破竹の勢いその2
杜 預(とよ)という将軍は本来慎重な人物だったようです。
身内のいざこざなどトラブルに巻き込まれそうになりながらもなんとか生き残った人物です。
トラブルのせいでいささか出世が遅いということもあったらしいですが、彼の時代には鍾会(しょうかい)や鄧艾(とうがい)や諸葛誕(しょかつたん)といった能力は素晴らしくても、謀反を起こして人生を全うできなかった者たちがいました。
なので、慎重で出世が遅くても生きているだけで良しという時代だったのかもしれません。
そんな彼ですが、呉にとどめを刺す大決戦については即断即決を主張しました。
周りの将軍たちはあの杜 預がそのような意見を言うというのは意外に感じたかもしれません。
ある意味一番無理をせず、一番慎重でなければならない人物とみなされていたかもしれません。
しかし、彼の破竹の勢いという説明に将軍たちはさしたる抵抗もなく納得しています。
前にも説明した通り、過去に幾多の主君や先輩たちが大失敗してきたこの計画、読者の皆様は不思議に思われませんか。
理由はいくつかありますが、まず第一にこの決戦の前の前哨戦で晋の軍勢は呉の軍に対してあっけないほど優勢だったというのがあります。
説明すると長いので省きますが、この時期呉の国はかつてないほどに弱体化していました。
なので、晋の将軍たちの中に過度に呉を恐れる者がいなかったというのが大きいです。
しかし、これはゲームではなく命のやり取りです。
万が一ということがあります。
呉を恐れて慎重論を唱える者がいないとしても、過去70年の経験と歴史の教訓に対して無警戒という間抜けな将軍は晋にはいなかったはずです。
しかし、ここで杜 預という人物の今までの実績がモノを言うようになります。
70年の経験と教訓さえもはねのけた杜 預の実績とは何だったのか。
次回はそのお話をしたいと思います。
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