6人組の描いた地図

彼らはひだまりの国の現状を図や文字で表現し、お互いの認識を共有していく作業を行いました。

特に数枚の地図を作成しましたが、それはムーンとゴカンが中心となったものです。


ムーンは不等式が好きで、現状のイメージを不等式の領域のように表現しました。

様々な条件を彼女なりにイメージして危険地帯と安全地帯に分け自分達が安全地帯にいるためには何を行い、何をすべきでないかを地図にしたのです。


実物は少し違うのですが、イメージ的には洪水や噴火などのハザードマップを思い出していただくと分かりやすいかもしれません。


ゴカンは近代戦争ゲームに造詣が深いせいか、政治や経済、司法やSNSの世界等、あらゆる界隈の勢力図を表現することが出来ました。

それは学生の書くものであり、現実から見ると大雑把でした。


それでも、他の6人と情報交換や提案、アイデアなどを話し合うときにとても役に立ちました。


なにより、SNSの中の特にカリン派のような数は多くてもばらばらでほとんど素人集団の怒りにまかせた無秩序な言葉の攻撃よりははるかに現状が良く見えていて、問題点や分からない点を整理するのに役にたちました。


この話し合いで分かったのは旧体制派が政治、経済、司法において盤石な体制を持っているという事実の再確認でした。


しかし、今までごく普通に生きこうしたことを考える機会すらなかった学生達が不運に遭遇したとはいえここまで現状を把握できたのはとても意味のある大事なことでした。


上から目線で恐縮ですが、正義感と怒りによって多数の味方を擁立しながらも、旧体制派に手のひらで踊らされている人々よりもあくまで自分のささやかな平穏を守りたいと願い行動する若者達の方が状況を把握しているのは何とも皮肉な感じがします。


もちろん正義や不公正に対する怒りは貴重で大事な感情ですが、それだけでは物事は良くならないこともまた現実です。


状況を改善するためにはやはり事前の調査や研究と本気で負けたくないという怒り以外の人間の力が必要です。


さて、彼らがSNSの勢力図を見た時に暴言で退場した勢力と今だ残って旧体制派と対峙している勢力の他にもう一つ、勢力は大きくないものの独自のメッセージを発信し、組織的、秩序だった振舞いをする集団がありました。


比較的良識的でやさしいお嬢さんのサン以外の五人。

つまり、ムーン、マーズ、ゴカン、オーベル、バグダがそれぞれの感性で気になった勢力、次回はその勢力の話をします。








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