#56 キミたちは夜明けを駆ける
黒い鉄の棺桶の機体、カミハの天井の装甲から立ち上がって、外の空気を感じながらサイヲは正面を見た。
正面には様々な服を着た少年少女達が、右と左に列をなして整然と並んでいる。
「サング・エリー……だよな?そして回りにいるのは残りのサングエリー
最奥に立つ白いドレスを着た少女がサイヲを見ながら黙ったままでいる。
少女の両側から右と左で対面に整列するる部下のサング・エリー徒衆団たちもただ黙って膝を突いていた。
「なんだよ。わざわざ会いに来たんだろ?オレに何か言う事があったんじゃないのか?」
しかしサング・エリーや他のサング・エリー徒衆団たちは答えない。
「サイヲ、
「……時間稼ぎのつもりか?」
サイヲがいくら見ても、荒野の風を受ける白ドレスの少女、サング・エリーとサング・エリー徒集団は沈黙を保っている。
「そっちが話をする気がないなら。オレもお前らに構う必要はない。そうだろ?」
「私たちの下に戻りください」
「断る。オレが直々にお前たちに会いに行く」
「キサマッ」
「黙れ」
サイヲの視圧で、声を上げたサング・エリー徒衆団の一人の目の前を爆ぜさせると砂煙を上がった。
「お前たちに選択権はない。オレの女、サング・エリーよ。そのままでいいからお前の機体ガンフラナに伝えろ。お前は永遠に不確定性原理に縛られるんだ、ってなッ。……そして、今からお前に会いに行くとも」
「私たちがそれを許すと思いますか?」
「お前たちが許すかどうかの問題じゃない。オレとコイツが会いに行くと言うだけの話だ」
「サイヲ、残り時間30」
「ここでサング・エリーが出たおかげで
行くぞカミハ。夜を駆け抜ける」
「了解、サイヲ。15で発進します」
「させると思うかッ」
白いドレスの少女の前で膝まづいている十人に満たないサング・エリー徒衆団たちが立ち上がると、彼らが攻撃行動に移る前に、鉄の棺桶、黒い機体のカミハの搭乗席に座ったサイヲはすかさず機体を発進させると、白いドレスの少女のサング・エリーの目の前を堂々と走り横切って砂煙を上げて、夜の地平の彼方へと加速していった。
「背後の三機、距離が離れていきます」
「遅いな。このまま進むぞ。カミハ。
「了解。加速します」
鉄の棺桶アイアンコフィンのカミハに搭載されているエネルギーユニットをフル稼働させて、隠れた変数理論を宿す黒い機体は、不確定性原理が支配する闇を目指した。
いつか来る、君たちが夜明けを駆ける為に。
鉄の棺桶 アイアンコフィン 挫刹 @wie
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