第2話 孤高

スポーツってのは運命だ

実力の世界ってのは最低ラインの話で

実力があったところで評価されるわけではない


野球ってのはもっと難しい

だって木の棒を振ってその球が守備の届かないところに行けばヒットなんだ

そんなの運みたいなものだろう


俺は野球が好きっていうか

練習が好きっていうか

そういうのではなかった


とびぬけてうまいわけでもなく

何か特技があるわけでもない


だけどずっとレギュラーだった


記録を持っているわけでもない

人間性がとびぬけているわけでもない


だけど俺がレギュラーだった


練習は毎日やった

小学校も中学校も高校もプロになっても

練習は毎日やった

だってやらないとなんだか落ち着かなくて

体の調子も悪いんだ


レギュラーといっても常にギリギリ

外野で少しもいいほうだと思うけどとびぬけていいほうとは思っていない

育成枠からのプロ入りだし

やっぱり下位打線

でもやっぱりレギュラーだった

そりゃレギュラーのほうが嬉しい

だって試合中暇だし他にやりたいことがない

別に野球がやりたかったわけではなかったけど

ずっとやっていた


少し不思議だと思うこともある

本当はレギュラーから一人分はずれている時でも

怪我やスキャンダルで一人レギュラーがかけた

そんな時はいるのは決まって俺だった


今、俺は国の代表として9番ライトの指名を受けた

予定もないしせっかくなので受けた


試合開始前にどっかの記者のインタビューに答えた

聞かれたこと全部に答えた

今まで書いてきたことも全部言った


その内容を代表監督に記者が伝えた時監督は言った


「そういうのを孤高っていうんだよ」


世界戦の後に何十年もたってから

野球の殿堂入りの会でまたその話になった時

その時も監督は言っていた


「おれもお前と同じ感覚だよ。生きることと野球がイコールである奴はどうやら珍しいらしい」


そういって笑っていた。

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9番ライト @dantuzidou

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