世界の混乱とひだまりの地方議会その3

「地方にはそれぞれの地方の事情や経緯があり、そうした点を踏まえると地方の予算に関して第三者が指示などを示唆するのはこれからの活動と団結の上で良い効果にならない可能性が高いと考えます」


「よって私たちはこの点に関してコメントはしません、あえて付け加えるならそれぞれの地域の決定を各地域も、それ以外の人々も尊重し、分裂の火種とならないように注意を払ってもらえたら幸いです」


「もし、どうしても地方の中で話がまとまらず、第三者の調停が必要という判断に至った場合のみ、私たちはその地域の状況を勘案した上で提案やアイデアを出すことはできます」


「その時にもあくまでひだまりの民のためになるよう、後々仲間同士で争うことを避けるように最大限気を使っていただけたら幸いです」


各地域に伝わった中央からのコメントは概ね上記のようなものでした。

ガチスやデンゲルのような党独裁型の指導的なコメントではなく、あくまで自主性を大事にして欲しいということと、争乱の火種にならないことを願う文章でした。


コウメイの頭の中には、分裂に対する恐れがありました。

かつて、「破竹の勢い」を提唱しこの地方選挙で大勝することを予見し、目標とした彼にとって、実現した勝利はもはや関心の外でした。


彼の頭には、勝利した後の味方の気の緩みこそが最大の懸念、あえて言うなら敵という認識でした。

そして、もし中央、つまり自分たちがその罠に掛かるとすれば、一番やらかしてしまいそうなのが、勝ったことによる「自慢と驕り」でした。


ゆえに彼はこの文を作成するにあたり二つの点に特に気をつけていました。

一つは、上から目線でコメントをしない事。

もうひとつは自分たちの態度をさりげなく模範とできるように出来るだけ柔和で、見ようによっては軟弱ともとられるような表現をする事。


コウメイはデンゲルやガチスに大勝したからこそ、彼らの影響が小さくなった今、自分たちの慢心という敵を強く意識していました。

この地方選挙の影の最大功労者であるコウメイがそのような物腰であれば、彼に近い6人組たちもまたその態度に倣うことになりました。


さて、次回はこのコメントを受けての地方の反応と世界情勢の補足を紹介します。

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