第2話出会い
初めて会ったのはいつの頃だったのだろう。
生まれた頃から一緒だったのか。あるいは小学生のころか。
気づいたらそこにいた。
でも初めて会った時にことはよく覚えている。
私は生まれつき体が悪く、幼いころは頻繫に病院に通っていた。
そこはこの街で一番大きい病院だったため庭のような場所があり、病院の息詰まるような空気が嫌いだった私は親の目を盗んでよく抜け出して行っていた。何もせずに緑を眺めているのが好きなのだ。
今日も抜け出してぼんやりと眺めていた。どれくらいそうしていただろう。
だぶん、そんなに長くはない。ふと見ると誰か立っている。
男の子だろうか、女の子だろうか。どちらか外見だけでは判断できなかった。
しかし、誰かに似ていた。誰かはわからないけど。
だからなのだろう。
初めて見たのにずっと見てきたような「初めまして」とは言えない距離感だった
だからきっとこの言葉が出たのかもしれない
「会いたかった。」
…?私は一体何を言ってるんだ?
本当はもっと違う言葉を言うはずだった。しかし、出てきたのはこの言葉だ。
君はそんな風に戸惑ってる私を見て不思議そうに笑う。
『久しぶり。君は僕のことを知ってる?』
「何も知らないよ。……ねぇ、あなたの名前は?名前はなんていうの?」
『僕の名前?君はもう知ってるはずだよ。』
知ってる?なぜ?そう思う。しかし幼い心のどこか隅の方で声がする。
だから私はその声を聴いてみることにした。
「……もしかして、尚?」
『当たり。』
「同じ名前なんだね。」
「そうだよ、君は?」
「私も直っていうの。」
『そうだよ、同じ名前だ。漢字が違うだけで。それ以外全く同じだ。』
「どこからきたの?家族はどこにいるの?」
『ずっと君の側にいたよ。家族はいない。一人だ。……いや、違うな。二人だ。』
「ん?言ってることがよくわからないよ。どういうこ……」
尚の言っていることが私にはよくわからなかった。
だから聞こうとした。
ここにいた!直、帰るよ!
その時、母の呼ぶ声がそれを遮った。
しかし私は無視して聞こうとする。
「ねぇ…」
『そろそろ時間だ。直また会おうね。』
母に肩を叩かれる。
振り向くと母は私を不審な目でみてきた。
「お母さん、どうしたの?」
「どうしたはこっちのセリフよ。一人で何しゃべってるの」
「ひとり?だってほらそこに男の子がいるじゃん。尚っていうんだよ。」
「誰もいないわよ。尚?誰のこと言ってるの?」
「だから男の子のことだって。本当に見てないの?」
「見てないから。あっち見てみなさいよ。」
私は振り返ってみる。
そこには誰もいなかった。思わず二度見してしまう。幻でも見ていたのだろうか。
結局母には疲れていたことにされてしまった。全然疲れてないのに。
最初の出会いはこんな感じ。
こうして不思議な雰囲気をもつ君を私は出会った。
今思えばなんとも意味深な出会いをしたなと思う。
雨の夜に君を想う かくたに @kakutani
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