狡兎死して走狗烹らる その14

ゴカンとオーベルの二人は敵であるガチスやデンゲルに対して暖かい、あるいはぬるい姿勢に対して強い抵抗感がありました。


ゴカンについては、いままでさんざんガチスやデンゲルについての分析を行いました。

それは個別の細かい所まで及び、しかも緻密に精査したうえでの作戦立案でしたので、はいそうですか、と方針を転換できる柔軟さを持ち合わせていませんでした。


本音を言えばガチスやデンゲル、そして彼らのシンパであるひだまりの民がカリン事件で自分たちに攻撃的な態度を取らなければこんな思いをせずに済んだ、というのが心の根底にあります。


ゆえに融和政策のような考えは受け入れずらい物でした。

でも彼はまだ学生なので自分の思いに凝り固まって方向転換や新展開についていけないほど意固地ではありませんでした。


さて、もっともガチスとデンゲルに強硬だったのはオーベルです。

概念的な悪が嫌いな彼にとって両国は悪の具現化そのものでした。

そして、それに喜々として従うひだまりの一部の民、上級国民、メディアなどは身近な悪として切り捨てたい強い衝動がありました。


彼も若く、また6人組たちと絡むことでこれでも丸くなっていました。

もし、彼がもっと年を取り、6人組とつきあっていなかったら今頃SNSで暴言とガチスやデンゲル関係の情報を熱心に拡散する多くの人々の中に紛れていたことでしょう。


でも、最終的には彼らも「北風と太陽」の童話にならい、方向転換することを了承します。

理由は以前も触れた通り、その方が効果がありそうだからです。


そもそも冷静かつ客観的に見れば強大かつ優勢なガチス、デンゲル、ひだまりシンパ連合軍相手に勝つこと自体が困難の極みであり、勝ち方を選ぶ余裕などないことを現実主義的なこの二人はよく知っていました。


そして、なにより自分の将来と生存をかけた戦いです。

リセットやチートができるゲームとは違います。

ゆえに6人組は一連の話し合いの後、漸減作戦から新しい作戦への移行に同意し行動することを決めました。


走る犬、猟犬を生かす発想から獲物である自分たちウサギが生き残る戦術を考える、歴史的展開が始まります。

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