第250話 ネットの中の蟲毒(4)
さて、読者の皆様はお気づきでしょうか。
もともと自分の意見と違う弁護士を懲らしめるために始めた訴訟運動でしたが、気が付くとわずか数名の弁護士の前に、彼らの頭目のような存在が必死になって頭をさげる事態に状況は激変していました。
そして、数千人の「同志」のうち、比較的目端が利いて賢い者達は単独で弁護士たちと降伏同然の和解を申し込みました。
しかし、弁護士たちはそれで終わりにはしません。
今回の件で関わった者たちの情報についても法に照らし合わせ問題の無い場合は要求してきました。
フウイはこの状況を見て、「関ケ原の戦い」における西軍から東軍に寝返った武将たちを思いだしました。
小早川のような大大名はある程度手加減が加えられ、脇坂のようにあらかじめ内通した者は現状維持でしたが、土壇場で裏切った者達は敗戦処理でぼろ雑巾のように使われた挙句、減俸や改易という厳しいペナルティーを受けました。
弁護士側からすれば、彼ら憎むべき敵であり、情けをかけるだけでもありがたいと思えという気分だったでしょう。
やがて、しらみつぶしに勧告状を送りました。
敗戦濃厚な反弁護士側はもはや反弁護士ではありませんでした。
彼ら自身もかつての味方の情報を弁護士に知らせて、自分だけは手心を加えてもらおうと血眼になり必死に行動、弁明していました。
かつて、あんなに仲良く一致団結して弁護士と戦った集団が文字通り壊滅しました。
今の彼らにとって一番大切なのは弁護士の歓心であり、自分の社会的地位を守るためにどんなに見苦しく思えても、かつての仲間を売るしか選択肢が見つかりませんでした。
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