第43話 新年のご挨拶
一旦床につき、翌朝改めて食卓にそろう一行。
食卓には鷹来家のシンプルな白味噌雑煮が並ぶ。
白味噌、丸餅、鰹節、以上。
キツネの父が裕福ではなかったので、餅以外の具がない雑煮を食べて育った。
だが人並みの暮らしになっても餅以外の具材が入ると白味噌の良さが消えてしまう、とあえてシンプルなこの組み合わせが鷹来家の定番となった。
キツネの母は東京の山奥の出身だが、この味をいたく気に入っていたそうだ。
「関東では、というか南雲家ではすまし汁に四角い焼き餅を入れたものですね」
『それはそれで美味しそうやな』
「一度ぜひ、東京にお越しください、ごちそうさせていただきます! 」
「ウチはキツネのとことほとんど一緒やな」
「まぁ、いただこうや」
いただきます、と手を合わせて、雑煮を食べる。
「甘い白味噌と、鰹節の香り、柔らかく茹でられた餅、これは美味しいです! 」
「おかわりあるさかい、ようさん食べてな」
「キツネ、ウチもおかわり欲しい」
『そういえば3が日は小町ちゃんのお店お休みやから前もって余分に用意してもろうて、おおきにな』
「ホンマは揚げたて食べたいと思うんやけど、堪忍な」
『冷めても、山上豆腐のお揚げさんは美味しいさかい』
「そういうてもらえたら嬉しいわ」
ダクも小さい器で雑煮を食べる。
『ウチもおかわり!』
「料理作ってるもんから言わせてもろたら、おかわり、言われることほどうれしいことはないな」
全員がおかわりをしてお腹も落ち着いたところで、キツネ亭から五条通を隔てた若宮八幡宮へ参拝。その流れで京阪の清水五条から伏見稲荷まで電車で移動、大変な人混みの中、参拝を終えて清水五条からキツネ亭に戻る。
慶子はこのまま京都駅へ向かい、親元に帰るという。
小町も帰宅、賑やかな年越しはこれにて終了。
台所の片付けも終わり、改めてキツネとダクが向かい合う。
「改めて、おめでとうさんです」
『おめでとうさんです』
「今年も一年、平穏無事で」
『お互いに機嫌よう、過ごせますように』
よろしゅうおたのもうします、と互いに深々と頭を下げる。
「なんか、いつも思うんやけど、年末の忙しない空気から、晴れやかな雰囲気にガラッと変わるんよなぁ、元日って」
『不思議なもんやな、日付が変わっただけのはずやのに』
「今年はどんなことに巻き込まれるんやろうなぁ」
『ゆうとくけど、ウチのせいや無いからな』
「分かってるって。でも、色んなことして、色んな経験積んで、色んな事ができるように、なりたいなぁ」
『アンタやったら大丈夫や、うん』
しみじみと平和な元日を噛みしめる二人。
どんな一年になるか、それはまさに、神のみぞ知る、である。
シュレン〜京都、キツネとダクのちょっと不思議な冒険譚〜 @miyapc
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