聖域への介入
政治や特権階級や上級国民といった存在の介入がない若者やごく普通の人々のオアシス、そして夢と希望の空間だったアイドル投票、ところがその空間が変質していきます。
まず、庶民の娯楽と見下していた、あるいは関心のなかった上級国民の中の一部がこの祭りに参加してきました。
そして、若者だけでなく年齢層の高い人々も口コミで多く参加するようになりました。
この時点では、アイドル投票の結果が若者達の好みから年齢層が上がったというだけで特に問題はありませんでした。
むしろ若者の中には自分達の祭りが世間全体に認められたとしてポジティブに捉える人達も多かったのです。
中には、今までの流れと違う異質な物の混入に違和感を覚える人もいましたが、それは全体から見たら少数でした。
自由で健全な祭りであるという自負と明文化された法や決まりがなくても参加したアイドル達と同じく一般の参加者たちは空気を読んで互いにリスペクトしながらこの祭りを楽しんでいたのです。
しかし、その健全さも変質していきます。
原因は一部の、本当に一部の新規参加した特権階級の集団が自分の推しのアイドルを選挙で勝たせるためにテレビなどのメディアで盛んに取り上げることを行いました。
そして、それを見た彼らに近しい人々が、芸能界で行われているあらゆる慣習をこの祭りに持ち込みました。
それは、現ナマによる実弾や、いわゆる色仕掛け、自分達の所属する人間を使いアイドルではなく自分達のプロパガンダを伝えること。
そしてさらに人々の注目が大きくなったと判断した外国勢力が自分達の国威発揚とひだまりの国の国威を傷つける手段として総力を挙げて参入してきました。
かつて、この祭りは舞台の上でのアイドル達の輝きとそこに行き着くまでの努力や若さゆえの甘酸っぱい輝きに惹かれた人々の聖域でした。
それが、今や大人の謀略や足の引っ張り合いによるひだまりのよどみ切った空気に汚されていくがままの状態に堕落したのです。
アイドル投票という祭りは一般の人々が無駄で無謀な争いを避けて逃げ続け、そして作り上げた最後の心の砦でした。
彼らはささやかなオアシスを作り、息苦しい中でも平和に共存できるような場所をこしらえたのに、それを壊されました。
もはや我慢の限界、これ以上の譲歩も逃げることももはや彼らの頭の中の選択肢にはありませんでした。
戦いを嫌った彼ら、世捨て人のような集団であった若者たちの逆襲がついに始まるときが来たのです。
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