第251話 ネットの中の蟲毒(5)

かつて、日の丸を掲げ国を愛し、互いに意気投合していた仲間たちが今、互いをののしりあい、互いの情報をかつての敵に向かって献上する。

もはや、正常な感覚ではいられないだろうとフウイは複雑な心境でパソコン内の争乱を眺めていました。


実はこの混乱を避ける方法について、フウイは一つ気づいていました。

それは、社会的地位に固執せず、また財産も何らかの合法的な方法で処分し、賠償金をバックレるという方法です。


かつて、ネットのカリスマとして君臨したある人物が取ったと噂される手段です。

しかし、この平和な日本で、そこまで出来る人間はそうはいまいともフウイは達観にも似た感情を抱いていました。


フウイにとってこの件はとても、とても残念なことでした。

もし、この数千人ともいわれる保守層が日本の歴史に深くかかわる島津の応援に来てくれたらどんなに良かっただろうと心の底から惜しんでいました。


それだけではなく、今は地味な応援だとしても、いずれ巡り巡って彼ら望む(いやかつて望んだというべきか)世界に近づけることが出来たのにとも考えました。


しかし、現実は残酷です。

彼らの多くはもう保守活動も日本のこともこりごりと体の底から体感したことでしょう。


そして、その騒動を見ていた比較的近い考えの人々も委縮することは間違いありません。

そうした人々はインターネットで何か書くときに常に監視されているがごとく感じて表現を(必要以上に)委縮させることでしょう。


その数は直接的には数十万人、広範囲の影響を見れば数百万を優に超える影響を与えたでしょう。


この争いについては弁護士側の大勝利であり、保守勢力の大敗北です。

しかし、フウイはもっと大きな視野で見ていました。




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