第218話 第二次世界大戦の暗号戦といろはの「し」
「彼を知り己を知れば100戦危うからず」この作品でも何度か取り上げた孫子の有名な言葉です。
敵の心を知るのはそれほど重要であり、敵もまた心を読まれないように必死にカモフラージュします。
そして、正確な心を知るための用心深くあることの大切さを島津いろは歌では歯が舌をかまないくらいの用心深さに例えてアドバイスしています。
さて、この用心深さについて第二次世界大戦の歴史から学んでみたいと思います。
第一次大戦後、イギリスの文書などで暗号が筒抜けだったことを知ったドイツは画期的な方法で暗号対策を行うことにします。
それは「電動式暗号機エニグマ」の採用です。
このエニグマというのは外見が重々しいタイプライターみたいなもので、詳しい説明はできないので省きますが、(汗)沢山の変換機能によって暗号解読を困難にするものでした。
これに対して、フランスはその存在を知っていましたが、お手上げということで匙をなげてしまいます。
それに対してドイツに対して強い警戒心を持っていたポーランドは当時出来る範囲で暗号解読を進めていました。
やがて、戦争が起きます。
第二次世界大戦です。
フランス軍は暗号戦においてもほとんど備えがなく、そのため「不意打ち状態」でドイツ軍と戦い、敗北し首都のパリ占領と屈辱的な降伏宣言をすることになりました。
ポーランド軍もドイツに対する備えをしてはいたものの、ソビエトからの背後の攻撃や、フランス、イギリスの援軍の遅れが響き、戦いに敗れ占領されてしまいます。
こうして、ドイツは戦争の初期で暗号戦の優位さも手伝って快進撃を続けます。
しかし、ここでポーランドの暗号解読技術が役に立つ時が来ます。
ポーランドの技術はイギリスに送られ、あと一歩でドイツのエニグマに対して決定的な対抗策ができるところまで来ていたのです。
この段階で、イギリスは暗号解読のためにいろんな人材を集めていました。
数学者、言語学者、古典学者、チェスのチャンピョン、クロスワードパズルマニア、美術館の学芸員などです。
この中には、コンピューターの歴史では欠くことのできない有名人アラン・チューリングも含まれていました。
しかし、ドイツも速いテンポで暗号技術を進歩させたため、イギリスの責任者は人員も予算も足りないと意見を出しました。
しかし、幾度となく却下されたため、最後の手としてとある人物に手紙を送ることにしました。
そしてその人物に手紙が渡ったその時、手紙を読んだその人物はこう命令します。
「本日中に行動のこと、彼らが求めるものをすべて最優先で与え、この件が遂行されたことを私に報告すべし」
まさに「即断即決」、この命令の主の名は「ウィンストン チャーチル」第二次大戦時のイギリスの首相でした。
こうした最優先といってもよいほどの対策によってイギリスはドイツのイギリス本土攻撃作戦で彼らの情報、言い換えれば彼らの手の内、心の中を透視してその対策を立てることが出来ました。
戦術的な表現をするなら、少ない戦力を効率的に配置することで戦力的に不利だったドイツとの闘いを凌ぎ、逆転の機会を得る時間的余裕が与えられたのです。
もし、これがなければイギリスのロンドンもフランスのパリと同じ運命をたどったかもしれません。
いままで、島津いろは歌で人を信じることや尊敬することや学ぶことなど明るい雰囲気の話題が多かったですが、こうした人の心の闇の部分も知ることは重要です。
島津日新斎もまた戦国武将であり、下剋上の時代を生き抜いたことを思い起こすアドバイスだったと思います。
「人を簡単に信じるな」という警句のさらに先を行く用心の薦め、良かったら頭の奥においてくださいね。
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