猟犬を生かしてうさぎも残る その19

コウメイの説明にサン、マーズ、の女性2人とゴカン、オーベルの男性二人はピンと来ませんでした。

この件に関してもっとも理解から遠い存在だったのは今までの情報戦でもっとも切れ者だったデンゲル人テレスでした。


要はガチスとの情報戦においてガチスに花を持たせる、あるいは勝たせるということと、ひだまりの国の損害を最小限にするということを言いたいのだというのは分かったのですが、具体的にどうするのかがほとんど想像できませんでした。


断罪する思考には敏感でもこうした包み込むような発想が苦手なオーベルが質問します。

「ひだまりの民の被害を出さずにするとはどうゆうことか?どう考えてもガチスの大軍相手にそれは不可能ではないか!」


コウメイの答えは簡潔でした。

「ひだまりの民、いや、仮に電脳領土という表現を使うがガチスに取られてもいい対象を選定するようになる」


オーベルはまた問います。

「囮ということか?」


コウメイ曰く「それもあるがそれだけではない」

オーベルの疑念の表情を見つコウメイは説明を続けます。


「もともとひだまりの民の中には親ガチス派の組織や内通者が多くいる、彼らを利用するのが一つ、もう一つは指摘したような囮部隊を用意する、とりあえずはその二段構えで行けると考えている」


今度はゴカンが質問します。

「ガチスに対する対策は?」


コウメイは答えます。

「情報戦における彼らの侵攻ルートに防御線の厚い所と薄い所を用意する、先ほど述べた親ガチス派と囮部隊の多い所は防御線を薄くし彼らを誘い込む、そしてこれが大事な点だが一般のひだまりの民の多い場所は防御線を厚くして彼らに対して激しく抵抗することが重要だ」


「そうすれば、防御線の厚い所で戦うガチス勢はAIの評価ポイントが下がり我々が手を下すまでもなくガチスのAIとそれを見た上層部に粛清されるだろう」


この説明を聞いた全員が全てのことを理解したわけではないですが、少なくとも何をするのかというおぼろげなイメージとどのような狙いがあるかは理解できたようです。


まだ、コウメイは全ての説明を終えたわけではありません。

次の章で作戦の全容が明らかになります。





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