第5話カミラ王女視点

 眼が覚めると、化物に抱かれていました。

 反射的に悲鳴をあげそうになりましたが、必死で飲み込みました。

 私がそのような事をする訳にはいきません。

 ジョン叔父とルイス叔父は、私を見て悲鳴など上げた事はありません。

 そんな私が、私とそっくりの者を見て、悲鳴を上げるなど、断じて許されないのです!


 周りを見ると、私を生贄にした父や義母が倒れていました。

 生贄にされる私をあざ笑た、半妹もたおれています。

 父や義母に味方した者たちが、皆倒れています。

 よく見ると、苦悶の表情を受けて死んでいます。

 いったいどうした事でしょう?


「私は神様に言われてこの世界に来た勇者だ。

 だが召喚されたにはいいが、召喚した者たちが邪悪だった。

 だから皆殺しにして貴女を蘇らせたのだ」


 私と同じように醜い者が、この世界を護るために神様から遣わされた勇者様とは、とても驚きでした。

 私は勇者様に命じられた通りにしました。

 生き残っていた二人の叔父の部下に命じて、叔父達に事の真相を知らせました。

 同時に勇者様がおられるので、心配しなくても大丈夫だと伝えました。


 私と勇者様は醜すぎるので、普通の神経の者は直視できません。

 そこで勇者様の提案を受けて、簾を天井から垂らし、その奥に私と勇者様が陣取り、臣下に命令を下しました。

 そんな事でどうにかなるとは思ってもいませんでしたが、何とかなりました。

 勇者様が父と義母に味方する者を、皆殺しにしてくださったからでしょう。


「人の美醜は世界と時代で違っているんだよ。

 僕から見れば、カミラは絶世の美女なんだ。

 カミラの為なら、国を滅ぼしても構わないと思うくらいの美女なんだよ。

 表面の美醜など、皮一枚剥げば分からなくなるんだよ。

 まあ、俺もそれに惑わされてしまうから、カミラを一目見て味方をしたんだけどね」


 勇者様の言葉は、本当にうれしかったです。

 最初は勇者様のお姿を見る度に、怖気立つのを抑えられませんでした。

 ジョン叔父とルイス叔父が、こんな気持ちを抑えて私を可愛がってくれていたと思うと、今更ながら涙が出るほどうれしくなります。

 父が私を嫌った気持ちも分かってしまいました。


 このような気持ちを表に出すことなく、勇者様の妻の役目が務められるのか、正直心配でしたが、勇者様が変身の魔法や心の感覚を変える魔法を使って下さったので、共にベットに入る事ができました。

 ただどうしても心配なことがありました。

 私と勇者様の間に産まれる子供の事です。


 果たしてどのような容姿の子供が産まれるのでしょう?

 この世界で怪物と言われる、私や勇者様に似た子が産まれてしまうのでしょうか?

 私と同じ不幸をその子に味回せてしまうのでしょうか? 

 そんな私に勇者様は言って下さいました。


「神様には大きな貸しがあるから、この世界の美男子や美人にしてもらうよ。

 それに、どうしても子供を産まないといけない訳じゃないよ。

 後継者はジョンの子供にしてもいいんだ。

 無理に子供を産むことはないよ」


 私は幸せです。

 

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婚約破棄された王太女は召喚勇者の生贄にされる。 克全 @dokatu

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