ちょうかつになるな!その13

コウメイは趙括について仲間たちに語った後、大きく二つの心配事について説明しました。


「今、ひだまり派の人間の中には情勢が有利で勝っていることに対して浮かれている者たちがいる、そうした者たちの間で傲慢な傾向が見えてきている、これを放置して相手の心を遠ざけ追い詰めることになれば大変面倒なことになる」


コウメイが心配したのは、要するに相手、ひだまり派に敵対する人々が感情的に凝り固まってしまい、逃げ場がなく一戦して散りゆくのみというような状態になった場合地方議会やメディアなどに対して勝つとしてもかなりの時間と損害を覚悟しなければならなくなる。


その間に今大混乱しているガチスやデンゲルといった敵対国が態勢を立て直したら極めて厄介であるという点でした。

そうしたことにならないためには、相手側に対して多少なりとも心証をよくしておくことと、逃げ道を作っておくことが有功な方法だとイメージしていました。


つまり趙括の話には、味方が相手、あるいは敵を罵倒して逃げ道のない状態に追い詰めないための大きな抑えとなると考えていました。

もっと簡単に言うなら、味方がおごり高ぶり相手の頭に血が上るようにするよりも、相手に同情と将来の恐怖を伝える方が有効だということです。


ガチスやデンゲルに味方する人々はひだまり派の暴言には慣れていましたが、こうした歴史的な話や味方することの危険性については案外聞きなれていないことが多かったのです。


いわゆる国を売るという罵倒には慣れっこでむしろ勲章だと思っていても、敵から同情されたり心配されるというのは慣れていないものです。

それにガチスやデンゲルが実際にはどういう存在か、彼らの中にも疑念や病的な恐怖をもって理解していた者は少なくありませんでした。


一部の完全に洗脳を受けた人を除き、大多数の人々は雰囲気とか今までのしがらみとか付き合いで味方していただけで、大きなリスクを冒すのはやだという人がほとんどでした。


今までは敵であるひだまり派の言動に反発することがインプットされて、それに従って動いていましたが、そこに迷いや考える隙を与えることで彼らの心を攻める、いやもっと適切な表現を使うなら危ない道から引き返す、それがコウメイの想いでした。


しかし、コウメイはこれが理想論であるとも述べます。

続きは次回に。

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