デンゲル対策その3

若手官僚たちのバグダに対する不信と冷たい目を取り払うため、まずコウメイが発言します。

「先ほどはうちのバグダが大変ご迷惑をかけました」コウメイはおもむろに頭を下げます。


若手官僚たちは毒気を抜かれます。

その空気を感じたうえでさらに語り掛けます。

「ですが先ほどの提案に内心頭を抱えた私も今回の親デンゲル派に対する提案については賛成です」


若手官僚たちは隙をつかれたかのような表情を浮かべます。

このあたりの駆け引きはさすが思慮深い苦労人コウメイ、思いつきの天才タイプバグダとは一味も二味も違います。


「まず、第一に私たちはガチスにほとんどのリソースを使う状態になります、その時親デンゲル派をノーマークにすると横腹を突かれて情報の戦線が崩壊する危険性があります」


「ゆえに動揺を誘い、こちらに目を向けさせないためにもバグダの提案は有効ではと考える次第です」


さらに説明として、ここにいる若手官僚の中に親デンゲル派はほとんどおらず、先ほどのような騒ぎにはならないことや、親デンゲル派の勢力が攻撃的ではあっても自分に攻撃が来ると存外脆いという点も触れました。


この会話の間、バグダは機嫌がよさそうにニコニコしていました。

その表情は少年のように見えた者もいれば、何を考えているか分からないという点で不気味とか気色が悪いと思う者もいました。


それと若手官僚のプライドをくすぐる表現で親デンゲル派の勢力をこき下ろした後、主な戦場は省庁ではなく、メディアと経済界と法曹になると述べてガチスの時と違い官僚たちに迷惑がかからないことを請け負い、話を終了しました。


若手官僚たちもこの理路整然とした話は好感をもって受け入れたようで概ね好評でした。

ある官僚は、「これは先ほどの混乱をよく分析した上での発言であり見事だ」と褒めたたえました。


ある外務官僚などはは、「この交渉術があるならうちに来てもらいたいくらいだな」とジョーク交じりに評価しました。


さて、具体的な行動計画を作るための前準備となる空気をコウメイは見事にセッティングしました。

そして、満を持してデンゲル対策の主役となるテレスの出番となります。

次回もお楽しみに。


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