、世に出た作品が、芸能人人気の作品が売れやすいのは事実だからね。」

「頑張るしかない!」

「おお!」

「目野下熊子はどこ行った?」

「zzz。」

「疲れ切って、寝ています。」

 短編なので1万字以内で、終わる。

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目の下に熊を飼う女 渋谷かな @yahoogle

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