第269話 閑話休題「捨てがまり」は創作?

捨てがまり、関ケ原の戦いの最終局面に敗勢濃くなった島津軍が行った戦法として多くの人の記憶に刻み込まれた用語です。


徳川の陣を突っ切った後に、部隊をさらに小部隊に分けて殿(しんがり)、つまり最後尾に配置して敵の追撃を断ち切るという決死の戦法です。


さて、島津ファンにとっては聞き飽きたくらい聞いたであろうこの用語ですが、どうも司馬遼太郎さんの創作ではないかと言われています。


少なくとも今の時点で歴史文書には関ケ原における捨てがまりという用語が見つかったという話はないとのことです。


では、事実として捨てがまりがなかったかというとこれも100%無かったとはいえません。

なぜなら否定する文書もまだ無いようなのです。


ただ、今の島津の研究者の間では歴史的事実の捨てがまりは創作という話だそうです。

もちろん、今後の研究で新たな発見があれば話は変ってくるでしょう。


関ケ原と言えば、明治時代にドイツの軍事教官メッケルという人物が関ケ原の戦いの配置図を見て、西軍が勝つといったという逸話も多くの書物から伝えられてきていますが、これもどうやら創作らしいです。


おおまかに言うと文脈の異なる二つの文章を一緒にしたらしいという話だそうです。

とにかく、小説家や学者ですら書籍などで引用するこの話はまあ、ありていに言えば「作り話」ということになります。


もちろん、小説は教科書でも歴史研究書でもないので、書いちゃダメということはありません。

ただし、読者の方に聞かれたときに「ドヤ顔」で歴史的事実というと恥をかくことにになるので気を付けたいですね。


こうして考えると歴史というのはけっこうころころと事実が変わるので注意が必要です。

もし歴史小説を書くのであれば、あらかじめこの物語はフィクションです、と宣言しておいた方が安全な気がします。


私などは小心者なので文章が逃げの態勢になっている時も度々あります。

ただ、教科書やえらい教授でも間違えて引用するのですから、間違えの指摘をするときには優しく丁寧にしてもらえると平和でいいなあと思いました。


歴史、および歴史小説の発展のために良かったら参考にしていただけたらと思います。








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