第4話勇者視点
腹立たしい話だが、異世界転移を認めるしかなかった。
元の世界で非業の死を遂げたのは、どうしようもないと言うのだ。
神様同士の取り決めで、元の世界のルールは厳格なのだそうだ。
それはそうだろう。
元の世界で死者の蘇りなど聞いた事もない。
だが俺の死後を決める担当になった神様が、自分占有の世界に転移させてくれると勧誘したのだ。
どうも胡散臭かったんで、最初は断った。
上手い話には裏があるのが当然だ。
前世で色々あったし、定番の小説にもそう書いてあった。
だから昔読んだ小説と同じように、命一杯の要求をしたが、全て飲みやがった。
どんだけ酷い世界なんだと内心思ったが、前世の記憶を持って生き返られると言うのは、抗い難い誘惑だった。
だから異世界転移を認めた。
若返りはもちろん、異世界最強の能力を要求した。
命も一つではなく、万の命を要求したが、これだけは無理だった。
その代わり、蘇生術を筆頭にありとあらゆる魔法を手に入れた。
読んだことのある小説の全ての魔法と、自動蘇生魔法の術式を身体に刻み込んでもらった。
それと、まあ、なんだ。
容姿とアレも改良してもらった。
下膨れと猫のような額、縮れた黒髪に黒黄色の肌、弟より低い身長。
全てがコンプレックスだった。
だから、金髪碧眼に百九十センチメートルで筋骨隆々の、若い十八歳の身体を要求したのだ。
前世のコンプレックスを解消した俺は、意気揚々と異世界召喚に応じた。
勇者として異世界に乗り込んだ。
すごく期待していた。
酒池肉林の異世界ハーレムを期待していたのだ!
だが、なんだ、これは!
なんでこんな事になった?
嘘だと言ってくれ!
やっぱり神様の方が一枚上手だったと言うのか?
俺の前にいる、オークのような者たちが人間だと言うのか?!
醜い。
吐き気がするほど醜い!
相撲取りのあんこ型のような体型。
身体に比較して短い手足。
大きく穴の開いたような上向きの鼻。
小さく白眼のない瞳。
それだけではない!
毛深いのだ。
恐ろしく毛深いのだ!
中世貴族のような、ゴシックロリータのような服装をしているから、女性なんだとは思うが、なんとも毛深いのだ!
しかも、人間らしい姿をした女性が、祭壇の前に血を流して倒れている。
どう考えても生贄だ。
俺を召喚するための犠牲者だ。
どうしようもない事だったのかもしれないが、やったのがオークそっくりで、犠牲者が人間らしいとなれば、見過ごしにはできない。
悪の手先に使われるのは絶対嫌なので、神様からもらった能力で、オークもどきの心を読んでみた。
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